2012年9月14日金曜日

大切な人

近くにいる
大切な人を
大切にしようと
思っているんだね

思っている
だけなんだね

2012年9月13日木曜日

秋の小川

詩人の傍らを静かに時間が流れている
それは本流ではなく支流だ
秋の小川だ

あの有名な
春の小川という唄が
この秋の小川を作りだしたことを
詩人は知っている
知ってはいるが
そのことについては黙っている
そう決めている
それは詩の世界の裏事情だから

詩人は黙って
秋の小川の音を聴き
冬の凍った小川のことを考えている

今年
夏の小川は渇水のため
川は干からびていたので
来年の夏の小川のことも本当は気になり始めている

詩人は自分の打った文字を見ながらいつも想う
詩の一行は
長くなると川になってしまう

川になると
水滴に戻るのは一苦労だ
雲になるよりも難しいのではないか

一日中
ぼんやり景色を眺めながら
詩人は成り行きのことを考える
私はどこに流され何に
還ってゆくのか

秋の小川はきっと
ささやきかけて
教えてくれるのではないか
言葉ではない方法で

2012年9月12日水曜日

頭の中に充満しているもの

頭の中に
何かが充満し
逃げ場を探している

皆んながそのことに
かかりっきりなので
いろんなことが手薄になる

トーストを食べている途中で
ハチミツを取りに行ったまま
戻らないあの人は
いま
電車に揺られて
乗り換えるのも忘れて
とうとうどこにも辿りつけなかった

頭の中に充満しているものを
順番に退出させ
その行列を見ていたら
眠っていることも忘れて
用事のある先に電話をしていた

相手は驚いて
私は誰かを尋ねていた

2012年9月11日火曜日

スキマナクウメテシマワナイデ

スキマナク ウメテシマワナイデ
クウキ ガ ナクナッテシマッテ
イキグルシイ デス

イキガデキナイト
アナタガウマレタ コノ キセツノ
ハナノカオリ モ
アメノアトノクウキノカオリモ
カゼガハコンデクル トオイウミノカオリモ
ムネニ スイコムコトガデキマセン

ムネハ イイカオリヲ
モトメテイマス
ワタシノココロトオナジデス

アナタガ イナクナッテ
モウ イチネンイジョウガ タチマシタ
ワタシニトッテ トテモトテモ ナガイジカンガ
スギマシタ

コレカラ ナンドモ キセツハヤッテキテ
ソノタビニ ワタシハ トシヲトルノデショウ

スキマナク ダレカガ ウメヨウトシマス
アナタト ワタシノアイダノ カラッポノ クウハクヲ
ダカラ イキグルシイノデス

ワタシヲ ミタシテ シマワナイデ
ワタシハ スキマヲカカエテイタイノデス

カエラヌアナタヲ マツタメデハアリマセン
ナンノタメカハ ワタシニモ ワカラナイノデス

2012年9月10日月曜日

みんなが言わないことのほうを

明るいほうがいいと
みんな思っているのかな
 

暗いほうがいいと
思わないのかな

暗いほうがいいよ

元気なのもいいけど
おとなしいほうがいい

偉そうに見えるより
侘(わび)しくみえたほうがいい
自信がなさげで ひねくれていて・・・

そのほうが好きだ って
誰かが言っていた

みんなが言うことだけじゃなく
言わないことのほうを
聞いたほうがいい





そこに置いて
 
暗い顔をして

雨上がりの

緑の

木々を見ているね

暗い気持ちを

そこに

置いて行きたいと

思っているんだね




2012年9月9日日曜日

この道 いこうか 帰ろうか

この道 いこうか 帰ろうか
帰って 脇道探そうか

この道 いこうか 帰ろうか
だれかを追い越し 進もうか

この道 いこうか 帰ろうか
いくと帰るは どう違う

この道 いこうか 帰ろうか
荷物を取りに 戻ろうか

この道 いこうか 帰ろうか
迷うと ゆっくり足になる

この道 いこうか 帰ろうか
トンボにきいても 知らぬ顔

この道 いこうか 帰ろうか
夕日か背中をあたためて

この道 いこうか 帰ろうか
いつになったら どこにつく?

この道 いこうか 帰ろうか
父もこの道 いったのか

この道 いこうか 帰ろうか
誰が留守番役だろう

この道 いこうか 帰ろうか
くるひもくるひも同じよう

この道 いこうか 帰ろうか
狂っているのは誰かしら

この道 いこうか 帰ろうか
道案内はひとでなし

この道 いこうか 帰ろうか
気付いたときは歩いてた

この道 いこうか 帰ろうか
歩く速度を変えようか

この道 いこうか 帰ろうか
熊も一緒に歩きた出す

この道 いこうか 帰ろうか
それとも止まって 果てようか


2012年9月8日土曜日

真新しいノートの1ページに

いつも ノートを
最後まで使えずに
母に小言を言われ続けていた

そのせいか
靴下を
もう使えなくなるまで履きつぶして
いよいよ捨てるとなると
記念写真を撮ることになる

靴下だけではない
衣類のほとんど
消耗品のほとんどだ

そうして
私の周りには
最後まで使い終わったものたちの写真が
ひしめき合って大挙することになる

最近その中に加わったのは
醤油瓶
トイレットペーパーの芯
靴下だ

私は私を使い切りたい
写真を撮ってもらい
真新しいノートの1ページに
願わくば
貼り付けられたい

2012年9月7日金曜日

便利なもの

便利なものですが
壊れると厄介です
捨てるのがたいへんだから

燃やしたあと土中に埋めるか
海に撒いて沈めるか
よく考えなくてはなりません
誰に相談したらいいのでしょう

ずっとあの場所に
光る布に包まれて置かれている
あの人に尋ねたら
答えが見つかるでしょうか

告知■『詩の電車』vol.1


■『詩の電車』vol.1

谷川俊太郎(詩人)×有本ゆみこ(刺繍作家)「七等星」

  期間

2012929日(土)〜1028日(日)

  叡山電車の通常運行スケジュールでご乗車いただけます。929日のみ、1830分から、オープニングイベントのため貸切電車となります。

  「七等星」について 有本ゆみこ

「普段夜空に瞬く星は一番明るい、一等星から六等星まで、それ以上は光が弱くて目に見えません。でも、みえないけれど、そこに星はあるのだと思います。きっと、もっと。星だけじゃなくって、日々のあわただしい生活の中で感じる違和感とか、小さな本音、みえないけれどあるような、そんな《七等星》な想いがとても大切な、ほんとうのこと だったりします。谷川俊太郎さんはそんなささいな出来事から生まれた小さな魂をひとつひとつのうつくしい言葉の中に宿らせていると、刺繍をしながら感じました。」

 about

刺繍作家・有本ゆみこが、谷川俊太郎さんの書き下ろしの詩と、「七等星」をキーワードにセレクトした谷川俊太郎さんの詩を、一針一針刺繍し、叡山電車に飾り付けます。

  オープニングイベント

2012929日(土)1830分〜2030

「宇宙の入口、金星(鞍馬天狗に会いたい)ツアー」

ツアー料金:1500円(叡山電車の往復乗車賃込み) 乗車駅:出町柳駅

内容:銀河鉄道となった叡山電車。詩の力でワームホールより天狗に会いに行きます。

  有本ゆみこ率いる「アラスカン」刺繍ライブ

  「詩の電車」のために制作した「星の組曲」(朗読 谷川俊太郎+音楽 谷川賢作) の車内放送。

  谷川俊太郎の短編映像作品を上映


2012年9月6日木曜日

森は




もう森は消えようとしていて

待って!

私は声を掛けたけれど
森に吸い込まれて
木霊は返ってこなかった





もう森は消え去ってしまい

何処?

私は声を掛けたけれど
今度は自分がいなくなり
声だけが木霊して彷徨っていた





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