2013年11月9日土曜日

どこで 何をして

日向になった場所に
猫は移動して
いい思い出ばかりを思い出す

鳥は
過去を振り返ることなく
未来さえも見詰めずに
風を切り 風に乗り
いま 世界を見下ろしている

緑をまとったこんもりした森は
空に伸びていくと見せかけて
地中深く根を伸ばしている
夜の間も 脈々と

いったい私は
どこで
何をして 生きていったら
いいのだろう

地球は
私たちの重さをその星の命で
受け止めている

乗りかかった舟ではない
生まれるまえから
死んだ後もずっと
一緒なのだ 一体なのだ

蝉が言っていた
地面の下にいたときは
空にあこがれ
空を僅かに飛んだとき
地面の下の命に
恋をしたのだと

2013年11月8日金曜日

躯でも声でもことばでも

躯でも声でもことばでも語れない
愛した人 してきたことも
ぼんやりして
ただ佇むしかないその門の黒い柱の前

ここは壁に囲まれたすみかなの?
夢も裏切りも混ざり 湿った場所
外は闇色 悪魔が赤い舌出してうろついてる
ここにいるしかない?

青い月が道を照らして待っている
そのむこうにかがやく
露にぬれたま新しい大地
草を揺らし 靴音に励まされ
走ってゆく

未来でも過去でも時は止まっている
あの横顔 騒がしい街
去ってゆく
燃えだした塔の上を流れる川という川

白い夜がそっと閉じて
誘ってる
ずっと前から知ってた
自転車乗り捨てたその訳
握りしめた手 背中はあたたかさ
感じてる
明日、12月9日、福島県立田村高校の合唱部のみなさんが定期演奏会で、合唱曲「ここは花の島」を歌ってくださいます。福島の人の声が世界にとどくといいな、と思っいます。谷川賢作さんが作曲、私が作詞を担当しました。定期演奏会は三春交流館まほらホールにて、13時半開場14時開演、200円。

http://www.youtube.com/watch?v=kxGdQjIiX3c&feature=share


ここは花の島

一枚の花びらを
日差しに透かして見てる
それはいつかあなたと見た
朝焼けの海

一枚の花びらを
指先に置いて見てる
それはいま生まれたあの子の
こわれそうなてのひら

大切なもの守りたいと
願ってここにいる
ここは 美しい島 
花の島

季節は巡り
春も夏も
歌ってる 美しい島


一枚の花びらを
唇に当ててみてる
それはきょう初めて知った
あこがれの恋

一枚の花びらを
風にあそばせてみてる
それはなぜ やさしく誘うの
透き通った涙よ

大切なひと守りたいと
願ってここにいる
ここは 美しい島
花の島

季節は巡り
秋も冬も
呼びかける 美しい島

ここは花の島
美しい島

Lu・・・

作曲・谷川賢作  作詞・マツザキヨシユキ

2013年11月7日木曜日

あのルビーの瞳の火を吹き消して 〜立冬

あのルビーの瞳の火を吹き消して
柔らかなミルク色の珈琲を淹れましょう
枯葉は囁きかわしているのではありませんから
私がポツリポツリと
ひとことふたことお話しましょう
湖に沈もうとしている夕日が
闇を連れてくるまえに

2013年11月6日水曜日

ほしのすなはまにおいてある

           ほしのすなはまにおいてある
、わたくしの思想

だれもがたやすく
  持ち去ることができる

     わたくしは たまに
波の中に投げ入れてみる

    波に洗われ 打ち上げられ角がとれていく
      やさしい貝殻色

     わたくしは次々に思考のかけらを

砂浜に放っている

2013年11月5日火曜日

あしたのうた

あしたはきっといいことあると
しんじるひとがここにもいるよ
だけどあなたはかたをすぼめて
なみだでかおがぐしゃぐしゃさ

あしたはきょうよりいいひだと
きぼうをもってたえているのか
だけどやくそくしてくれないよ
だからゆうきがひつようなのさ

あしたはだれがつれてくるのか
ぼくのゆうきがつれてくるのか
だからあったらつたえておくれ
きっとにげずにたちむかうよと

2013年11月4日月曜日

いま死のうとしているひとへ

いま死のうとしているひとへ
何が手渡せるだろうか
いや、比喩ではなく
(そう、)言葉でもなく
「それ」を手渡さなければならないのだ

いま死のうとしているひとを前にして
何が手渡せるだろうか
口ごもって、焦って……
何も手渡せない

では何か、できるだろうか
思い出話をして時間稼ぎをしながら
何が手配できるだろうか
何かできるだろうか

いま死のうとしているひとが
死んでしまったら
死んでしまったひとの思いや感覚は
もしかしたら「もっといい場所」に移って
楽に、軽くなるかも知れないのだ
(そんなことを、私も、考える)

いま死のうとしているひとは
それを知っていて、この世との未練を
少しずつ捨ててきたのだろうか
緻密な計画をやり遂げてきたのだろうか
(私が生きていく計画以上に…)

いま死のうとしているひとに
私は未練があり
私は常に周囲の様々なことを「世間人」のように感じようとし
そのことで安心を得てきたから
(だが安心というのは最もひとを退化させるから)

いま死のうとしているひとと私は
短いつきあいだが
どれほど多くのことを教えられただろう
私が生きも死にもしないうちに
いま死のうとしているひとは
生きて死んで
2つのことをなしとげるのだ

いま死のうとしているひとよ
私もいつかあなたの後を追って死にたい
そのときあなたはどこにいる?
私はそこを尋ね当てて
こんどは本当の生き方をしてみたいと
話すのだろうか

いいや
それは避けなければならない
それよりいまは
いま死のうとしているあなたに
あなたが好きなパパの抱擁を
届けなければ
そんなことが手配できたら
私があなたと巡り会った理由があったと
初めて思えるかもしれない

というより
あなたのことがなぜ私にとって
大事なのかを
私にその理由が必要なのかを
あなたには無意味でも
知るかもしれない

2013年11月3日日曜日

庭に幾つもの蚊取り線香がたっついる

庭に幾つもの蚊取り線香がたっている
あれは誰の庭だったのか、誰に聞いてもわからない
水銀灯の光で青く浮かび上がる庭石、芝生の緑
錆びかけたブランコ
背の高さほどの柿の木
まかれて蛇口のそばに置かれているビニールのホース
どんな時が過ぎようとも放っておかれているのは
過ぎていこうとする時自身
ここでは人ではなく
時が旅人であることが
よくわかるのだ

2013年11月2日土曜日

丸裸の私

右耳は人の声を聞く耳
左耳は亡き人の声を聞く耳
両耳の間にいてアンバランスな私

右手は慰めるためにあり
左手は払いのけるためにあり
両手の間にいて果実の少ない私

右脳は誰かを愛し
左脳は他人を罰し
真ん中にいる私は
丸裸の私

2013年11月1日金曜日

通勤電車

疲れた顔して電車に乗っている
つまらないことに思いを巡らせて
野原を駆け回っていた心は
どこかで迷子になってしまった

空回りするむなしい言葉を吐く
言いたいことは何も言えない
くり返し願っていたあの夢は
暗がりで埃をかぶってるんだね

世間はみんな他人の顔してる
自分を守るための服をまとって
知らない子と手をつないだ
初めてにことばかりだった日々よ