2011年10月16日日曜日

あなたは濡れていないだろう

あなたは濡れていないだろう
この雨の夜の中でも
あなたは雨を除け
濡れていないだろう

あなたはすでに濡れていたから
濡れるべきところは
濡れているたら
もうこれ以上濡れることはなかったのだろう

あなたは
乾いた笑いに湿り気をなじませて
絡み合う手をしっとりと結び
濡れた瞳で見つめているだろう

だから
あなたは
この雨に
濡れていないだろう

濡れている私をよそに
乾いていっているだろう


☆読んでくださっている方へ

ありがとうございます。
今、中国に来ていて、自分のブログを毎日見ることはできません。二週間に一度ぐらいは見られると思います。
ただしコメントが書き込まれた場合、コメントはすぐにメールで送信されてきますので、見ています。Pollyさん、匿名さん、メールで感想を送ってくださる方、ありがとうございます。
マツザキヨシユキ

2011年10月15日土曜日

そしたら雨が降ってきた

あなたのことを考えて
下を向いて歩いていた
そしたら雨が降ってきた

あなたのあなただけにしかないものを
その素敵さを思っていたら
いろんなことを忘れてしまい
そしたら雨が降ってきた

あなたと私は
うまく別れられたかな
私はそうは思っていない
あなたはあまり気にしていないだろう
最後は笑顔で手を振って
うれしい気持ちがあふれていたけど
それが最後だったのかな

そしたら雨が降ってきた
天気のことなど気にしていなかった
あなたのことを考えていたから
ほかのことはすっかり忘れて
街路樹や花壇が美しかったから
あなたのことを思っていた
そしたら雨が降ってきた

別れに涙は似合いすぎていて
私はなおさらかっこわるかっただろうから
笑顔で手を振る雰囲気で
じっさいとてもうれしくて
あなたもきっとうれしくて
それはとてもよかったな

あなたはその後どうしているの
私はなにかに弾かれたように
空を飛んで遠くの町にやってきた
時間は過ぎていったけれど
いまからまたあのつづきもできそうで
いろんなことが
ごちゃごちゃになって混じり合い
前後不覚
倒れこむ勢いで
足を出せば前に進む
乾いた石の歩道はさっきから
ずっと続いていた

目的地を目指して歩いているんだ
そしたら雨が降ってきた
雨は歩道を濡らしている
あなたは濡れていないだろう

愛しているといえなくなった日

愛しているといえなくなった日に
曇り空を見ている

道を歩くと
自分の靴音が控えめな音を立てて鳴っていることに
心地よさを感じる

これは
さびしい
悲しみのリズムを刻んでいるのだろうか

小さな鳥は
私が見ていることに気づくと
首をかしげて何かを考えているようだったが
すぐに飛びたって
見えなくなってしまった

すべてのことがなかったかのように感じるのは
感傷的な心のせいだろうか

私が歩いていくと
木々や芝生の庭が
前方からやってきて
後方へと去っていく

見上げるられた
木は
角度の変化に合わせて
葉っぱが膨大な情報量の映像を浴びせかけてくる
しかしそれは
ひとときのことだ

銅像の向こうを回り
その古い建物の入り口から中に入り
学生たちの間をすり抜けて
教室に入ると
さまざまな国からやってきた
おそらくはさまざまな事情を変えた人々が
かたことの言葉や
流暢な母国語でしゃべっている

私は
日本で生まれ日本で育った
マツザキヨシユキという名前の人間だが
いまは
ソンチーイーシンだ

ソンチーイーシン
あなたは誰ですか

あなたはなにを
したいのですか

2011年9月24日土曜日

僕は年老いて指揮棒を振る

僕は年老いて指揮棒を振る

それに合わせて
楽器を奏でる楽団は見当たらない
もちろん歌を唄う歌手もいない

僕はいつかみた映画の
ワンシーンのように
森の中で指揮棒を振る
たまに
鳥や獣が興味ぶかげにみているが
直ぐに
何処かにいなくなってしまう

だから
だいたいはひとりで
指揮棒を振っている

だか彼には
楽団とピアニストが
彼の動きや表情を注意ぶかく観ているのが見えるので
彼は
気を緩めることなない

彼の唇には
いくつかの国の言葉が
かわるがわるたち現れるが
すぐにどこかに消えてく

隠れていたものたちが
彼の指揮によって
たまに姿を見せたり見せようとしたが
彼はその気配を感じ
それを織り込んで
さらに先を指揮した

すると突然
ひとりの美少女が
砂浜の道を駆けていったかと思うと
また戻ってきて
親しげに彼の顔を覗き込んだ
彼は狼狽したのを悟られないように
海のほうを向いて
意味のないセリフを吐いた

美少女は屈託なく笑ったが
それができたのは
深い悲しみと向きあい
それを押しやる術を学んだからだった

僕はそれにやっと気づいた時
彼女の姿はその国になかった

波音が森の上空を回り
何処からか銃声が聞こえてくる
彼ももうここにはいない

僕は
いくつかの国の言葉を
詩のリフレインのように発して
携帯の電源を切り
森に還すため
土に沈めた

2011年9月23日金曜日

何のために


という字に
おいしそうな食べ物は
ついていない

釣針と違い
先にギザギザもない

何のためにあるのだろう

2011年9月22日木曜日

途轍もなく不思議なもののために

途轍もなく不思議
不思議に思うのは何処か
自分を何から引き受けたのか
流れているだけなのか
流れてさえいないのか

自分を放(ほう)っている時は
何が引き受けているのか
引き受けていないのか
放っているだけなのか

何が必要なのか
思考する必要があるのか
あるなら何処にあるのか
必要なものは必然か
必然は語っているのか
疑問を受け付けないのか
疑問さえ内在するのか
包み込むのか

自分は自分に必要なのか
必要は自分を探すのか

金髪の男が黄色いボールを投げ
それをもう一人の茶髪の男が
杓文字のような板で打ち返した
ボールはベンチの方向に転がり
さっきまで本を読んでいた
黒い髪の女が拾い上げて
茶髪の男に投げた
笑顔と一緒に
何か言葉を発した
男も言葉を発した

世界とは自分を中心に広がる時間と空間なのか
中心は別の所にあるのか
ないのか
中心が無数にあるのか
無数にあったのか
一つもなかったのか

黄色いボールから
女が遠ざかり
茶髪の男が近づいた
黄色いボールから
茶髪の男が遠ざかり
金髪の男が近づいた

巨木が緑を揺らし
銅像の周りを廻った
銅像も自分の中心を軸にして回った

巨木と銅像の間を
笑い声が波となり進み
エコーが小さい波としてやってきて
干渉して渦巻いた

その渦巻いた中心は
周りを巻き混んで
激しく回った

辺りの風景は
加速度に耐えきれず
中心を拡散し
何処かに追いやる力が働いた

働きは
エネルギーを移転し
移転する時に
風を起こし
ひかりを乱反射した

乱反射の中心で
必然が笑い声に移転し
黄色いボールを追った

いま
そのボールは
自分の視界になく
ここに存在しないかのようだが
ボールは
自分に向かっているかもしれない

途轍もなく不思議だが
自分の中心が
ボールに近づいている

黒い髪の女は
二つの目を頭の前側につけ
中心のバランスを
うまく取り
向かってくるものに
迷いを与えているのだ

2011年9月21日水曜日

優しい人に

優しくしてくれる人と会いたくない日に
いままでの生き方が悔やまれて
息ができず
濁った池のほとりに立って
正面からさしてくる夕日に
立ち向かうわけでもなく
途方に暮れていることさえ
あとからあとから
悔やまれてくる

繰り返し聞いた母の声は
正義と嘘つきの話を語っていた
繰り返していた
日々はいまも
繰り返しているようだか
いままでとは違い
私を守る砦は私の中にない

ウイルスが侵入しないよう
敵が攻撃をしてこないよう
びくびくするばかりだ

優しくしてくれる人と会いたくない日に
優しい人のことを思う

優しい人が
いつまでも生きていかれますように
幸せを感じられ
愛に恵まれますように
いつまでも優しい人で
いてくれますように

私も
優しい人に
なりたい

2011年9月20日火曜日

私はあなたに会いに行くことができる

世界のどこにいても
あなたに会いに行くことができる

たとえば
明日
台風の過ぎた砂浜が見える
いつも待ち合わせがうまくいかなかった
カフェで
会うことが
できなくても

夏の日差しが輝き
夜になり
月の独壇場となる
あの
海が見える場所までいけば
あなたと
会うことができる

たとえば
二人で計画した通り
2016年の初夏に
あなたの父と母が結婚式をあげた
あの教会で
衣装に身を纏って
会うことが
できなくても

お互いのことを知るために
歩いた
素敵な街並みと店で
紅茶を飲んでサンドイッチを
笑いながら頬張っている
あなたに
会うことができる

私は
いま一人で
言葉の通じない国にいるが
あなたに
会いに
行くことができる

あなたは私の気持ちをもてあまして
やはり言葉の違う国にに旅立とうとしているが
あなたがどこにいても
ふりかえれば
私に会うことができる

インターネットが繋がれば
私は詩を書き
あなたに読ませるために
ブログにアップし
tweetする

私はあなたに
会いにいくのだ

2011年9月19日月曜日

マオはくじらの肩の上

最近
中腹に上がっていることがおおい蒼いくじらだが
友だちのくじらは
ガーデンプールと
中庭を挟んだ温室プールにいる

父と母のくじらは
この辺りには来ていない
(ロープウェイに載せようとした時に
すでに載せられない大きさだったから
諦めたようだ)

下のは施設には
くまとしかがいる

潮が引いたときに現れる道を
荷馬車で運ばれたのだ

中州のような
低く小さな島に
ひしめき合って住んでいるので
たまにくまとしかは
恋人のようになる

くまは
ヤシノキに登っていることもある

人は
どこにいるのだろう
携帯の着メロが聞こえてくるほらあなの中か
商店の向こうに霞んで見えるビルのネオンサインのあたりか

日曜日に
観光電車が駅に着いたら
だれかに
きいてみよう

色んな疑問を放ったらかしに
したままだったから
質問がうまくできるか
わからない

猫は思った
そういえば
あの国では
知り合いの猫たちはみんな
マオとよばれていた

マオね
にゃーんだろうにゃん