2013年1月9日水曜日

なよなよするあなたを

なよなよするあなたを
骨が支えている
皮膚の表面は熱を帯びて
水気を空中に放っている

怒った時のあなたのは
いつもの唄をうたう
白い喉に触ると
モーターの振動が伝ってくる

今夜あなたは
すべての衣服を脱ぎ捨てたあと
お湯に浸かり
自分の肌を撫でて水の玉を弾く

なりふりかまわず
オトナのいやらしさを攻撃し
氷のように熱くなり溶けてゆく

2013年1月8日火曜日

何ももっていないその子

何ももっていないその子に敵わない
その子は何ももっていないから
もっているぼくには敵わない

何ももっていないその子は
何も捨てない
そして何ももとうとしない

何かをもっているぼくには
その子のことが分からない
何故もたないのか分からない

もっているぼくはまだ何かもとうとして
何ももっていないその子を
もの欲しげに見ている

2013年1月7日月曜日

ひとりじゃない


涙に頬がぬれて
眼を覚ますと
私は毛布に包まって
明るい日差しの中にいた

どんな夢を見ていたのだろう
懐かしい人
やさしい微笑み
大きく手を振って どこへ?

取り残されたの 私は?
置いていかれたの ここに?

小鳥の声がして
子どもが駆け回る声
穏やかな季節の風に
ひとりじゃないと気づいてく

2013年1月6日日曜日

その手があったか

遥々やってくるもの
古い友だち
遠い国の人からの便り
夜汽車
幼い日の思い出


なかなかやってこないもの
吉報
木霊
待ち人
できちゃったと心配したときのアレ
愛想を尽かされた恋人

どちらともいえないもの
苦し紛れの一手
金まみれの人生
くたびれかけた鞄
その手があったかというひらめき
なんにもでませんよと笑う人

2013年1月5日土曜日

あなたが見つけてくれた私の長所は
あなたのもの

私の短所を好きだと言ってくれたあなたが好き

2013年1月4日金曜日

最高に素晴しいステーキ

ステーキにハーブバターを乗せると
最高に素晴しい
ステーキの価値が二倍に上がります
目の前に大好きな人を座らせて食べると最高に気分がいい
ステーキの価値がさらに二倍に上がります
カトラリーが銀製だと最高に優雅な雰囲気になる
ステーキの価値がさらに五千円ほど上がります
野菜やスープや飲み物とバランスよくいただくと美味しい
ステーキの価値がさらに十倍に上がります

元のステーキが二千五百八十円でJAFカードの提示で五パーセント引だった場合
代金はいくら? (10点)

2008年開張小学校

2013年1月3日木曜日

酢飯が、バコーン

すめし
めしますか
よしますか
すしならすきですか
さしずめ
ささずしか
ますずしになさいますか
ずしのすしやになりすまし
やすやすとしのびいり
すりよりすすりなき
すずりをもってノースリーブのすきまスムースにうめ
むすめむせびなきすすかぶり
すすまぬはなし
みみすましてすどおり
すしやは
はやしますか
はやしやははなしかですか
すかんぴ
すっかんぴん
すいちょくに
いかすいスイカップ
システムは破水
スイスイバコーン
水仙推薦


参考作品
詩 未 来 創 作: 召しませ詩

ノリマキトカゲやってきて

ノリマキトカゲやってきて
のりにまかれてねむってる
ねているあいだにくわれたら
かなわないからすぐおきた

エリマキトカゲもやってきて
ノリマキトカゲに恋をした
ふたりはいっしょにのりのなか
恋がやぶれるそのひまで

2013年1月2日水曜日

大地のうえで

底の抜けない大地に
私たちは受け止められている

いくら飛び跳ねようが
寝返りをうとうが
はたまはた乗り物に乗って
走り回ろうが
大地の底は抜けることがない

大地に別れを告げて
エアプレーンに乗って飛び立っても
大地は怒ることなく
またその懐に
私を受け入れてくれる

大地は怒ることがない
人間とは違うから
大地は
くぼんだり盛り上がったりするが
決して立ち去ることはない

木々を揺らし吹く風も
粒子を振りまいて反射する光も
大地には世話になっている
大地は動かずに
そこにいてくれるから

大地から見渡すと
周りには裏切り者ばかりだ
終始動き回りけたたましく騒ぎ立て
熱くなったり冷たくなったり
信用できるものはいない

だからせめて私は
大地にひれ伏して
祈りをささげよう
大地の平安を願い
命のある限りここにいますと

2013年1月1日火曜日

道具の時代

この世には
使い切れないほど多くの種類の道具が
あふれている

それだけでも悩みの種であるのは間違いないのだが
道具同士を組み合わせるとまた別の種類の道具が
できてしまうことがある
道具類は無限への道を歩んでいるといえる

世界は道具で溢れかえり
いきおい私たちは道具に使われ生きていくことになる
すでに一人の生きる道具となって生きているのだ
そのことは道具界をさらに混乱におとしめる
人と道具とのの区別ははどこにあるのか
傍観者たちは答えのない話題で盛り上がる

そして人は人生の暮れ方に
たとえば俳句などを詠んで悦に入ったりするが
17音の組み合わせを自由に操ったと信じることで
自らを慰めているのだろうか
しかしそれが何の解決になるというのか

道具は効率の悪さを解決してくれるというのに
人は非効率の生産に追いつかない
いきおいあまって自分たち自身を効率化してしまったりもする

道具の暴走をもはや誰も止められない
取り締まる側にいた信号機でさえ
いまや効率化の手助けをしている

道具たちは平気で何でも買収する
あの手この手奥の手を使い

かつて地上に君臨した人類の神も
時計のデジタル表示に十万分の一の単位で刻まれてしまい
結果 人はアナログに推し量ることができなくなり
存在の本質が風前の灯となっている

せめてふる里の床の間で
ひび割れ始めた鏡餅を不器用に開くとき
予想不能な大事件を起こしてくださいお母さん