2014年4月7日月曜日

えだ

なにもしらない
おとうさん
なんでもしってる
おかあさん
ふたりをみてる
ぼくとねこ
それをみている
まどのえだ

2014年4月6日日曜日

記念日

死にたくなるような日々の数々も

日差しに暖められて起こされた沈みゆく朝も

絶望を一人で抱えたような顔して

さまよっている午後も

かたときも離れずきみを守ってきたもの

それがどこから来たのか

きみはしらないまま生きている

轟音とともにきみの脇を走り去ってゆくダンプ

カミソリの刃がスッと血の線を引く

きょうは記念日

きみと私がきょうを生き抜いた

2014年4月5日土曜日

星屑

アイスコーヒーが喉から沁みて
全身を一つにまとめようとする
星屑が見えないところで箒ではかれている
光の粒がまぶたの裏に集まってくる
それを水の流れが眺めている
私は息を止めて
命の在り処をたしかめようとする

2014年4月4日金曜日

あの なんでもない

あの
なんでもない
ゆめの続きに
戻ることができない

あの
なんでもない
意味のない風景の
一コマに戻りたい

あの
なにも思わなかった
忘れてばかりの日々に
帰るように

あの
命とおなじ重さだった体に
帰るように

あの
なんでもない
ゆめの続きに
戻りたい

前も後ろもない
流れない時間の
真ん中へ
入っていきたい

2014年4月3日木曜日

だれかが心を

黙って静かにしていたら
だれかが心をノックした

気のせいなんかじゃありません

心の扉をあけてみた
すーっと風が吹き込んだ

泥棒入ってこないかな

ゆったり椅子に座ってた
時は行列作ってる

いったいどこへ行きますか

星の明かりが灯ったら
幸せなこと数えます


数えるうちに いなくなりま

2014年4月2日水曜日

未来のことを

不幸せだと思っていた
幸せだった日々

いま
まいにち苦しんでいるが
これからきっともっと苦しくなる
苦しみのなかに
幸せはあるだろうか

あったら
おしえてほしい
なにかの合図をしてほしい

私はまじまじと
幸せをながめて確かめてみよう
ざらざらした背中をなでてみよう
他人行儀な幸せは
私になじんでくれるだろうか

私は幸せを大事にしよう
幸せに好かれるように
友達の苦しみも一緒に
未来のことを夢見たりして

2014年4月1日火曜日

道路を封鎖しています

私は数十人の仲間とともに
道路を封鎖する活動をやっている
権力の横暴に慣れきった人々を覚醒させ理不尽な世の中を少しでも良くするため
国道の大通りから別の大通りを結ぶ200メートルほどの道に
立ったり寝たりして人間バリケードを作っている
この活動は何人かの住民と通りがかりの人によって自然に始められた
私が加わったときにはもう近隣の学生や商店主やOLやサラリーマン、公務員、警官などあらゆる職種の人間が参加し
すでにもう今と同じ規模だった
参加者は日替わり、時間帯で入れ替わりこの場所を「守って」いた
この道路封鎖の型破りなところは
警察を模した検問形式で通過しようとする者に話を聞き
最後には「通してしまう」ことだった
道の中間点では10人ほどがスクラムを組んで路上に横たわり
半固定状態でそこを守っていたが数分おきには立ち上がり「検問」が済んだ車両を通した
私は近くの高台のマンションの9階に住んでいた
夕方になると私はその部屋に帰り
全面がガラス張りの南側の窓から果てしなく広がる海を見た
右方向の空を真っ赤に染めて沈んでいく太陽を見ると
高揚感がこみ上げてきて誰かと分かち合いたい、とその度ごとに願ったりした
道路封鎖が始まりしばらく経つと
いつもその道を利用するドライバーには「慣れ」が見られ
すぐに通してもらえるだろうとたかをくくり、低速で強引に「検問」を押しのけて突っ込んでくる者がいた
私は立ちはだかりなぎ倒されるのを覚悟で「検問」にのぞんだ(ある時は都バスの前に立ちはだかったが押し倒され危うく命を失いかけたが、10人の仰臥位スクラムの人たちがそれに無言の抗議をして反日に渡って都バスを立ち往生させた)
「検問」の内容は挨拶や日常会話や問いかけや自らの吐露だった
決まりはなく時に1時間に及ぶこともあった
ある女子の高校生は相手にすまなそうに自分の気持ちを話して相手を和ませたし
ある公務員は相手の仕事をねぎらいつつ道路封鎖の意義をといた
道路封鎖は美しい情景だ、とに私には見えた
200メートルの道に夜が来て街灯が灯ると
仲間たちはだんだんと入れ替わったが夜の参加者は少なく、10人に満たないこともあった
雨が強い日などは仰臥位スクラムは1人か2人の時もあった
明け方近くに私が参加すると雨に打たれた仲間が救急車に担ぎ込まれていることがあった
そしてこの活動は出入り自由、みな対等、平等でリーダーもなく決まりもなかった
そしていつまでも続くようだった
道路封鎖はこの道を利用して生活する人に不便さを与えたが
同時に夢と希望を与えた
封鎖する側もされる側も
その顔に人間の表情を取り戻していたのである
私は仲間と続けているこの活動を誇りにおもう
奇跡的に興り続けられているこの活動は未来の道標になるだろう
仲間の一人のジャーナリストがこの封鎖を記録し論述した
私もまた心にこの活動を刻んでいた
仲間の誰もが
そして目撃した人の誰もがそうしたように
そして誰かに語り始めた

2014年3月31日月曜日

きょうの印象

空の裂け目から血が滲んだような濃いオレンジ色の〈別の空〉が
私たちを覆い尽くそうとしている
もし一瞬でも覆われてしまえば
すぐさま窒息してしまうだろう

澱んだ湖がその空を映して
湖底深く抱え込んだマグマを混ぜ合わせようとしている
企てが地上のそこここで
虎視眈々と実行されようと狙われている

この世に冒険者がいなくなってから
ただ人は冒険者の模倣品を繰り返し送り出し続けている
それなのに
ひとは希望を抱くことさえ
いつのまにか拵えられた前世紀の柵の中でしかすることができない

空が群青色に移行し
地上を見下ろす無数の瞳が現れる
だがひとはそれを見ながらも気づくことができない
発せられたコトバは
翻訳され他国にも通じるコトバだ

幼児がテキストブックを開く
何かを知るためではない
知ることから遠ざかるために
幼児は学びの時間に沈んでゆく

もう救うことはできない
どんな手を差し伸べても
手は枯れた細く頼りない草の茎でしかなくなっているから

2014年3月30日日曜日

森のなかの会社

会社は3階建てで森のなかにある
上空から見ると正方形のタイルのようだ

そこには101人の人が働いているが
その内31人は別の会社に在籍している

建物の外装はコンクリートの打ちっぱなしで
内装もごく簡素であるが
間仕切りはしっかりとしている

1階から3階まで
見通しのよい幅広の階段でつながっていて
1,2階の階段踊り場からは下のフロアの突き当りにある正面の入り口を
ほぼ見渡すことが可能だ

会社にはめったに最終ユーザーたる顧客は来ない
そのためビルには立派な玄関はなく
ビルの正面のガラス扉を開けると
すぐにデスクワークをしている社員たちを見ることができる
当然受付嬢が着席している受付のようなものはない

私がいるフロアは3階だが
3階は大きなコモンスペースが中心に陣取り
それを取り囲むようにワークスペースが配置されている
コモンスペースはフレキシブルにその姿を変え
あるときはイベント会場に
またある時はプレールームに
またあるときは何の変哲もない日常的な会議室となる

建物の柱は皆コンクリートがそのまま露出していて
均等に整然と立っている
すべてのフロアの天井高もまた統一されていて
4メートル50センチメートルである
故に時折いま自分がどのフロアに居るのか
錯覚のため分からなくなることがある

建物の外周は
無人のプロムナードとなっていて
その美しさには誰もが驚愕する
柱の間に見られる風景は
緑を湛えた森と芝生の庭である
道はなく
そこだけが孤島のようであることを誰もが感じる

初夏をまえにしたその日
私は詩人の御徒町凧を招いて3階のコモンスペースで
夜を徹しての詩の朗読会を主催していた
すでに会を終え二人は何人かを伴って
私のワークスペースで思い思いの飲み物を手にしながら
詩についての話をしていた
その時
パイプスペース脇の物置から私を呼ぶ声がして
私は一人そこへ入っていった

中には物干しロープが張られ
私がきのう洗濯した洗濯物が干されていた
柱に取り付けられた配電盤を開けると
そこにはエアコンのスイッチがあり
私はそれを右にひねり
壁から突き出ている通風ダクトから勢い良く吹き出し始めた熱風に
洗濯物を押し当て乾かすことに全神経が集中していった

御徒町凧は階段を降りていった
私は何事もなかったようにもう案内している
「このフロアのこの辺りは提携会社の社員の人たちが仕事をしている」
などど自ら計画し実現したことを説明する
朗読会を終え朝のビルの中から感じられる外の気候は
この上なく爽やかだ
このビルで働く人の男女比は女子が約8割と多い
男は恋愛の誘惑の香りを感じ心がざわめくのが普通だ

社長
と呼ぶ声がした
御徒町凧と私は振り向いた
そこにはなんと
おかちめんこの仮面をかぶった
あの噂の美人秘書が立っていたのだ

2014年3月29日土曜日

ならないくちぶえ

くちぶえが
うまくふけない

あなたは
うまくふけるのに

でも
それはきらいなところ

くちぶえふくより
くちびるふさいで
ちからをこめて
だいてね

なみのように
ただよわせ
そらに
うつして

わたしは
ならないくちぶえで
きみを
たたえるから