立ち入ってはいけない
ここから先は
そうやって
線を引けばすむ
それを決めた人間は
ここには居ない
ここには来ない
会食弁当を食べるのに忙しい
線のところには
雇われた人が待っている
雇われた人は
そこにいると
「雇われた人」からただの「人間」になっていく
家族やふる里ことを考えるから
雇った人が誰なのか
わからなくなってくるから
関係がなくなってくるから
誰が決めたのか
誰にもわからなくなっていく
神さまが
川で陸地に線を引いたことを
思い出す
その美しい線と比べると
人が作った線は
なんと殺風景なのだろう
その線が
何を奪っているか
奪っている人間は
何を守っているのか
誰にも分からなくなる
南相馬市
壊れたままの堤防
2012/09/19
筆者写す
2012年9月25日火曜日
不味い巨きな果実
見上げた空一面は雲
目蓋が眩しさのせいで痛い
この痛みは
どこからやってくるのか
頬が
目のまわりで居心地悪そうに
熟れ
やがて干からびるのを待っている
私の頭は
小鳥も啄むことのない
不味い巨きな果実である
目蓋が眩しさのせいで痛い
この痛みは
どこからやってくるのか
頬が
目のまわりで居心地悪そうに
熟れ
やがて干からびるのを待っている
私の頭は
小鳥も啄むことのない
不味い巨きな果実である
2012年9月24日月曜日
2012年9月23日日曜日
水の中の水滴
水に包まれた水滴を取り戻すために
水の中へ入っていった
空気の卵を産みながら
脚をバタバタして
潜っていった
水の底にも水があった
上下関係がわからなくなって
引力に尋ねた
耳の中にも水が入り
鼓膜の内側から押し返そうとしていた
水は
温もりをを奪おうとしていないことに
気がついた
温もりを与えようとして
水の約束の境界を越えようとしていた
魚が近づいてきて
疑問符を置いて行ったように見えたが
死んだ釣り針だった
深い眠りから目覚めようと
自分の住所を調べようとして
電話して尋ねようと試みているが
雑音が邪魔してうまくいかないのは
無念が人々から切り離されて
そこに置いていかれているからだと
昼夜が分からない海底で悟った
悟るための力は
懐かしいある人が与えてくれた
そう思うことと
願うことは一緒だった
ありがとう
私は私であるままで
でんぐり返しした
水の中の水滴を蹴って
卵を産みながら
水の中へ入っていった
空気の卵を産みながら
脚をバタバタして
潜っていった
水の底にも水があった
上下関係がわからなくなって
引力に尋ねた
耳の中にも水が入り
鼓膜の内側から押し返そうとしていた
水は
温もりをを奪おうとしていないことに
気がついた
温もりを与えようとして
水の約束の境界を越えようとしていた
魚が近づいてきて
疑問符を置いて行ったように見えたが
死んだ釣り針だった
深い眠りから目覚めようと
自分の住所を調べようとして
電話して尋ねようと試みているが
雑音が邪魔してうまくいかないのは
無念が人々から切り離されて
そこに置いていかれているからだと
昼夜が分からない海底で悟った
悟るための力は
懐かしいある人が与えてくれた
そう思うことと
願うことは一緒だった
ありがとう
私は私であるままで
でんぐり返しした
水の中の水滴を蹴って
卵を産みながら
2012年9月22日土曜日
取り壊される校舎に
草花が窓の向こうに咲いている
街はなくなってしまったのに
人々の思いは
この場所に自分たちの懐かしい姿を投影する
泥に覆われた場所も
大事な思い出が置いてある場所
その目には
泥は見えていて見えていない
一番大事なものは
すでに持っている
すべてを失ったあとも
大事なものはすでに持っている
窓から入ってくる風が
楽しそうに教室を舞う
友だちや知り合いと
話をしよう
どんな話でもいい
校舎に聞かせてやろう
岩手県立高田高校 旧校舎
陸前高田市
2012年9月20日筆者写す
街はなくなってしまったのに
人々の思いは
この場所に自分たちの懐かしい姿を投影する
泥に覆われた場所も
大事な思い出が置いてある場所
その目には
泥は見えていて見えていない
一番大事なものは
すでに持っている
すべてを失ったあとも
大事なものはすでに持っている
窓から入ってくる風が
楽しそうに教室を舞う
友だちや知り合いと
話をしよう
どんな話でもいい
校舎に聞かせてやろう
岩手県立高田高校 旧校舎
陸前高田市
2012年9月20日筆者写す
2012年9月21日金曜日
消えた幽霊
顔を洗い終わったら
幽霊が、タオルを差し出して立っていた
ありがとう、幽霊
あなたは何を望んでいるの?
いいえ
望みはありません
あなたの願いを叶えたいのです
そういうと
幽霊は消えて行った
私も
少しして
消え始めた
2012年9月20日木曜日
お尻を向けないで
階段の途中で息が切れて
立ち止まった
あなたは元気で
なんでも良く知っているように
一人でスタスタ行ってしまう
かわいいワンちゃん
階段を上ったらなにがあるの?
願い事が叶う場所?
かわいいワンちゃん
夕日がもう落ちそうだよ
あなたはいままでもう一人のワンちゃんと
向かい合って
ずっと何を待っていたの?
質問する私に質問で返してくるのは
そう聞こえるのは
なぜかな?
いつか教えて
かわいいワンちゃん
あなたのその口で
噛みついてもいいから
立ち止まった
あなたは元気で
なんでも良く知っているように
一人でスタスタ行ってしまう
かわいいワンちゃん
頭を撫でてあげる
お尻を向けないで!
階段を上ったらなにがあるの?
願い事が叶う場所?
かわいいワンちゃん
夕日がもう落ちそうだよ
あなたはいままでもう一人のワンちゃんと
向かい合って
ずっと何を待っていたの?
質問する私に質問で返してくるのは
そう聞こえるのは
なぜかな?
いつか教えて
かわいいワンちゃん
あなたのその口で
噛みついてもいいから
2012年9月19日水曜日
夢の世界へ
今夜は眠らないでください
私のために
ただ起きていてくれればのです
なにをしていてもいい
私のことを忘れていてもかまわない
あなたの好きなことをやって
たまに宙にただよう空気を眺めて
起きていてください
私はきょう
大事なことを決めます
心の振動を停めて心臓の真ん中を
突き刺します
自分のあやふやな気持ちに
死んでもらいます
あなたは
どこかにいて
知らないうちに
それに立ち会うことになります
だからどうぞ
眠らないでいてください
夢の世界に
行かないでいてください
私のために
ただ起きていてくれればのです
なにをしていてもいい
私のことを忘れていてもかまわない
あなたの好きなことをやって
たまに宙にただよう空気を眺めて
起きていてください
私はきょう
大事なことを決めます
心の振動を停めて心臓の真ん中を
突き刺します
自分のあやふやな気持ちに
死んでもらいます
あなたは
どこかにいて
知らないうちに
それに立ち会うことになります
だからどうぞ
眠らないでいてください
夢の世界に
行かないでいてください
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