どうしようもない子
その少年は
自分でも
どうして自分が人と違うことをするのか
普通のことが
普通にできないのか
わからない
いましがたも
飛び出して来てフェリーに
飛び乗ったばかりだ
強い海の風が
甲板の先端に立つ哀しげな少女を後ろから襲って
スカートの裾をなんども捲りあげて
少女は
パンティーのお尻を
その度ごとにさらけ出している
(少女はたぶんそれに気づいているのだ)
少年は高いデッキからそれを見て
独り占めしていたいと願っていた
悲しいことがあると…
悲しいことがあると
人は何をすればいいのだろう
少年は
いつまでもその
パンティーのお尻を見ていた
それは永遠に続く物語のようだ
海の強い風に
パンティーを捲らせて
(何かを忘れただろうか
少女は
きっと
そのことさえ
忘れてしまっただろう)
心では
何かと引き換えに
だが少年は
忘れない
どうしようもない子は
やがてオジさんになって
しみったれた自分をさすりながら
眼だけギラギラ輝かせている
少女は
なんどか暗い海に落ちたが
その度ごとに頭上に空を見て
波を蹴って上がってきた
そしてしたたかで情け深い母となり
どうしようもない子を育てている