2012年4月24日火曜日

私について言えること(きょう現在)

隣りの家までは
庭を越えて25年
トイレには船が浮かんでる
体育館の広さの更衣室
杉田かおるの付き人だが
偉大な詩の賞を受賞
通り沿いに持っている貸し部屋は不動産屋として最適の仕様
鍵のかからないトイレで
記者の帰りを待つのは
急な受賞のニュースを聴いたから
ピンク色のカーテンが揺れて
その襞の一つに
グランドキャニオン型のウサギ小屋が12箇所あり
1箇所あたり駱駝を12頭飼う
週末に出勤して火曜日に帰宅
ゴミの日は年2回
紙飛行機は二人乗り

2012年4月23日月曜日

残っていた

安いバナナを買ってきて
二本食べた

少し時間をおいて
また一本食べた

また少し時間をおいて
また一本食べた

しばらくして
もう一本食べた

眠くなったので
灯りを消して眠った

朝  目が覚めて
またバナナを食べた

バナナはなくなった
私はまだ残っていた

私は食べる方だから
バナナがなくなっても
まだ
残っていた

2012年4月22日日曜日

偶然を装って

今後も生きていていいか
許可をお願いします
あなたの前に現れることを
認可してください
あなたのためにお金を稼ぎ
稼いだお金をすべてあなたに渡すという
わたしのアイデアに
特許を与えてください
不思議な感じの夕焼けや
風が運んできたいい香り
真夜中の砂浜の月
それに街で見つけた素敵なもの
それらをあなたに贈りたいと思うことを
歓迎してください
わたしはあなたのいうことを
よくきくしもべですが
あなたが
そういうのは気持ち悪い
と思うなら
わたしはさりげなくそれをやってのけましょう
そういうわけで
きょう
待っていていいですか
偶然を装って

きのう23:57消えた投稿

たべごろ

部屋の中の空気は
四角い
人がいる部分は
人型に切り抜かれているが
人の中にある空気は
複雑な形で湿り気が多い

心配はいらない
この人は間もなく部屋を出て行く
そうしたら
厄介な感じは少なくなるから

あなたが考えるべき問題は
別にある

たとえば
電球は何個必要か
宇宙人は何色が好きか
空をどうしたら天気が雨になるか
竹輪はいつごろがいちばんおいしいか

2012年4月20日金曜日

僕が死ぬ一日前に

僕が死ぬ一日前に僕と結婚してください
僕はずっとあなたのことが好きでした
少ない交わりだったけれど
僕にとっては幸せでかけがえのない時間でした

あなたの化粧が僕のシャツについた時
あなたがすまなそうにしたことも
ドキドキするような思い出です
息を止めて人生最大の賭けをした瞬間でした

あなたが渡してくれた花の香りのソープ
未だに机の引き出しで香っています
占いの書かれた手作りのカード
どこに行ってしまったか分からない出来事の数々
思い出そうとふと立ち止まってみるけれど
なかなか思い出せません

あなたはいまどこでなにをしているでしょうか
だれとどんな話をしているでしょうか
誰かのうでの中で
優しく目を閉じて眠っているでしょうか

僕はいつもあなたを思っています
あなたを幸せにしたいと希っています
一日だけでも
僕の幸せと重ねあわせたいと

だから
僕が死ぬ一日前に
僕と結婚して下さい
そのあとは
すぐに
忘れてくれても構わないので

2012年4月19日木曜日

詩になることば

詩になる前のことばは
とてもいい

詩にならずに
消えて行ってください

永遠にとどめようとしないで
消え去る自由を
繰り返しいつまでも
与え続けてあげてください

季節がめぐり
やがてまた新しい花びらが
何かを語ろうとしているが
その前に立って
私は言葉をなくしている

それは自然なことだ
古い言葉が濾過されて
おいしくなって
湧き出てくる

詩人はその脇に立って
その水を飲むといい
言葉ではないもので
喉を鳴らして

2012年4月18日水曜日

埃ゴミの主張

私ははエッジのない
埃ゴミのひとつ
まちに立つ建物にだってひとつひとつ物語がある
東京の空は狭いといわれるが
鳥たちは飛び回る自由を持っている
私は
誰が捨てたかも知れず
自らの自由を持たない路上の埃ゴミ
謝る必要もなく
媚びる場面もこない
雨の日にいちばん低い場所から
街を眺めよう
望みではないが
いま言えるのはそのくらい
以上

2012年4月17日火曜日

あなたと僕

あなたがジャンプするから
僕は跳ばずにいられる
傷だらけになっても
あなたは立ち上がるから
僕は布団を体に巻いて潜っている
勝手口や玄関であなたは押し売りを撃退するから
僕はあなたを盗み見して中心を熱くする
あなたはバーのカウンターで強いお酒を何杯も飲む
僕は眼を閉じたあなたのからだをゆっくりと舐めまわす

夜の間に貯水池の水は誰かが飲み干してしまったらしい
あなたは酔いつぶれて寝ているし
その傍らで
ぼくは干からびている

街中が騒いでいるが
ふたりとも
いつまでたっても
起き上がる気配がない

2012年4月16日月曜日

シャワーで流せる

パンを焼きましょう
海を見に行く前に
でもそのまえに
手紙を書きましょう
石鹸で手を洗ってから
(爪の間もきれいにしましょう)

苦しいことは
砂浜に行った時に
遠くに放り投げましょう
(できれば暗い気持ちと一緒に
人の頭に当てないように注意して)
(散歩の犬が駆けていった後で)

いつでも何かをする前に
何かをしなくてはならないから
し終えたらすぐ準備しましょう
(追い立てられる前に)
(なんて
これは嘘)

(約束はあなたを縛るから気をつけて)
パンツを脱いでから
シャワーを浴びましょう
気に入った香りのSOAPを手に

電話して泣くのは先にすませておけば
もう電話が鳴っても出なくてもいいから
気分よくシャワーで流せます

涙では流せなかったものも
シャワーで流せるもの
クラシカルな恋バナも