2013年10月23日水曜日

永遠の住処

夢の中でしか行くことができない場所を見つけた

水辺にちょうどいい窪みだってある

持っていないものは何でも借りられる

ここにいれば誰もがやさしくしてくれる

バカにしてののしってくる者もいない

鼻につく見栄っ張りも見ることがない

それできみは

ここにいることにした

どこへも帰ってゆく理由はない

枯れた草花を焚いているので悪い虫もよってこない

生々しい問題はなにもないここは

永遠のきみの住処

疑わなければ消え去ることがない

きみがひとりでいるところ

2013年10月22日火曜日

ヤマトタケル

ヤマトタケル
ヤマトタケル
これは呪文です
ヤマトタケル
ヤマトタケル
ヤマトタケル
に遭遇したことはありませんその憶えはありません
ヤマトヤマトヤマトタケル
ヤマトタケル
いまは悶々として苦しくても電話するのは流行りません
重たい話題は禁止です
ヤマトヤマトヤマトタケルヤマトタケルヤマト
スピリチュアルな話題に変換して
せめて少しだけでも話します挨拶代わりに
ヤマトタケルヤマトタケル
それでも彼女は友だちに次々と電話していきます
切られても嫌われてもその方が楽だと気づきましたから
クラウドにはいい写真が増えました魅力的な自分の写真も
時間は味方してくれます世間よりはやさしい
しかし神様の味方をしようとしても神様は暗闇に隠れてばかり
ヤマトタケルヤマトタケルヤマトヤマトヤマトタケルタケルヤマト
それだからふて腐れて加速度を付けて毎日夢の中に落ちていきます
だれも文句を言うことはできません好きにできます
夢の中から戻るときに戦争ゲームのように現実と勝負します
絵札をたんまり仕込んできているのでまず現実に負けることはありません
ヤマトタケルヤマトタケル
ヤマトタケルヤマトタケルヤマトヤマトヤマトタケルタケルヤマトヤマトタケル
何回でも何遍でも繰り返しますその間は老けません
ヤマトタケル
さて要らないものは喜ぶ知人に送りつけましょう
役立たずの冠をかぶった醜いハリボテくんは火にくべてお祈りしましょう
ヤマトタケルヤマトタケルねえそれでいいんだよね

2013年10月21日月曜日

アタマとココロ

となりどうしのアタマとココロ
うまくやってはくれまいか

だましあうのはやめにして
いやみいうのはあとにして
うまくやってはくれまいか

となりどうしのアタマとココロ
どちらがえらいこともない

きずつけあうのはなんせんす
たまにけんかもいいけれど
うまくやってはくれまいか

おねがいだから
おふたりさん

2013年10月20日日曜日

雨の日の電車


ニューヨークのミュージアムショップで買った傘をさして歩いている。家から駅へ向かう道。傘を買ったのは十年以上も前の夏。今は秋。
ホイットニーミュージアムのロゴがデザインされた傘。私はその傘の中に収まって、足を前へと振り出している。きょうは、中国人の友だちが誘ってくれた京劇を観に飯田橋までいくのだ。
雨は歩道に川を作っている。喉が渇いたのでセブンイレブンで緑茶のペットボトルを買ってナナコで支払った。すでに靴に水が浸みて靴下が濡れている。雨の日に履くのは初めての靴だった。
電車に乗ると皆、傘を持て余し気味に持っていた。
電車もまた、車内を傘の滴で濡らしながら、濡れながら走っていた。

2013年10月19日土曜日

こわがることもわすれて


すきなことをすれば
あっというまに
いやなことはすぎる
おもいだしたくないことは
ちいさくちいさくちぎって
たきびのなかになげいれちゃう
なにがもえたのかさえ
きっとわからなくなる

ぱぱままは
おもいでのたからばこがもう
いっぱいだけど
これからなにをいれようか
かんがえるのはたのしい
つらいひびは
てをつないできて
なかなかはなしてはくれないけど
いつかじぶんからてをはなせばいい

しあわせになっても
ばちはあたらない
ひとりじめしなければ
このよは
みんなのすみか
すきなことをやって
すきなひとをみつけて
すきなばしょにいればしあわせ

ぱーてぃーもわるくないね
ひとりで
よぞらのほしとかいわするのとおなじくらい
こわがっていないで
こわがることもわすれて
すきなことをしよう

2013年10月18日金曜日

不要なものを


不要なものを
捨てようとした時
近くで
〈私も不要でしょう〉
という声

見ると
目が合った

押し問答

分からない
不要 か
どうか

時が経つ
すると
また
どこからか
〈私も不要でしょう〉
という声

〈不要ですか〉

訊いてみた

答えない
目が訴える

〈きっと不要です〉

不要なものを
放置しているのは
全員

捨てられずにいると
いつまでも
不要なまま

信じてもらえない
ならず者

捨て場所は
ある

ここは広い宇宙だし
置き場所を
変えるだけ

不要なものが
手をつないで
行きたがっている

行かせてあげれば
君も
行ってもいいよ

2013年10月17日木曜日

薄暗がりにたたずむこころ

薄暗がりにたたずむこころ
こんなに重い

丸いパイプの
ペンキが剥げたところに
同じ色を塗り重ねると
すると
そこは新品よりもいい色になる

薄々気づいていたこと
だけれど世間はそんなことばかりだ

十重二十重に
塗り重ねられた空は
今は亡きあの映画監督が作った映画さながら
高い天井から吊り下げてある

私は足もとと頭上を交互に見る

約束ごとのように
背後にお化けたちの気配がするが
気づかなかったことにしておこう

よんどころない事情があるのは
人間ばかりではない

薄暗がりは
私のこころを隠そうとしているが
すでに
隠せない大きさになってしまっている
私のこころ

2013年10月16日水曜日

うつ病の友だち

うつ病の友だちは
うまくいってしまうことが怖い
やらない理由がみつからなくなるから

うつ病の友だちは
会いたくないときに人と会う
ふだんは会いたくても会えないから

うつ病の友だちは
うつ病のせいでますますうつ病になる
うつ病になったわけを知らないから

うつ病の友だちは
さちこってゆうんだほんとはね
だけど私はうつ病の友だちと呼んでいる

2013年10月15日火曜日

飛び降りる


飛び降りる
空から
空であった場所から
四角く光る場所を目がけて

飛び降りる
今いる場所から
空であった場所から
四角く光る場所を目がけて

飛び降りる
飛び降りると書き付けた「今」から
今いた場所から
空であった場所から
四角く光る場所を目がけて

一人で 飛び降りる
一人ではないと錯覚した「時」から
飛び降りると書き付けた「今」から
今いた場所から
空であった場所から

飛び降りる
一人で
まだない空白へ
空白という空へ
誰もまだいない
いったことのないなつかしい場所へ
一人ではないと錯覚した「時」から
飛び降りると書き付けた「今」から
今いた場所から
空であった場所から
四角く光る場所を目がけて
いつか空になるその場所へ

2013年10月14日月曜日

ここは誰の庭?

ここは誰の庭?

迷い込んでごめんなさい

でもいま

私はひとり

この庭を楽しんでいる

庭は私のために揺れて

歌って

包んでくれる

芝生に足を投げ出して

花の香りを深呼吸する

やがて日が暮れて

月の光が庭を照らし

泉が囁き続けている

遠くから声が聞こえてくるが

本当なのかわからない

ここは誰の庭?

迷い込んだまま

私はずっとここにいる

不思議なことに

人影はいつまでたっても見かけることがない

自分の影さえまぶたの淵まで探してみても

見つけることができない