2014年1月10日金曜日

薄い革袋

薄い革袋に
荷物をたくさん詰めて
やぶけそうになっても
耐えて
このままやっていきます

肉や骨
毛髪などが一緒くたです
もう
くたくたですが
なぜか
新鮮で
血がかよっているせいか
冬でも暖かいのです

薄い革袋のうえに
布をかけて
紐状のもので結び
定期券を持たせて
電車に乗せます

この
革袋を愛するひともいるのです
革袋はそのときほんのり染まり
甘美な香りに
酔いしれさえするのです

皮から湯気を発して

2014年1月9日木曜日

いないいないバー

ぴたっとキマルそのポーズ
その瞬間
ドキューン×3

素知らぬ顔
アンニュイ
不埒な女なの そうそう

今日は顔の半分マスクして
立ち姿
細枝に可憐な花弁

はんなりキメタそのポーズ
その瞬間
スポーン×3

猫なで声 かすれ声
いないいない
バー×3

ヴァーサス イケメンじゃない
におう におう
メン×3

2014年1月8日水曜日

まだ行ったことのない場所が


まだ行ったことのない場所が
写真の中から誘っている
私はここでこうして生きてきたと
愚痴まじりの味わい深い話を始める

ここ日本は
2014年1月。1週間前からの天気予報が当たって
夕方から雨になった。
耳が寒さの向こうに
聞き耳を立てているのは
寂しいからじゃなく
未来の友だちを捜しているのだ

その写真には
葉がすっかり落ちてしまって
だがもう間もなく芽吹きそうな
広葉樹
雨上がりの濡れた道
その向こうに
雲の小どもが遊びにきそうな池

私は
部屋に帰ってきて
何かを整理するつもりもなく
だだ思いや視線を巡らせ
部屋の中を行き来し
昨日の残りの麻婆豆腐を
暖めて食べた

まだ行ったことのない場所が
誘ってくれているのは
幸せなことだ
そんな場所が
まだ五万とあり
その数は死ぬまで大差なく減らないだろう

私は
まだ行ったことのない場所に
行きたいし行きたくない
だが
ただどこかに
まだ行ったことのない場所があることが
私を生かしている
と言うことができるのだ






2014年1月7日火曜日

そしてあんたは

愛するとは
裂けた傷口を癒すことだ と
あんたは言った

一緒にいると
周りの空気が淀んでくるよ と
あんたは言った

離れていると
あんたを恨みたくなるんだ と
あたしは言った

波風が立たないと
不安と絶望で眠れないよ と
あんたは言った

そして
あんたはいなくなった
嵐の夜が終わった朝の
金色の日差しの矢の中
あたしもいなくなった

2014年1月6日月曜日

星屑 落下星(らっかせい)

得意なことを自慢しているあなたの
眼の輝きが好き

苦し紛れのいい訳を探すときの
あなたの声が好き

海でも見に行くかと
ぶっきらぼうに誘うあなたが好き

階段をひとりで走って上っていってしまう
気遣わないあなたが好き

お前は何がほしいんだと
決めているくせに訊いてくるあなたが好き

あなたが好きで好きでどうしようもない
のぼせちゃってる私も好き

サンダルつっかけて
夜道に星屑 落下星 探しにいこう

2014年1月5日日曜日

忘れてはいけない

冷たい風にあたり
ぼやけた気持ちをしゃっきりさせます
小さな勇気を取り戻します

忘れてはいけないもの
それは
真空の夜空から見守っている星
春風を生む暗い海
あなたが作りだすことができる未来

覚えていてほしいこと
私たち出会えたこと
離れたあとも忘れない
あなたの手の温もりが残って
いまも私を励ましている

2014年1月4日土曜日

あなたと私

電車にとびのれば
すぐに生まれ育った街に行ける
そこには見慣れた道
街路樹
駅前のビル

まだ
あなたと私が一緒にいたころの
思い出が
影のように 遺ってる

もう一度出会いたいなんて言えない
あの頃の私たち
楽しすぎて
輝いていたから

いまは静かに時を
やり過ごしている
その時を
美しい色に染め上げたくて

暮れ行く街
遠く 道の見えなくなるあたり
まだ
あなたと私
ふざけながら
歩いていそうで

2014年1月3日金曜日

足りない気持ちに包まれて

太陽と風の香りがする
ベッドに顔をうずめて
透明な涙を零してみたら
滴はすぐに
見えなくなった

部屋に舞う埃の小宇宙
フッと吹き飛ばして
どの靴を履いて出かけようか
考えてみた

君は遠くて近いから
君はやさしくて残酷だから
ボクは君と無関係に
生きていく

さよなら
さよならをおそれた
愛しい時間たち
もう君がいなくても
足りない気持ちに
包まれて 寄り添って
生きてゆける

2014年1月2日木曜日

夜を待つ朝は

夜を待つ朝は
無骨な薬缶の冷めた水の心

なんのために
生まれてきたのか

思春期は遠く過ぎ去ったのに
青春の蹉跌は
錆びて胸に刺さったまま

心臓が鼓動を打つたびに
これでもか、これでもか、と
痛みを投げかけてくる

夜は眠るもの
朝は希望を抱いで外に飛び出すものと
オトナは教えてくれたけど
むしろ 夜の闇の中にしか
希望は見出せないと今 感じてる

なんのために生きているのか
自己満足のためなのか
それとも他人を満足させるためなのか
そもそも意志や思いなどは無関係なことなのか
大事なことは
口を開けて待っていても
学びようはなかったのだ

夜を待つ朝は
無骨な薬缶の冷めた水の心

2014年1月1日水曜日

君の磁石

君の磁石はいい磁石かい?
何を引き寄せるというのだ
どこまでも渡ってゆける鉄の舟か
太古ににちりばめられた無数の恒星か

俺の磁石はいい磁石はかい?
何を弾き飛ばすというのだ
悪い連中が抱え込んだくすんだ名誉か
夜な夜な取り出して眺める不安と恐怖か

君の磁石はいい磁石かい?
何を預言するというのだ
大事なひとを即座に見分ける秘伝の術か
悪魔に出会わない藪の中の一本の小径か

俺の磁石はいい磁石はかい?
何を言いよどむというのだ
短い命が絶えるまでの残り時間か
悦楽と幸福を得るための生け贄のリストか

磁石は引き寄せ弾き飛ばし
預言し言いよどむ
人の胸の上で
踊り狂って光を反射して