自転車をこぐ音は
きみがやってくる音
背中から近づいて
すぐ脇を追い越していく
空から小鳥が
眺めていたって
教室の窓から見える
通学路の並木道
なんど通ったのだろう
きみのこと追いかけるように
窓から小鳥が
歌っていたって
この町の空の上
風とともに
季節は巡り
きみはここを出て行く
空から小鳥が
眺めていたって
小さい私たちの
大きな未来
仰ぎ見れば
涙の向こう
滲んで見えている
青空
こうしたらうまくいく
ということが
どうしても
やりたくなくて
うまく生きていくことから
どんどん
遠ざかってしまう
いやな性格
よく分かっている
あなたはあきれて
ため息をついていた
いやみをぶつけて背を向けて
でも
こうしたらうまくいく
ということは
つまらないことばかりで
あなたは私を見て
よく笑ってた
時に指を指して
私も一緒になって
笑ったけど
涙が頬で乾いて
そこだけが寒くて
そのあと
あたたかい指が
私の上に寄り添った
今年の冬は何もなかった
今年の冬は何もなかった
春にはきっと何かある
今年の冬は何もなかった
春にはきっと何かある
首をかしげて
あなたを見るのは
そうじゃなきゃいけない
理由があるの
まっすぐ見ないのは
恥ずかしいからじゃない
私 鳥だから
正面から見るなんて
できないの
神様が
そこがいいよ って
いってくれたから
*
言葉じゃなくて
ハミングするのは
それがいちばんいい
そうおもうの
おしゃべりしないのは
嫌いだからじゃない
私 鳥だから
手紙を書くのも
できないの
パパ ママが
文字はいらない って
話してくれたから
上手に生きないと
幸せになれないと
知らされた日
私は自分に誓った
縁ある仲間を守るために
汚れ役も買って出ようと
傷つけたあの人に
いつかお詫びするために
何ができるのかと
自分の声しか
教えてくれる者はない
自分に語らせるのもまた自分
その自分を生かしているのは
私の中の宇宙の小石
さきほどから
誰かが泣いている気配がしているので
あたりを見回してみているのですが
人影は見えません
それどころか
人が隠れられるような物陰さえないのです
虫か
鳥の声でしょうか
すすり泣くような
しかしあまり悲壮な感じのしないその声は
耳をそばだてると消え
しばらくすると
また聴こえてくる
まさか
私が泣いているのでしょうか
そういえば
きのう私は
大事な人に裏切られたのでした
自分の重さで自分を支え
輪っかを抱いて
ベタベタを取り出させる
コトアルゴトニ
程よく回る
一人きりの真っ暗な夜には
ひときわ
思い出を語りたくなるので
涙に濡れ
吐く息で曇らせないよう
注意していなければならない
私は何度となく選ばれた
何度となく
姿を消した
某氏がいう
あなたが必要だと
透明なベタベタを取り出すことは
どうしても必要なことだと
心に小石を握りしめて
となりのオバさんとあいさつした
おはよう!
こんにちは!
見れば太陽はもう高く
車の騒音 工場の音
賑々しく聴こえてくる
もう春ですね
きょうは涼しいですね
蝉の声がして
心がどっぷり懐かしさにまみれ
淡い初恋がツンと鼻を突いた
こんばんは
さようなら
きょうは夕暮れの景色の記憶がない
下校放送も
休みだったらしい
もしもし
何だ 使われてないって
音楽が先に行ってしまうので
気持ちは引きずられていく
リズムを刻んで流れていく歳月
私の思いはあなたの前にとどまり
やって来た電車を何本も見送っている
音楽が先に行ってしまうので
私は足踏みしてタイミングを合わせる
あなたはチャンネルを換えて
新しい番組のお話にもう夢中
いま ここで謝れてよかった
あなたのプロフィール写真が
スマホの画面に突然 現れた
あなたには
ずっと謝ってきた
いま ここであなたに謝れてよかった
私にはしなければならないことがあると
いまハッキリ悟った
あなたのおかげだ
私は明日からあなたに向けて
それをするために
生きていく
空よりも暗い山
見ているか?
聞いていてくれ
私は無言で
誓ったのだから