2012年7月22日日曜日

友達と私は

野菜を作っている友達は
やや黒い
詩を書いている私は
やや白い

友達はやや痩せていて
私はやや太っている

太陽は友達を毎日長い時間照らし
エアコンの風は私に毎日長い時間吹く

友達と私はだいぶ違う
私は友達とだいぶ違う

私が考えている時
友達は夢を見ている

2012年7月21日土曜日

もうすぐ目薬を

目薬をさしてあげよう
愛する人よ
水晶を抱えたコーヒー色の瞳が好きだ

綺麗な円を描き
外側に広がっていき
やがてぼんやり白昼のもとに消えていく瞳
境界線からは陽炎が立ち上っている

瞼を閉じた瞳も好きだ
睫毛とともに動きやがて震えながら静止する


瞳を包んだ瞼は
こんもりと丘を作り
光沢のある黒曜石やガラスの粉が
表面で光っている

嬰児を孕み
予感の胎動を
扱いきれずに
放出している

睫毛は筆とは違う
瞼と瞳の間に
決まりごとを作っている
私は
そのあたりを含め
すべてが好きだ
大好きだ

2012年7月20日金曜日

目撃者

たとえば
すべり台の途中で
世界がわたしの前から突然溶けて
なくなって
独りだけすべり台の途中の位置に
取り残されてしまったら
一緒にいたあなたは消え去った世界で
何を頼りに生きていけばいいのだろう

あなたのことがいつも心配だ
私のことを忘れてしまう
あなたは私のことを
忘れているのではないか

とある午後
私はあなたに鍵をかけて
その鍵を飲み込んだ

あなたの中に誰も出入りできず
あなたがさらわれても
誰も気づかぬように

ただ私だけが
それを目撃していた

2012年7月19日木曜日

木の子ども

木の子どもは
父母(ちちはは)に抱(いだ)かれて空に顔を出す
笑顔の表面は
つややか

風も
やってきた小さな虫も
滑ってしまう

木の子どもは
父母に抱かれてオトナになる
清々しく薫る
花を咲かせる

誰も
その花に
見惚(みと)れないものはいない

木の子どもは
もう子どもではなくなった
だが笑顔は
あの日のまま


(李先生に)
分度器な気分がするぞ

2012年7月18日水曜日

あなたは私を無視しないの

信じてよ 私を
信じないでよ 私を
私に言われて変えないでよ あなた
私に言われて変えてよ あなた
あなたに抱かれたいの 私
あなたに抱かれたくないの 私
立ち入ってこないでよ あなた
立ち入ってよ あなた
しらけた顔で見物しないでよ 私たち
しらけた顔で見物してよ 私たち
雨が激しく降ってきたじゃないか 心の中
雨が激しく降ってきてないじゃないか 心の中
すべては私を飲み込まないの 死ぬまで
すべては私を飲み込むの 死ぬまで
あなたは私を無視するの 昨日から
あなたは私を無視しないの 昨日から

2012年7月17日火曜日

うえからものを

うえから ものをいうひと
したを みている

うえから ものをいわれるひと
うえを みている

うえから ものをいうひと
したしか みない

うえから ものをいわれるひと
ひろいうちゅうが ひろがっている

2012年7月16日月曜日

ぶんかいま

やきなす
やきな



きなこ

きな

こまったな
こまつな

こま
つた


まわり
ひまわり
まり

ひま


まり

なつのよ
つのよ


よの


りくつづき
りくつずき
くつ
つづき

くすりづけ
すりつけ

つけ



けつろん
けつろ
ろん

んろ

2012年7月15日日曜日

悲劇

崖は斜めに切り立っている
あなたの髪の生え際もまた
斜めに切り立っている

鳥は
どちらを目掛けて
降下したらいいのかわからない
という悲劇
と喜劇

日直

集中して聴いているのに
いくら聴いても分からない授業がある

簡単な足し算や
ちよっとした婉曲話法
誰もが知ってる当たり前の法則が
一箇所にまとまって何かを相談しているだけだ

いわば
私には関係ない事か
または
もともと私を欺こうと企てられた事なのか

水飲み場で
いじめる相手を待っているのは
いじめっこなのだろうか
関係ない人なのだろうか

休み時間のチャイムは
教室の大きな時計と
少しずれているが
それは
放っておいて大丈夫なのだろうか

音楽室から
ピアノの音と
歌う声に混じって
うめき声が聞こえてる

おお
ミステリー
僕らはますます集中力を空中で弄んで
巻きつけて
手首の血管を止めようとしている

何か不都合があれば
日直に言ってくださいと
きょうの日直が言っている
その日直がまずい
明日の日直のほうが
きょうの日直より
まっすぐに立っているから