2012年4月9日月曜日

僕は後ろを向いて謝りたいんだ
謝ることを許してもらえますか

2012年4月8日日曜日

藁ぶき屋根の家の窓枠

藁ぶき屋根の家の窓枠は
焼きをいれたブナの木
はめ込まれた硝子は
透明度が低く
月の光を乱反射して
室内に
光の溜まり場をつる

昼と夜とはどちらが静かなのだろう
ここにいると分からなくなる
道は
滅多に車を通さないし
人が行き交うことさえ珍しい

音を発するものは
どんなものなのだろう

涙を流すとは
どんなことなのだろう
質問する相手もいなくて

2012年4月7日土曜日

見送り

見送り

お見送りをしているね
何を見送っているんだい?
その人ではなく
自分にさよならしたんだね


さよなら

さよならしないほうが良かったと
思っているんだね

その気持ちとは
いつさよならするの?


しつこい

しつこい人は嫌われる

思っているんだね
いつまで思っていたら
気がすむの?



    -意地悪な詩 シリーズ

2012年4月6日金曜日

ささいな話

あなたを褒めたくて電話したのに

悪口を言ってしまった

会いたかったのに

電話だけでこと足りてしまった

いつも大好きだったのに

嫌いになってしまった

次に電話するとき

なにがどうなってしまうのだろう

そのことを別の人に相談したら

好きになってしまった

2012年4月5日木曜日

muddler

あなたの名前を知ってから
私はあなたを縛ることに夢中だ

誰かが誤って
持ち去らぬよう
呪(まじな)いをかけて
繋ぎとめる

鎖は結ばれていないが
あなたを見つけ出すその目印は
なんということか私を拒絶する

いつの日か
あなたの下肢に食い込みしがみついた
貞操帯の血筋か

気遣いなく
カチャカチャと音を立て
淀んだ心にマドラーを弄ぶ

2012年4月4日水曜日

それは帰り道だった

笑いながら夜道を歩いていたんだ
それは帰り道だった
いや 行き道だったかもしれないが

月がやけに明るく照らしていて
濃いブルーの影を作っていた
沼のほとりの柳の木の横を通った時
花の開く音がしたかと思ったら
少し遅れて香りがやってきた
鈴の音も聞こえてきた

前方からは
ハイヒールを履いた背の高い女性が
銀色のブラウスを光らせて
胸をゆさゆさ揺らしながら
足早に突進してきた

私の傍を通りすぎる時
女は泣いているのだと私は気づいた
すると私の眼からも
大粒の涙がポロポロとこぼれて道に落ちた

大事な宝物を
すべて捨ててしまったような気分に襲われたから
私は
笑いながら夜道を歩いていたんだ
それは帰り道だった
いや 行き道だったかもしれないが

2012年4月3日火曜日

(きょうの感じ)

逆さまから笑顔をみて
ノリウツルぞー
かえるの頭をこすり付けて
雨風を弾き飛ばすぞー
あしたはタワシの風が吹く
茎の上で九九を唱える
てんとう虫と暁見つめ
忍び寄るぞー

2012年4月2日月曜日

豊かな私のため/「私」性調査2012にご協力下さい

〈『私」について、いくつでも「そうだ」と思うことを丸で囲んで下さい〉

●回答欄

大事なことをみんな忘れてしまう
簡単な計算ができない
もたもたしていて切り替えが遅い
心の中で愚痴ばかり言っている
自分を慰めるのが好き

惰性で生きている
自分を棚にあげて偉そうなことをいう
優しいふりして衝突を恐れるだけ
大事な問題ほど解決しない
脛を齧っている

勇気がないのに吠える
うそつき
都合の悪いことを隠す
好きなことだけはやる
努力を惜しんでいる
現実から逃避する

人を傷つける
苦し紛れにとんでもないことを言う
何度も過ちを繰り返す
他力本願
無理なことを言う
懲りない
人の気持ちがわからない



・・・ありがとうございました。
これからの「豊かな私」づくりに活かさせていただきます。

2012年4月1日日曜日

ニートのアイディア

雨が降った
傘がなかったので
軒下で雨宿りした
遊び人

彼は名刺をもっていたが
そこには所属する会社名や職場の名は
記されていなかった
彼は仕事をしていなかったし
どこにも所属をしていなかった
名刺はいわば〈遊び用〉の名刺だったから
そこにはニックネームとメアド
気にいったイラスト
それに携帯ナンバーだけがあった

彼は雨が小降りになるのを待ちながら
思案した

そして突然  
そうだ!

思いついた
自分は
この建物の傘下に入ったのだと

見上げると
そこは立派な
我が国を代表する会社だったから

2012年3月31日土曜日

湿ったところ

くちびるがくっつきそう
相手が目を閉じた
私は目を閉じているのだろうか
くちびるにくちびる
湿った舌から押し出される息
擦れる産毛
ファンデの香りに
めまいがしそうになる
腕はどうなっているだろう
腰の周りの衣服は
肉体の躍動と呼吸と
どうせめぎ合って
感覚器官を刺激しているのだろう
舞台の上を回りながら
二人きりになって
遊んでいるのだろうか
責任は誰がとるのか
後戻りできない罪は
どこに紛れ込ませれば
忘れられるのだろう