2013年1月16日水曜日

寝心地が悪いのは・・・


きょうの風は大丈夫です
海で生まれ波を蹴り砂浜と森を抜け
雪の積もった屋根を越えて
やってきましたが
怪しいものには触らなかった

顔という丸い大地にきて
そのカラダのなかにも
分かれて入っていった

少女は産毛をふるわせて
何かをしていた

きのうの風は
だめでした
悪いものを含んでいた
怪しいものに触ってしまった

風は素直だから
そのうえ
気まぐれ風まかせだから
気づいていない

運んでは行けないものがあると

人は風のせいにして
風の強い夜には
寝心地が悪い

2013年1月15日火曜日

足は長い

足が長過ぎて邪魔なので
切ってくれないかと医者に相談したら
バカもの、
長くて何の不自由があるか、
短くて伸ばしてほしいと言って来る者はあるが、
バカもの、
痴れ者、
アホンダラ、
できない、
やらない、
あっかんべー、
と言われてしまったので
長い足を竹馬のように互い違いに前に出して
地下鉄に乗って家へ帰った

とんだ無駄足だった

足は短い


足は短い
長くはならない
あきらめなさいと
先輩が言う

胴より足は短い
僕は背の低い少年より
短い足を付けている

曇り空の凧を見上げて
あの足より短い と
嘆かわしくなる

2013年1月14日月曜日

道を湿らせて

川沿いの道を歩いた
本社の秘書たちは思い思いに
愛しい人を待っていた

社長は人間が
空き缶をかぶったようなものだ

空き缶の中の
剥かれたトマトは
震えながら恋人の体内に入ることを
夢みている

見知らぬ発情した男と
川沿いですれ違い様にガキーンと視線がぶつかった女は
カワラヒワの背中の水はけに
嫉妬しているが
互いに欲する男の前では
すぐさましっとりする

そして
川沿いの乾いた道を
湿らせて帰っていく

2013年1月13日日曜日

寂しい私を

沈んだ太陽を追いかけて
遠くの空に鳥の影が消えていきました
きょうの空は
いつかみたあの空とつながっていて
寂しい私を手招きします
過去は私の味方でしょうか

密かに隠しておくつもりでいて
そのことさえ忘れてしまった宝物が
今もどこかで光り
うずいているのでしょうか

2013年1月12日土曜日

僕が憶えていることを

僕が憶えていることを
母は憶えていない
母が忘れた辛いことだけ
僕も忘れてしまおう

父がやっていたことを
僕は斜めにみていた
僕がやったことを
父はいつもまっすぐみていた

愛する人の笑顔を
僕は大切にしようとした
僕を愛する人は
僕のすべてを守ろうとした

2013年1月11日金曜日

ひとりぼっちの命

ひとり
ひと ひとり
ひとりで生まれ
ひとりで死んでゆく
生きている時に
抱擁し合ったあのひとも
ひとりで死んでゆく
命はこの世の中で徘徊しているだけ

だれも死の門に入ることはできない
その門の向こうには
死が蹲って夢を見ている
ひとはいない
命も入ることはできない

私は生きて
いつか死ぬ
だが死の門に入るのは
私の中の死の部分だけ
それは影のようなもの
体は燃やされ土になっても
命は残り彷徨
死だけが他人事だ

いつか出会った他の命に
すまないと泣き崩れて詫びたくても
昔の記憶を命は辿れないから
もうなかったことにされてしまう

死は身じろぎもしない
私が寝返りをうっているあいだも
息さえしていないのだから

2013年1月10日木曜日

中身は何が入っているの?

中身は何が入っているの?
からから音がするのはどうして?
難しい事ばっかりいっていないで
ライオンの首に縄をつけてきなさい

雪が降る日にライオンは
気が狂って暴れだし
こんなはずじゃなかったと嘆いてる

ニトリにいって

ニトリにいって
ヘチマを買った
井戸端会議で
にんまり笑う
変な態度の
言い訳は

ノリマキの中
具としていれて
チキンも足して
菜の花もいれ
おがくず入れて
こんちくしょう

2013年1月9日水曜日

なよなよするあなたを

なよなよするあなたを
骨が支えている
皮膚の表面は熱を帯びて
水気を空中に放っている

怒った時のあなたのは
いつもの唄をうたう
白い喉に触ると
モーターの振動が伝ってくる

今夜あなたは
すべての衣服を脱ぎ捨てたあと
お湯に浸かり
自分の肌を撫でて水の玉を弾く

なりふりかまわず
オトナのいやらしさを攻撃し
氷のように熱くなり溶けてゆく