薄暗がりにたたずむこころ
こんなに重い
丸いパイプの
ペンキが剥げたところに
同じ色を塗り重ねると
すると
そこは新品よりもいい色になる
薄々気づいていたこと
だけれど世間はそんなことばかりだ
十重二十重に
塗り重ねられた空は
今は亡きあの映画監督が作った映画さながら
高い天井から吊り下げてある
私は足もとと頭上を交互に見る
約束ごとのように
背後にお化けたちの気配がするが
気づかなかったことにしておこう
よんどころない事情があるのは
人間ばかりではない
薄暗がりは
私のこころを隠そうとしているが
すでに
隠せない大きさになってしまっている
私のこころ
2013年10月17日木曜日
2013年10月16日水曜日
うつ病の友だち
うつ病の友だちは
うまくいってしまうことが怖い
やらない理由がみつからなくなるから
うつ病の友だちは
会いたくないときに人と会う
ふだんは会いたくても会えないから
うつ病の友だちは
うつ病のせいでますますうつ病になる
うつ病になったわけを知らないから
うつ病の友だちは
さちこってゆうんだほんとはね
だけど私はうつ病の友だちと呼んでいる
2013年10月15日火曜日
飛び降りる
空から
空であった場所から
四角く光る場所を目がけて
今いる場所から
空であった場所から
四角く光る場所を目がけて
飛び降りると書き付けた「今」から
今いた場所から
空であった場所から
四角く光る場所を目がけて
一人ではないと錯覚した「時」から
飛び降りると書き付けた「今」から
今いた場所から
空であった場所から
一人で
まだない空白へ
空白という空へ
誰もまだいない
いったことのないなつかしい場所へ
一人ではないと錯覚した「時」から
飛び降りると書き付けた「今」から
今いた場所から
空であった場所から
四角く光る場所を目がけて
いつか空になるその場所へ
2013年10月14日月曜日
ここは誰の庭?
ここは誰の庭?
迷い込んでごめんなさい
でもいま
私はひとり
この庭を楽しんでいる
庭は私のために揺れて
歌って
包んでくれる
芝生に足を投げ出して
花の香りを深呼吸する
やがて日が暮れて
月の光が庭を照らし
泉が囁き続けている
遠くから声が聞こえてくるが
本当なのかわからない
ここは誰の庭?
迷い込んだまま
私はずっとここにいる
不思議なことに
人影はいつまでたっても見かけることがない
自分の影さえまぶたの淵まで探してみても
見つけることができない
2013年10月13日日曜日
2013年10月12日土曜日
人である人
橋から橋をわたり
島から島をわたる
人は道をゆき
鳥は空をゆき
魚は海をゆく
人は服をまとい
月はつきまとい
星は欲しがっている
欲は干上がっている
陽はまたのぼり
またはまた閉じられる
ランプの灯はすぐに消え
シマシマの服を囚人がまとい
月々のものをパパが運ぶ
山また山を越え
谷また谷を下り
島から島を巡る
人であれば
あられもない
ヒトガタ
である人
島から島をわたる
人は道をゆき
鳥は空をゆき
魚は海をゆく
人は服をまとい
月はつきまとい
星は欲しがっている
欲は干上がっている
陽はまたのぼり
またはまた閉じられる
ランプの灯はすぐに消え
シマシマの服を囚人がまとい
月々のものをパパが運ぶ
山また山を越え
谷また谷を下り
島から島を巡る
人であれば
あられもない
ヒトガタ
である人
2013年10月11日金曜日
残り火がどこかで
自分では悪口いうくせに
ひとに言われるとすぐおこる
なにもないふるさとのまちに
きんいろの秋の日差しが降り注いでいます
いつかはなかえようとした約束も
私をかばってくれた優しい友だちも
もうどこかにいってしまいました
金木犀の香りが今年も
時のしおりを挟み入れてきます
私はどうやって生きて行けばいいのでしょうか
考える必要がなくなりました
西の屋根に日が沈んで
残り火がどこかでちろちろと燃えています
ひとに言われるとすぐおこる
なにもないふるさとのまちに
きんいろの秋の日差しが降り注いでいます
いつかはなかえようとした約束も
私をかばってくれた優しい友だちも
もうどこかにいってしまいました
金木犀の香りが今年も
時のしおりを挟み入れてきます
私はどうやって生きて行けばいいのでしょうか
考える必要がなくなりました
西の屋根に日が沈んで
残り火がどこかでちろちろと燃えています
2013年10月10日木曜日
グレーのスーツを着た女
心だけもたれて
立っている
自分にもたれて
立っている
木のようだ
風に葉っぱがゆれる
繊毛が光を指揮している
片膝を曲げて
唇をきゅっと締めて
息を凝らしている
自分では気づかずに
いつからかも気づかずに
心だけもたれて
立っている
自分にもたれて
立っている
2013年10月9日水曜日
家族が消えさらない部屋
遠くに海鳴りの聴こえる部屋
夕日が楽しげにやってくる部屋
家族が消えてしまった部屋
いるのは私だけ
でも私はいないも同じ
息を潜めて
笑いあったあの時の写真を
くり返し引きちぎる
いるのは私だけ
でも
いつでもいなくなるのも私
でも
いるのは私だけ
あるのは愛だけ
聞き飽きた陳腐なアイで包まれているアイだけ
包んでいるのもアイだけ
遠くに海鳴りが消えていく部屋
夕日が楽しげに帰っていく部屋
家族が消えさらない部屋 部屋
2013年10月8日火曜日
先生はあいさつをしましたか
先生は
別れるとき
私に
あいさつをしましたか
死んでいったとき
私に
あいさつをしましたか
先生は
誰に
あいさつをしましたか
私たちが
見ていないところで
だれに
初めまして と
さよなら のあいさつを
キスと
抱擁を
登録:
投稿 (Atom)