2011年2月4日金曜日

2010年2月4日に来た手紙

封を開ける前から手紙がサヨナラを言っている
寒い夕に届いた薄い桜色の封筒は
あなたからとびたったひとひらの花びらなのか

夜の暗いトンネルを抜け
寒い人ごみの雑踏を抜け
ポストにやってきた
ため息のようにポトンという音を響かせて

封筒は季節を映して色を変えてきた
まるで映画の予告編みたいに
これからのふたりの未来を見せようとしていたのか

最後の手紙はいつもと同じブルーブラックの宛名
よく似合う花の切手にあなたの地名
なんど行ったことだろう
何度行くことだろうと思いながら

2011年2月3日木曜日

スキを狙って

私の値段は幾ら?
とても大事なことなのに
そのシステムの中で自ずと価格が決められてしまう
自分には抱えられないほど
大きくて小さな私なので
私の価値はさまよう
キスをする時は別世界が入ってくるので
伸ばした手に引っかかった紐を指に巻き付け
それを頼りに戻れるようにするけれど
有効かどうかは分からない
戻った場所が元の場所なのか判断がつかないからだ

相手はなにを考えているのだろう
いつも少しだけ興味を持つ
でも尋ねる術が思いつかないので
なるがままいる

私の名前はキミという
私がキミなんて
たまにこんがらがる
どうでもいいことだが
何か深い意味があるのだろうか
たぶんないだろう

幽霊を見たことはないが
私は幽霊のようにあなたの前に現れる
初めて私を見たあなたは眼を輝かせて
落ち着きなく紳士を気取る
または気取りなく話しかけてくる

私はあなたの指の一本を握り
半分を自分のために使おうとするけれど
ごちゃごちゃになって
何人もの私が現れるので
結果はわからずじまいだ

私には価値があるとみんなが言う
私もそう思う
私はやりたいことをやる
そのためにやりたくないこともやる

ただ たまに
その二つは入れ替わる
私の許可なく
私が忙しいスキを狙って

2011年2月2日水曜日

こまどり

こまどり
こまどり
こまどり
こまどり

きみどり
ぎみどり
きみどり
きみどり

くさいろ
くさいろ
くさいろ
くさいろ

2011年2月1日火曜日

帰り道

夜道をゆっくり歩いて帰っていく
パンの袋を破ってパクつきながら
空にはお月さん
通りの向こうにはコツコツ音を立てて急ぎ足の女
間をバイクが通る
私はそろそろすり足気味で歩く
手にコンビニの袋揺らして
コンクリートで覆われた橋を渡る
パンはおいしい
部屋についたら灯りをつけて
暖房をつけて
トイレに入る
トイレには綺麗な神様がいるから
だれかがそういっていたから
そのあとは
眠くなるまで起きていたら寝る
それまでの間に何が出来るか
眠った後にすることよりいいことができるか

2011年1月31日月曜日

難しい質問

世間はいいものですか
爽やかな風が吹いていますか
励ましあっていますか

大事なものをみんなで守っていますか
強欲な人に牛耳られていませんか
ズルをする人は損をしていますか
夢を持って生きてゆけますか

嫉妬ややっかみに苦労させられませんか
心ない罠を仕掛ける人はいませんか

子供の笑顔が守られていますか
人の気持ちや尊厳が大事にされていますか
理不尽なことに埋め尽くされていませんか
敵と味方に分類ばかりしていませんか

自分だけよければいいという行いが蔓延していませんか
無意味な破壊行為を繰り返していませんか
欲望にまみれて幸せを見失っていませんか

自分を本当に大切にしていますか
きょうを素敵に過ごしましたか
明るい明日が迎えられるように

2011年1月30日日曜日

ポッカリあいた穴

詩人が青空に白い雲があると言う
それで私は空に雲があることを思い出して
見上げてみる

空は青い
その言葉のせいかどうかはわからないが
確かに空は青いと思われた
その青空に
雲が幾つか浮かんでいる

詩人は
雲は地球に張り付いているようだと言う
浮かんでいると言うより
張り付いていると言う

なるほど
雲は地球にへばり付いている
そして青空は消え
群青の宇宙が広がっている

詩人はつづけて言う
宇宙は飲み込めるよ
大きく口を開けなくても
小さなカプセルだから大丈夫と

私は手渡されたその小さなカプセルを
唾と一緒に飲み込んだ
すると一瞬にして私は
宇宙の外側になってしまった
自分の意思が宇宙を形成しているようだ
星々の運行やその色
生命の生き死にも

詩人は言う
私は詩人ではないと
私は旅芸人だと
そして もう
旅の一座となって去って行こうとしている

私は引き止めたかったが
引き止めることはできないと感じていた
さびしさが溢れてきた

私は私にあいた穴から
青空を見た

ポッカリとしていた
穴から覗いた地球の風景

2011年1月29日土曜日

影絵の物語

めちゃくちゃだったのか

めちゃくちゃだったのだろうか

わざとめちゃくちゃにやったのだろうか

切り絵の抜け殻のように
あなたのかたちが
夕空に残っている
風にたなびいている
当然のように
昔からそこにありました という顔をして

これは現実の景色なのだろうか
華奢なあなたの比喩として
思い余って
現れているということなのだろうか

胸では鈴がなっている
場違いな雰囲気を醸し出して

めちゃくちゃになる
めちゃくちゃになっていく
どんどんめちゃくちゃになっていく
めちゃくちゃになって
あるものは空に飛んでいく
あるものは穴の中に入ってしまう

誰かに相談してみようか
そうするべきなのか
それとも
成り行きを見守るべきなのか

またたくまに
夕空に星が瞬き始める
そして風が止む
そしてまた風が吹く
当たり前のように
きのうからそうしていました と言いたげな感じで

ああ
またもや
めちゃくちゃな映画が始まってしまう
もう100回以上はやっている

観客を取り残して
語りたいことだけが
語られていく

2011年1月28日金曜日

見つめられている

線に沿って
刃をあてて切るのですよ
定規を当てて

あなたは先生のように
やさしく命令した

しかし
まっすぐに切るのはむずかしい
いっぺんで
し終えようとするときには
いつもうまくいかないことばかりを想像してしまう

刃は進む
叫び声を巻き込みながら
大事なものを絶ち切りながら
そのためか
刃は戸惑い
よどみの吹き溜まりを作る

こんなことをしなければよかった
してきたことは逆さまから見ても
そこに佇みつづける

溜息とともに
気を散らす
切り取られたものが
私を見つめている

2011年1月27日木曜日

白いそれ

灯台?
岬に突き出たセンサーは
敏感すぎて
人の
声ともつかない声まで拾ってしまう
巨大なパラボラを携えている訳ではないけれど
たまに
何かの電波を受信してしまい
その都度あたふたする
表情をあわてて取り繕おうとするのだが
おそらく
誰かに監視されている訳ではない

灯台のようなそれは
何のためにそこにあるのだろう
ひょっとして
灯台自身の一人芝居?

月の夜に
カメラの感度をあげて
それを撮影してみた
シャッターボタンがぬるくなるまで
指を離さなかった

凪いだ波は無数のカイコが分泌した絹
群青の大地の崖の上に
白くなめらかに浮かぶ
立ち上がったそれ

私は黙れば黙るほど
饒舌になる
誰かがニヤリと嗤い
私は灯台の灯に照らされる

2011年1月26日水曜日

亡命詩人

陽炎の向こうに蜃気楼が現れ
その彼方にオーロラの光がたゆたう
地面を見つめていた私は
手にしていた文庫の詩集を手のひらで丸めて
現実のロープにつかまろうとしていた

足元に霧が流れ
何かの音が木霊し
小高い山の頂が
浮き沈みする

あれはいつのことだっただろう
時の流れを無視した不確かな記憶が
目を瞑っていない瞼の奥で渦巻いて
挙動不審にさまよっている

私は手にした詩集の1ページを開く
そこには詩を編み出そうとしている人物が描かれている
誰なのかは分からない

本を閉じてまた開くと
そこには詩が刻まれているだけだった