2011年4月3日日曜日

あのコのことはわたしがいちばんよく知っている

あのコはスキ
あのコはキライ
あのコはまあスキかな
あのコはウザい
あのコは超便利
あのコはムカつく
私は?

あのコが店に入って行く
あのコがスマホでメールしてる
あのコがホットペッパーみてる
あのコが買い物してる
あのコがカレシと笑ってる
あのコが猫にお菓子あげてる
私は?

あのコが神社で手を合わせてる
あのコが男に怒鳴られてる
あのコが料理を作っている
あのコが泣けずに唸っている
あのコが友だちを慰めている
あのコが嘘ついて誤魔化してる
私は?

あのコは私の友だち
あのコは私の鏡
あのコは私のライバル
あのコは私の監視者
あのコは私の愚痴を聞いてくれる
あのコは私を遠慮なく叱る
あのコは私
私はあのコと同じ

あのコは私と同じ?

2011年4月2日土曜日

寄付をする人

大きなお金を寄付するとき
彼は幸せな気分ではない
誰かと何かを共感できるとは
思っていない
彼の目的は共感ではないし
ましてや感謝されようなどもど思ったことはないのだ

彼は寄付を済ませたあと
いつでも孤独になる
云い知れぬ寂しさに襲われ
しばらくは黙して悶絶する
彼が得たものは
このような時間なのだ

だが
彼はその孤独こそが
一番大切なものだといつからか知るようになった

引き合う孤独の力が
宇宙を形成し
人は愛について語りさえする 
 
宇宙が彼を包み
彼は自分の考えたことが
記憶という海から溢れ出し
銀河を流れ去っていく様子を見る

もはや
どこに視点があるのか分からなくなる

所在無げな彼のポストに
乱れのない文字で記された
一通の礼状が届き
指先がその冷たさに出逢った


☆ この連は著名な詩の表現を引用しました

2011年4月1日金曜日

古いラジオ

古い男が鳴らなくなったラジオを
修理している

古いラジオが
古い男の
思い出を修復している

いつのまにか
夜明けが窓の外に来ている

ラジオが時報を告げた

2011年3月31日木曜日

雨の遣い

あなたは外でつらいことがあって
その小さな部屋に逃げ帰ってきた

ベッドの上に体を投げ出したまま
動けなくなってしまった
シャワーを浴びたいのに
じっとして自分を癒すしかなかった

窓の外で雨が降り出したが
気づく様子もない

その雨は私が遣いにやったのだ

あなたは
雨の音を聴きながら
それが何であるのか認識できない

幸せだったあの頃の
遠い歌声が
聴こえているような気がしているだけだ

2011年3月30日水曜日

子どもたちへ

海から魚の女の子がやってきて
町は海の底に沈んでしまった
女の子は人間になったかな

このあとの世界は
君たちがすきなように作るといい
絵を描いてみて!
僕が大人たちを説得するよ

どんな町を作りたい?

2011年3月29日火曜日

ノノノノノ
ノノノノノノノノノノノノノノノノ


のののののののの

nonononononono
nononononononoノノノノノ
ノノノノノnono

あなたは私が間違っているという

ラジオにのせて

夕暮れ時に...........

ノノノノノノノノ
針葉樹の葉の
ノコギリ

ノノノノノノノノ

ノノノノノノノノノノノノノノノノ
ノノノノノノノノノノノノノノノノノノノノノノノノ

2011年3月28日月曜日

夜はおやすみ(私の願い)

人命救助だって
夜はおやすみ
記者会見も
記者クラブも
監督官庁も
夜はおやすみ

眠れないのは
あなたとわたし
そして
人が操れないもの

電車だって
会社だって
役場だって
夜はおやすみ
でも本当は

働いている人がいる
起きている人がいる
眠れない人がいる

でも
誰かが蓋して

夜はおやすみ

ニュースは時々目を覚ます
再放送はボタン一つ
ニュースライターは夢の中で
徒競走

大事なことは
朝になるまで知らないことにします
そのほうが都合がいいこともあります

夜はおやすみなさい
それが大人の約束

どうか
朝には目覚めますように
明日こそ できごとを先送りしませんように

新聞記事より

原発20キロ圏内、捜索進まず…1657人不明
読売新聞3月27日 21時13分配信
 
福島県大熊町や双葉町などの県警双葉署管内では、今も1657人が行方不明のままで、遺体は12体しか発見されていない。
同県警は「原発の20キロ圏内に遺体が何千体残されているか、わからない」としている。

2011年3月27日日曜日

念のため 見殺しに

念のため
この辺りの野菜は廃棄してください
10年食べ続けると
健康を害するおそれがありますもので

念のため
乳児に水を飲ませないでください
どうしても必要な場合は
大丈夫ですので飲ませてください

念のため
避難地域を広げます
いつ帰れるかは
わかりませんが

念のため
この辺りには近づかないでください
生存者は
見殺しにする方針です

2011年3月26日土曜日

ソファに坐って寛いでいる人

さっきからソファに坐って寛いでいるあの人は
ここが自分の部屋だと思い込んでいるらしい

煙草を吸い
ツマミを次々と口に運び
ビールを美味しそうに飲む
その態度は
あまりに堂にいっているので
私のほうが他人の家に来ているような錯覚に襲われる
出前でも注文しそうな勢いだ

大きなあくびをした

あの人には
私が居ることが分かっていないのだろうか

わたしは透明人間ではないのに
あの人はあの人の日常をそのまま抱えて
この部屋に来ている

わたしは
わたしの日常をかき集めて
勝負しなければ と思えてくる
そうしないと
私の存在のほうが希薄化してしまう

しかしなぜこんなことになってしまっているのだろう
いくら考えても思い当たるフシがない
いつの間に来たのだろう
なぜ 私は気づかなかったのだろう
第一 私はいま何処にいるのだろう
ソファの後ろのパソコンのところか

いいや
パソコンは付いているが
私が居る気配がない

そのとき
耳鳴りのようにサイレンが鳴った
まただ
と思った瞬間 
汗のようなものがタラタラと
床に流れ落ちた