2011年9月9日金曜日

詩人のスーパーカー

これは
ぼくが作った電気自動車なんだ
とその詩人は言った

*これは、最終行にもってきてもいいかな

巨きな会場の床一面に
テストコースが設置されている
きょうは昼の生番組で
スーパーカーを披露することになった

サングラスを掛けた司会者が
ゲストを呼び込む
私も一足遅れて一緒にでる
サポート役だからだ

さっきまで
会場内のレストランで打合せをしていたときには
客はまだ少なく
白けたらどうしよう という感じだったのに
いつの間にか二階の上のほうまで客はが入り
心配は別の心配に変わった
盛大な拍手と歓声に
圧倒され
失敗が怖くなったのだ

スーパーカーは
ゴーカートのようなおおきさで
床は紙でできている
ボディは夏休みの宿題と同じ
牛乳パックで作ってあるが
仕上げに凝ってある
ドライバーと
後部座席にもう1人乗れるが
きょうは
車の不具合を調整する使命で
私が同乗する

コマーシャルが終わり
サングラスの司会者がスタートを盛り上げた
ついに
走り始めた
だかあろうことかすぐに
ボディがしなって
よじれて失速した

2人でよじれを直しながら
平静を装い
走り続けようと
必死になった

実況のアナウンスが盛り上げようとしているが
無理だ!

いったいどこが
スーパーカーなのだ
といった様相だ

そのとき
ドライバーが振り向いて
後ろに設置された
ちいさなワイヤレスカメラに向かって
カメラ目線で言った

これは
ぼくが作った電気自動車なんだ

2011年9月8日木曜日

雨が降り
あたり一面が濡れた

あなたの頬に
マイナスの記号をつけたら
いままで生きてきた人生が
幸せになるか
不幸になるか

もし不幸になるなら
マイナスの記号は
不幸が訪れるときまで
とっておこう

雨があがり
地上に湿った風が吹き
見渡す限りの
光る街が現れ
海と地続きになる

風に置き去りにされた私は
どんな符号を待っているのか

2011年9月7日水曜日

土ぼこりの香り

急に雨が降ってきたんだ
ちょうど道に迷っていた
静かな町なのに
前からも後ろからも
左右の道や建物の間からも
ひとが出てくるんだ
みんなそれぞれ
何か用がありそうだったり
楽しそうだったり
さびしそうだったり
何かを抱えているみたいなんだ

そういう自分だって
他人からみれば
何かを抱えているように
みえるんだろう

雨の間を風邪が吹いて
木の下の乾いていた土が
けむりをたてる

曲がり角をまがり
みたことがない静かな道に入ったとき
外人のジャージ姿の人が
声を掛けてきたけど
何をいっているかわからないので
こちらも自分でもわからない言葉で
わからないと伝えて手を振った

さびしげな道に入ったはずなのに
相変わらずひっきりなしに
ひとびとがいき過ぎる
なかには迷い顔のひともいる

さあ
部屋に帰らなくては
傘をとって
ご飯と洗濯屋に行かなくては

雨が降っている
優しい雨だ
きょうは朝から
霧っぽい空気だった

夜の向こうに何があるのかな
すれ違うひとびとは
何処に帰るのかな
食事をしおわったら
どこかのラウンジに座って
誰かの前にいてみようかな

そのとき
雨は
土ぼこりを鎮めているだろう

2011年9月6日火曜日

ずっと話していない人は

ずっと話していない人のことを
考えている
窓の向こうでは
秋の虫が鳴いている

ずっと話していない人は
どうしてか
愛おしい
どうしてか
とても身近に感じられる

ずっと話していない人は
どこでなにして
いるのだろう
まさか私のことを考えている?
まさか まさか

ずっと話していない人は
ほんとは少し前に別れた人
あれからまだ髪も切っていないだろうが
昔別れた人みたい

2011年9月5日月曜日

恋の歌

材料はこうだ

厚めに切った食パン
真四角で小麦の感じがしっかりしていて、ややしっとりしているもの
蜂蜜
ココナッツパウダー
シナモン
ザラメの砂糖
隠し味に味噌
鶏の卵
無塩バター

出来上がると
それは
とてもおいしい
ものになる

どうしておいしいのかは
教えてくれない

ただ
あなたは
笑顔と神妙な顔を繰り返しながらそれを作り上げ
食べる時はまた別人になる

器用なあなたは
周りにいろんな問題を抱えているが
平気な顔をしている

それが
一番器用なところだと
一番私が知っている

2011年9月4日日曜日

あなたと航海 はじめちゃう

あなたが騒いだので
花火大会は
ぶち壊しになった

みんなが怒って車に乗り
列をなして田舎道を走り出す
臨時に設けられたガードレールは
工事用ヘルメットを並べたものだが
異様な縁石にしか見えず
その不始末を隠そうとして担当者は
外側に体操着を広げて並べた
だがかえってますます意味が分からなくなり
目立ってしまっている

花火大会はまたやればいいし
ガードレールも必要ない
騒いだあなたは
必要な人だから
助手席で
眠っていたほうがいい

あしたはここで
マラソン大会があるのだ
ホイールが外れた車が
続出して
渋滞が激しくなってきたのを
上で天の川が見下ろしている

愛する人が眠っている間に
つまらない考えは
捨ててしまおうと試みていだが間に合わなかった
もう
荒波に巻き込まれて
ヘラヘラ笑いながら
だんだん本当に楽しくなっていってしまった

言わず終い

電話してもいいですか

電話してみた

出なかった

ますます
電話したくなった

いつになったら電話に出られますか

電話しようとしたら
だれかから
電話がかかってきた

電話してもいいですか

その寂しがり屋に尋ねられ

それは私が別の人に
言おうとした台詞だ

答えた

その人は
私が話したかった相手から
電話がかかってきて
電話してもいいですか

だれかから
電話がかかってきた

言われた

言う

私は
電話してもいいですかと
自分が
言わず終いであることに
深く
絶望した

2011年9月3日土曜日

だれのもの?

揺れて霞んでいるのは
あなたの姿
香りがどこかに
残っていて
たまに気づくと
問いかけてくる

あなたが
わたしを愛しているのは
なにか
理由があるのよ
言葉にはできない
理由が


あなたにも
なにかが
問いけてくるのだろうか
不意に
どこかからか

それは
だれのものなのだろう
私には
分からない

2011年9月2日金曜日

弱虫の宣言

降りしきる蝉時雨の
都会の木立を抜けて
あなたから
離れていった

地下鉄にもぐり
当てもなく駅で降りて
また乗った

気づくと
知らない国にいた
飛行機を降りたのは半日前

あなたから離れたのは
一日前

知らない人に囲まれて
泣いていたのは
ずっと前
そしていまもだ

何かがこんがらかっているが
解く気持ちにならないのは
それが我が身を守っているから

そのことだけは
宣言しておこう

2011年9月1日木曜日

きちゃってよ、いますぐに。

いっちゃってよ いっちゃって それで きちゃって いっちゃってよ やっちゃってよ やっちゃって たまには やらずに よっちゃってよ くんじゃってよ くんじゃって そしたら ぬいて だしちゃってよ だしちゃったら いれちゃって じゅんじょは いいから ぬいちゃってよ すっちゃってよ すっちゃって どさくさ まぎれに もんじゃってよ いっちゃってよ いっちゃって くんず ほぐれつ きちゃってよ