2011年9月14日水曜日

愛を続ける

庭からは見えないんだ
橋からも見えない
木々の隙間からも見えない
テニスコートの向こうにも
風が渦巻いている場所にも
見えない

想像して
耳を澄ましても
聞こえないんだ
遠くの雑踏の中にも
子供たちのはしゃぎ声や
誰かを呼ぶ声の後ろからも
聞こえてこないんだ

触れないんだ
手を伸ばしても
近づいても
向かい合わせになっても
触れられないんだ
そこにいても
目を合わせても
触れられないんだ

2011年9月13日火曜日

夜の街

きつく締めて
硬く結ぶ

サッと抱いて
少し揺らす

月の舌で
肌を濡らす

夜の街で
影と暮らす

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シンガポール
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中国
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イギリス
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2011年9月12日月曜日

片思いの月

月を見上げながら歩いていたら
道に迷ってしまった
こんなときに
旅先から
愛するあなたに電話するのは
やめよう

きっとあなたも
道に迷っているに
違いないから

月からみれば
2人は一緒も同然
いつも会うカフェの
飾り物の風見鶏が
青く光って見えている

また
あそこで
一緒にすごすんだ

そのとき
私は片思いの月
悲しくて身を細らせている

2011年9月11日日曜日

いやなプレゼント

目覚まし時計の中に
蝉を隠して
あなたに贈ろう

気まぐれに
ジリジリ鳴るよ
気まぐれなあなたに
目を覚ませ の合図

2011年9月10日土曜日

これも性格

ぼくのほっぺは
ふくらんでいる気がする

こんなにふくらんでいなくても
いいのに

おまけに拳はまるい気がする
熊に近い形に見える

体もずんぐりムックリしている気がする
下手するとムッツリナントカだ

だから
自分と似ていない形にあこがれるとすると
すらっとした細身で
ほっぺはスッキリしている形
ということになる

また
オタクで小心者
見栄っ張りでワガママ
自分が大事で
イベント好き
詩人を気取りたがり
特別感をもとめる
人を驚かすのが好きで
驚かされるのは嫌いな
気がする

とすると
同じように
社交的で勇気があり
素直で親切
特別なものを求めず
見栄を張らず自然体
人を驚かせない
性格に惹かれる
ということになる

そんなことを考えていたら
自分の形や
性格をなおしたほうがいいと
思えてきた

そして
いつものように
考えるのをやめてしまう

これも性格

2011年9月9日金曜日

詩人のスーパーカー

これは
ぼくが作った電気自動車なんだ
とその詩人は言った

*これは、最終行にもってきてもいいかな

巨きな会場の床一面に
テストコースが設置されている
きょうは昼の生番組で
スーパーカーを披露することになった

サングラスを掛けた司会者が
ゲストを呼び込む
私も一足遅れて一緒にでる
サポート役だからだ

さっきまで
会場内のレストランで打合せをしていたときには
客はまだ少なく
白けたらどうしよう という感じだったのに
いつの間にか二階の上のほうまで客はが入り
心配は別の心配に変わった
盛大な拍手と歓声に
圧倒され
失敗が怖くなったのだ

スーパーカーは
ゴーカートのようなおおきさで
床は紙でできている
ボディは夏休みの宿題と同じ
牛乳パックで作ってあるが
仕上げに凝ってある
ドライバーと
後部座席にもう1人乗れるが
きょうは
車の不具合を調整する使命で
私が同乗する

コマーシャルが終わり
サングラスの司会者がスタートを盛り上げた
ついに
走り始めた
だかあろうことかすぐに
ボディがしなって
よじれて失速した

2人でよじれを直しながら
平静を装い
走り続けようと
必死になった

実況のアナウンスが盛り上げようとしているが
無理だ!

いったいどこが
スーパーカーなのだ
といった様相だ

そのとき
ドライバーが振り向いて
後ろに設置された
ちいさなワイヤレスカメラに向かって
カメラ目線で言った

これは
ぼくが作った電気自動車なんだ

2011年9月8日木曜日

雨が降り
あたり一面が濡れた

あなたの頬に
マイナスの記号をつけたら
いままで生きてきた人生が
幸せになるか
不幸になるか

もし不幸になるなら
マイナスの記号は
不幸が訪れるときまで
とっておこう

雨があがり
地上に湿った風が吹き
見渡す限りの
光る街が現れ
海と地続きになる

風に置き去りにされた私は
どんな符号を待っているのか

2011年9月7日水曜日

土ぼこりの香り

急に雨が降ってきたんだ
ちょうど道に迷っていた
静かな町なのに
前からも後ろからも
左右の道や建物の間からも
ひとが出てくるんだ
みんなそれぞれ
何か用がありそうだったり
楽しそうだったり
さびしそうだったり
何かを抱えているみたいなんだ

そういう自分だって
他人からみれば
何かを抱えているように
みえるんだろう

雨の間を風邪が吹いて
木の下の乾いていた土が
けむりをたてる

曲がり角をまがり
みたことがない静かな道に入ったとき
外人のジャージ姿の人が
声を掛けてきたけど
何をいっているかわからないので
こちらも自分でもわからない言葉で
わからないと伝えて手を振った

さびしげな道に入ったはずなのに
相変わらずひっきりなしに
ひとびとがいき過ぎる
なかには迷い顔のひともいる

さあ
部屋に帰らなくては
傘をとって
ご飯と洗濯屋に行かなくては

雨が降っている
優しい雨だ
きょうは朝から
霧っぽい空気だった

夜の向こうに何があるのかな
すれ違うひとびとは
何処に帰るのかな
食事をしおわったら
どこかのラウンジに座って
誰かの前にいてみようかな

そのとき
雨は
土ぼこりを鎮めているだろう

2011年9月6日火曜日

ずっと話していない人は

ずっと話していない人のことを
考えている
窓の向こうでは
秋の虫が鳴いている

ずっと話していない人は
どうしてか
愛おしい
どうしてか
とても身近に感じられる

ずっと話していない人は
どこでなにして
いるのだろう
まさか私のことを考えている?
まさか まさか

ずっと話していない人は
ほんとは少し前に別れた人
あれからまだ髪も切っていないだろうが
昔別れた人みたい