静かな夜に
してはならないこと
静かな夜に
してみたいこと
してはならない恋を
してはならない人と
してはならないように
してみたいなと
自転車が歩く僕を
追い越していくけど
僕の
自転車ではないんだ
僕は道を歩いている
それは部屋に僕は帰りたいからだけど
知らないうちに遠回りをしてしまうんだ
自転車をさっきから僕は
思い出して
中国にないから
海を渡って乗ってくるのを想像して
僕はいるんだ
僕の自転車は
中国にはないから
日本に在る自転車は
日本においてきた
つかわれていない僕の
自転車なんだ
*
社長は職業ではなく
性格である
だから目標でもなければ
結果でもない
社長の性格を持っているものが
社長になるだけだ
社長は一つの生き方だという人がいる
だが
一つの生き方として社長があるのであって
(社長でない者が)
いろいろな生き方の中から選択して
社長になるのではない
社長はハナから社長であり
社長以外の何者でもない
いってみれば
社長は純粋な生き物なのだ
社長は社長であることから逃れることができない
また社長でないものは
社長が形成する世界(宇宙もしくは小宇宙といつてもいい)の中心に
位置することは最後までできない
かなしいかな
そこに感情や夢や希望を差し挟む余地はない
さて
ここでは
世界に数多いる社長の中から
一人の社長を選択し
その社長に関してさまざまな事象を
検討してみたい
その社長は
社長族(ここでは、以下そう呼ぶことにする)の
中心に位置するわけではない
もっとも
すべての社長は多かれ少なかれ
多次元世界を形成しているので
その中心は求めることはできないが
文明社会(ことに自由主義経済社会)における
社長研究の初心者 乃至 一般市民にとっての
平準的な社長像を中心とするならば
異端 若しくは異境に在る ということができる
統計学を用いてさまざまな指標に照らしても
その主だったマークポイントはその事象を示している
なぜ
平準的な社長を取り上げないか については
追って示す(暗示も含む)こととするが
社長Σ(ここで取り上げる社長をそう呼ぶことにする)について
考察を進めていくと
そこに世界のあらゆる社長の謎を解く鍵ともいうべき
ある普遍的な事実に行き当たることに気づくだろう
すなわち
社長は職業ではなく性格であるという命題
そしてまたその周辺に
この命題を支えるべく
いくつかの柱が存在するということに
私感を述べれば
これは実に驚くべき風景である
今まで常識として扱われてきたものは
たちまち風化してしまうだろう
さあ
社長Σへの扉は開かれた
あなたは入る勇気が在るだろうか
社長族の世界に
私がご案内するとしよう
最後までお付き合いを願いたい
社長であるあなたも
社長でないあなたも
走り出すバスを見送るのは
つらいことだ
もう二度と
約束して会うことはないから
つめたい蛍光灯の光に照らされた顔は
お化けのように青白い
いつか見た
ムンクの絵のようだ
そういえば
今日の月は欠けていて
青白い光を降らしている
涙を搔き出すにも
頼りない
何も話さないうちに
バスはやってきた
気がつくと
バスはもう何処かの駅に到着している
わたしに入門するには
覚悟が必要だ
そもそも
その覚悟を
何処かに置いてきてしまっているらしい
母親のおなかの中か
それとも
泣きながら通い始めた
幼稚園の道具入れの中か
家のそばの原っぱか
もう
烏に運ばれて
何処かに捨てられてしまったかも知れない
私は
わたしに入門するための
心の準備をする前に
梯子をはずされたままなのだ
何かがたりない
それは
ただの言い訳だろうか
わたしへの道は険しい
わたしの門はまだ見えてこない
夜も白々と明けてきた
窓を開ければ
霧のにおいが漂っている
門を叩かなければならない
門を見つけて
覚悟を決めて
きょうこそ臨まなければならない
だか
まだそこにいたる道筋さえ
はっきりしていないのだ
わたしは
わたしに
入門したい
わたしとは
何なのか
わたしは
何のためにあるのか
いい わたしをみつけるには
どうしたらいいのか
わたしには
どのくらいのお金と時間がかかるのか
わたしを
上手く使いこなすにはどうしたらいいのか
人の役に立つ
わたしを作るには
どんな方法があるか
わたしを所持するために
届出や手続きをどこでやったらいいか
わたしは
早く
わたしに入門し
初級をクリアしなければならない
そして
はやく仕事に結び付けなければならない
もうすぐ誕生日が来る
それまでには
わたしは私の初級を取得し
中級の勉強を始めたい
もう何年も愚図愚図している
だれか
手伝ってくれる人はいないか
いい参考書を
教えてくれないか
夕闇の部屋で
わたしは考えながら鏡に向かっている
全身を映すことはできない
向きかえって
パソコンの電源を入れる
在り来たりな模様と文字が
浮かびあがる
私はわたしを検索してみよう
いくつかの情報が示されるはずだ
さあ
いまから勉強を始めよう
明日には
明日がやってくる日が
ある限り
いや
なにはなくとも
この私が望む限り