2010年12月14日火曜日

虹色の隠しごと

隠しごとが入ったリュックを背負って
坂を上がってやってくる
その部屋で
隠しごとは暖炉の前に置いて
二人は求めあった

隠しごとはいつも
放置され
だんだんと熟成された

二人もお互いをよく知るようになり
いつも夢中で話したので
季節の使者がドアの外にやってきては
呼び鈴を何度押しても
気づくことはなかった

水銀灯がLEDランプに取り替えられ
道は冷たく光り
行きかう人の心は
メルヘンを探してさまよった

夜の新たな影法師が生まれると
過去形で語られていた物語を
読み手が追い越し
現在進行形になってしまい
二人は越えなければならない峠に差し掛かったことに気づかされ
目配せをしあった
それが最後で最初の会話となって行った

次の話が未来形で語られ始めたとき
隠しごとは
虹色に燃えながら炎の中にあった

2010年12月13日月曜日

端っこの星

細長い部屋の端っこで
詩をかいている
ずっと端っこにいるのは
僕の好み

だからなのか
端っこが好きな人が好き
端っこを分かち合い
端っこでおしゃべりするのが
いい

真ん中で輝く星は
憧れの一等星
ぼくは端っこのやっと見えている星が好き
名前さえわからない

小さな星がなければ
きっと宇宙はもっと寂しい
大きな星が幾つ寄り集まっても
闇に消えゆく小さな星の
その沈黙に
敵わない

2010年12月12日日曜日

お金を配ってます

お金 余りましたので配ってます
どうぞお持ちください
詩を書いた方に差し上げます
今日書いた詩を見せてください
どんな詩でも結構です
詩をみせてください
一万円札ばかり
どうぞお持ちください
詩集を出した方
いつも詩を書いている方
詩人の方
詩集を見せてください
余ったお金を配っています
かわいそうな方のために
お金がなくて困っている方
詩が好きな方
どんな詩が好きか教えてください
お金を配ってます
残り僅かです
好きな詩を教えてください
未来創作を読んだことのある方
詩人の仲間と集まるのが好きな方
お金を配ってます
お金を差し上げます

2010年12月11日土曜日

よせて はずす

むすんで
ひらいて
たたんで
のして

くるんで
ほおり
ゆるめて
しめて

こすって
こづき
ぬらして
なでて

つりあげ
はねあげ
よせては
はずす

2010年12月10日金曜日

網 あみ

マスコミに網かけられているが
彼女は気づいていないのかな

網の向こうから見つめている
何か喋っている

誰に向けてなのか
その誰かは網かけられてないのかな

網かけられると
不自由になるけど
ギュッと抱き締められ
安心感に浸れる

でも人に網かけて
いいものか

網かけられている様子があまりに哀れなので
神様に訊いてみたら

従順なひとが
なにも考えないで幸せを手に入れるには必要なんだと諭された
マスコミもつかいようということか

神の国も不景気で
リストラが進み
人の幸せの実現に
手がかけられないそうだ

神様の世界でも
民主主義が導入され
嘆かわしい状態が続いていて
選挙のためにも随分時間が取られるという

海に網かけて
お魚をとり
どこからか出直す必要ありそう
ですね

2010年12月9日木曜日

メモのメ

メモしてる?
何をメモしてる?

えっ
メモしてない?

何をメモしたい?
メモしたくない?

メモしてみたら!
メモしたらどうする?

メモあった?
メモ見つかった?

メモあったら
またメモする?

メモされる?
言ったことや買うものや

アドレスやパスワードや
メモ隠す?

メモ隠した場所メモする?
メモ 洒落てみる?

メモ 謎かけする?
メモ いたずらする?
目も当てられないメモもある?
もったいないメモもある?
モアレの目立つメモも
桃色のメモもある?

見つめてみる?  メモ
見つめてみない メモ
見つめていない
見つめられている
メモに
貸しがある?
借りがある?

メモに
見つめられている
メモの目が
鈍く光った

2010年12月8日水曜日

幾つもの いつも

何度同じ言葉を繰り返してきただろう
それなのに彼等は何度でも
初めましてというようなな顔をして現れてくる
いったいカレンダーを何枚破いてきたことか
同じ歌を何度口ずさんだか
同じひとに何度おはようを言ったか

それなのに
いつも
どこからか新しい気持ちが湧いてきて
繰り返してきたことなど
まるでなかったことのようにされてしまう

優しいきみは
繰り返し打ち寄せる波打ち際で
来るものを待っているしかないことを
知らされ
黙って微笑んでいる

海の向こうに陽がしずむと
やがて
波音だけが聴こえてきて
きみの心は
ざわめきと凪とをくり返している

きみの微笑みだけが残る

明日きみに挨拶しよう
おはようと
左手を軽く降って
いつものように

2010年12月7日火曜日

ノックのように

いつかのきつねが声をかけてくれた
コン コン
それを聞いていた鳥が木の枝で
ケタ ケタ 

僕はキーボードを
トタ トタ
すると誰かが電車に揺られつり革が
キー キー
体は
ゆっさ ゆっさ

世間が夜になる
だんだんと 夢の世界が
近づいてくる

誰のもとにも
やってきて
誘いかけてくる

だだいま

おやすみ

寝息が
スー スー
寝ずの番 きつねが
コン コン

2010年12月6日月曜日

詩人の声が

優しい詩人の優しい眼差しは
心の中で戦い続ける静かな炎の穂先
炎を燃やすのは絶え間なく湧いてくる愛

地球が宇宙にぽっかりと浮き
何度太陽の周りを回っても
太陽が何度僕たちの頭上を通り過ぎても
詩人の言葉は繰り返し
僕らのうえに降りそそいでいた

優しい詩人の優しい声が
今日もどこかで語っている
詩でないものを
詩に囚われないように

2010年12月5日日曜日

プレゼント

冬の暖かい日差しの中で
夢を見たわ

どこからが夢で
どこまでが空想だったか
わからないの

冬の街を雨が通りすぎ
珍しく虹が掛かったの
そして
いつまでも消えずにいた

白いカーテンの揺れる部屋で
あなたは風がいいねと言って
ほほえみかけてくれた
私は
そう?
とわざとそっけなくした

それからあなたに
プレゼントの箱を手渡したわ
あなたは私の肩を抱き寄せて
いつもの挨拶のキスをした

夜がきて
朝がきて
沢山仕事をした
友達とお酒を飲み
旅行にも行った
ネイルも何度も塗りかさね
それと同じくらい嘘もついた

気づくと
いつもの場所の
古びた椅子にすわっていて
目覚めていたけれど
いつ
眼をあけたのか
もう忘れていたの