2013年7月17日水曜日

さわわ と かぜ に


ほし も みえない
くらい よる に
さわわ と かぜ に はをゆらす
き に
つき のような みが なっていたこと を
おもいだしました

あかりが ないと
つき のような み も
やみ に まぎれて
みえません

わたし の こころ が
だれにも みえない ように
あなたの こころ も
みえません

ほし も みえない
くらい よる は
めを とじて
さがして います

さわわ と かぜ が はをゆらし
わたし も あわせて ゆれながら

2013年7月16日火曜日

まる


まる は
じぶんが まるく なるために
てを つないでいる のでは ない

まる は さいいしょ から まる だった

まる は まる の なか に
じぶん を つつんでいる のでは ない

まる は ひとに みられて
はじめて まると なる
みられない うちは ただの つながった せん だ

まる は うちがわに ひろばがあるように みえるが
ほんとうは そとがわ の ひろばを かこって いる
このことは ないしょ に しておいて ね

うちがわ だと おもえる ところ が
ほんとうは そとがわ なのである

まる は
いつも だいたい きぶん が いい

だから 
よく いすに すわって にやにや している
ただ
きぶん が どんな ものなのか を
かんがえた ことは ない

2013年7月15日月曜日

ゆめ の なかで

みみず が
ゆめ の なか で
こう いった

「ねえ わたしは なんのために
 いきているの」

みみず は
さびしそうに
からだ を まげて
さきっぽ から
ためいき を ひとつ
はいた

その ためいき は
ちいさかったけれど
ちかくに いた
こおろぎ は それに きづいた

みみず は
かんがえて いた
じぶん は しんだら
だれか が きづいて くれるだろうか 
だれか が かなしんで ないて くれるだろか と

わたし の ゆめ の なかで
みみず は いつまでも かんがえこんで
だまって しまった
ずっと しずかに 
うごきも しないで

2013年7月14日日曜日

げた の すず


げた の すず が
したで なる
だいじょうぶ か
だいじょうぶ だよ

げた の すずが
ころり ころり と わらう
おかしい ね
おかしい よ

げた の すず
した の ほうで
ひとりで がんばる
かくれて がんばって いる

ゆうひ が おちて
みち に ながい かげを つくる
たちどまり それに みとれる わたし

だまって こえを
かけてくる
すず

さびしいよ
すず

2013年7月13日土曜日

むね の まり


まり が はねて
きみ より うえに
あがって いった

めの たまが まりを おって
わたし の おくちも
まりの ように まるく あいて

まりの なかの くうきが
ちぢんで おしかえして
わたし の むね も
きゅん と なった

おと も なく
みえる こと も なく
きゅん と なった
むね の まり

『ここは花の島』が発売になりました

福島の写真家・野口勝宏さんから毎日送られてくる花の写真に、詩を付け始めて1年1か月、花と詩のコラボレーション作品集として出版されました。
詩が花に負けないように、花が提示してくる世界の広さと多様さ、ひとの心の深さと繊細さを書いてきました。出版社はIBCパブリッシング、2100円です。Amazonで買えます。

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2013年7月12日金曜日

七月十二日

どこか遠いところで
電話が鳴っている

アンパンマンに
お遣いを頼んだが
どこまで行ってしまったのだろう
いつまで待っていても  思っていても
まだ戻ってこない

日本語に裏をかかれてしまったのだろうか
疑問が尋ねてくる
何処かのドアをノックしている

2013年7月11日木曜日

なすがままに

なすがままにみをまかせても
あなたのおくちはおしゃべりだから
いがいとはんげきしているね
そうこなくっちゃ
いきているんだもの

あるがままがいいのだと
あなたはやせがまんしているけれど
もうがまんなどしなくてもいい
あたらしいことが
まっているらしいから

2013年7月10日水曜日

明けない夜



夜明けは来ない
明けない夜はない なんて
嘘っぱちだ
明けない夜は ここにある
明けない夜は
世迷い言を言って
甘い魔法の息を吐く

明けない夜は
ここにある
黒い心を抱えた人が
オメカシして行列を作っている
にやにや嗤いながら
薄い影を落として

明けない夜はない
と 思っていたのは
遠い昔
遠い昔でありながら
ついさっきのことのよう

明けない夜は
朝日から逃げ続けている
明けない夜は朝焼けを受け入れてはいけない
朝靄を浮き上がらせてはいけない
爽やかな「おはよう」を
どの口からも発せさせてはいけない

夜明けは来ない
だが
夜明けは近い
だが
朝は
来ることはない


2013年7月9日火曜日

刑事ドラマで追われるような

刑事ドラマで追われるような
人生が待っている
お決まりの路線をいつの間にか外れて
波乱の日々が訪れる

そしてまた
刑事ドラマで憐(あわれ)みをさそう
ひねくれ固まった性格が焼け焦げた匂いを湛(たた)える
誰もが除けて通ろうとしている

そしてやはり
刑事ドラマで脇役にしかなれない
分かりにくさと扱いにくさを身につけたそいつは
冷や飯を貪り喰う

明日はきょうの風が吹く
知らない街に明かりが灯る