人命救助が趣味のハリー
難破船が漂流する島で
助けを求める人 待ち構えてる
白い庭に緑の芝生がハリーの自慢
相棒は黒人
いまバンブーの箱を海から拾い上げ
芝生の上に持ってきた
ふたを開けると
さあたいへん!
ハリネズミが6匹飛び出した
刺さないでおくれ
噛まないでおくれ
あたふた逃げ惑うふたり
追いかけるハリネズミ
だれも助けてくれません
誰もかばってくれません
ハリネズミに刺されたハリーと黒人
バンブーの箱はもうこりごり
二度と箱を開けませんよ
ハリネズミなんて助けません
と つぶやいて
おんおんないた
2013年6月30日日曜日
2013年6月29日土曜日
空を突く女
体の線に自信がなければ着られないような服をきて
一組の男女がつり革に掴まって揺られている
なんの変哲もないベーシックなパンツとシャツと
それにおそらくインナーとを
その完璧な体型に貼付けて立っている
女も男も
ついいましがた
雑誌のファッションページから飛び出してきたようで
かっこいいこと この上ない
洗練の極みだ
そして急に電車が大きく揺れるたびに
座っている私の眼の高さに女は股間を突き出し
私の視界を揉む
こうして女の股間を鼻先に突き出されることなど
いままでどれほどあったことか
女と男は
電車遊びをしているのだろう
降りていった私を残して
遠ざかりながら揺れに身を任せ
何度もおのおのの股間を
突き出しては笑いお喋りしている
2013年6月28日金曜日
赤い魚
きみはいつ
自分は特別だ
と 気づいたのか
青い海原を跳んだとき
きみの体は逆光に縁取られ
視界の隅に自らの赤を見た
そのとき
きみは
自分が特別だ
と 気づいた
だが
また海に落ちて
群れをなす仲間たちと
一緒に泳ぐしかなかった
きみは特別な
赤い魚
いままでそうと知らずに
青い魚と群れて泳ぐ
特別な赤い魚
誰もがきみを
特別だと思う
まだそれに戸惑う
何もできない赤い魚
2013年6月27日木曜日
あっちのお山と
あっちのお山と
こっちのお山
どっちのお山がすきですか?
あっちのお家と
こっちのお家
どっちのお庭が広いです?
あっちの人と
こっちの人は
どっちが役にたつかしら?
あっちの仕事
こっちの仕事
どっちが楽ができますか?
あっちの祭り
こっちの祭り
どっちに神様いるかしら?
あっちの理屈
こっちの理屈
どっちも屁理屈屁の河童
こっちのお山
どっちのお山がすきですか?
あっちのお家と
こっちのお家
どっちのお庭が広いです?
あっちの人と
こっちの人は
どっちが役にたつかしら?
あっちの仕事
こっちの仕事
どっちが楽ができますか?
あっちの祭り
こっちの祭り
どっちに神様いるかしら?
あっちの理屈
こっちの理屈
どっちも屁理屈屁の河童
2013年6月26日水曜日
涙は
涙とさよならして
泣くのをやめたいのに
涙とさよならしようと思っただけで
なおさら泣けてきた
悲しいことが起こる前に
涙と出会いたくなくて
なにも気にしないように
しようとしたけれど
悲しいことは
もう私をどっぷりと覆っていて
涙はすでにあふれ始めていた
それでは私を逃がそうと
考えてはみたけれど
悲しいことも涙も
私から離れることがない
だから余計に泣きたくなって
それを察した涙は
もう勢いよくあふれ
快晴の海へと向かおうとしている
2013年6月25日火曜日
花束
花束を作ります
最初は自分のために
いつの間にかふたりのために
そして最後はあのひとのために
花束を渡しに行きます
花束を持って
会いたい気持ちを持って
そして私ごと渡してしまいます
あのひとは
幸せそうです
2013年6月24日月曜日
生きていく
幾人かの気心の知れた仲間と
遊びながら
悩みを打ち明けながら
お互いを理解し合っていると喜びながら
助け合って
声を掛け合って
この地に根を下ろして
贅沢はできないけれど
貧しすぎるということもなく
悪いことはせず正直に
得意なことをがんばって
うまい話は疑ってかかり
下手なことはしないようにして
家族を守り
動物を飼い
近所の人と仲良くし
一生懸命仕事して
……
生きていく
これが生きていくということ
2013年6月23日日曜日
放置プレー
つまり
なにも分からなかったということか
ふりだしに戻ったら
スタートラインさえ消えていたということか
おまけに
自分が誰だったかさえも
忘れてしまったというかとか
これ以上考えても
後ろに進むばかり
いいことを思いつこうとしても
後悔したことばかりを思い出す
なにかに頼ろうとしても
なにかに引きずられるだけ
スーパームーンが空で輝いているが
世間の闇が照らされるだけ
心に暗い影ができる
夜の浜で知り合った
しっとりした彼女が
短い言葉を送ってきても
整理できずに放置して
2013年6月22日土曜日
2013年6月21日金曜日
僕のかわりにいなくなったネコ
僕のかわりにいなくなったネコ
お月様に行ってしまったのは兎だよ と
いじわるな姉さんは教えてくれた
だから
地上で見えない影を追い求めて
ずっとネコを探している
本当にいなくなったのはネコではない
水筒の酸っぱいジュースを飲んで
何度 気を取り直したことか
今日も汗をかきながら
夢の中の草むらをかき分けて歩いてゆく
悪いことの先にはいいことが待っていると
言っていた人のことを信じて
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