すりガラスごしに
見える
あれは
稲妻が
縄跳びしているんだ
こっそり
場末の路地でやっているつもりなのだろうが
体がおおきいので
地上の人間たちには
もちろん感づかれてしまっている
(いつもそうだ)
稲妻が縄跳びする時は
何かの悲しい知らせを聞いた時と決まっている
寂寞が空を覆い(時に夕闇、時に青空だが)
ひと面の舞台が出来上がる
(誰かに教えたいが
教えるべき相手がいない)
稲妻の縄跳びは
針金の閃光(せんこう)が
浮いた魂を引っ掛けようとする
引っ掛けて
つれ回しもせず黄泉の国へと
持っていくのだ
すりガラスごしに
見える稲妻は
人情と通じているが
決して馴れ合いを許さない
薄暗い部屋で
床に座って
稲妻が縄跳びしているのを
見ていると
前にこんなことがあったのだと
思い出してくる
かかとが堅い
そして皹(ひび)が入っている
稲妻は
縄跳びをやめない
許しが出ないからではない
自らを嗜(たしな)めるためにやっているのだ
いつか
まりを持った少女が
私を見上げて
何か言っていた
あのことばに
行き着く
その言葉は
くり返し
轟音にかき消され
裂かれ続けている