絵が飾られた壁
夜には照明が作り出す影さえ
光源となっている
きみの背景はいつだって美しい
例えばダウンタウンの雑踏でも
きみとの境界線のエッジがくっきりと立ち上がって輝き
背景は柔らかく後ずさりして協和し
雑多なディティールを和ませる
きみのからだは光を弾いて
瞳のグレーを吸収する
脛の直線はシーツの上で燃え残る
白い灰で焔を隠す役割を果たして
朝
白い壁に
窓からの光が反射し
きみの顔をレフ板のように明るくし
新緑の世界が宿る
きみは手のひらの上でオブジェをもてあそんで
僕に見せる
重い扉の外の世界は
きみが出現すると一瞬のうちに
背景と化す
2011年2月10日木曜日
2011年2月9日水曜日
真面目に生きてきて
楽しむことの罪悪から逃げて
真面目に苦労してきたよ
本当は怖がりなだけ
楽しいことはたくさんあったから
という
遺書を残した人がいた
という書き出しの物語りを放り出して
ぬるい風が強く吹く街に出ていった
道行く人はみな日常の歩行を楽しんでいるようだった
私は綺麗な写真を撮ろうとデジカメを取り出して
撮影を繰り返した
信号機に目が留まった
シャッターをためらわずに押すと
赤信号と青信号が同時に灯る信号機が
モニターに写し出された
真面目に生きてきた人へ
真面目に生きてきて
どうでしたか
真面目に生きてきて
真面目に苦労してきたよ
本当は怖がりなだけ
楽しいことはたくさんあったから
という
遺書を残した人がいた
という書き出しの物語りを放り出して
ぬるい風が強く吹く街に出ていった
道行く人はみな日常の歩行を楽しんでいるようだった
私は綺麗な写真を撮ろうとデジカメを取り出して
撮影を繰り返した
信号機に目が留まった
シャッターをためらわずに押すと
赤信号と青信号が同時に灯る信号機が
モニターに写し出された
真面目に生きてきた人へ
真面目に生きてきて
どうでしたか
真面目に生きてきて
2011年2月8日火曜日
亀と猿
ハラハラドキドキ
カミツキガメが逃げ出した
いきなり噛みますので
ご注意ください
寝ている間に
噛まれた人もいます
友達を噛まれた人もいます
カミツキガメは
神出鬼没で
修学旅行の学生のカバンの中にも
入っていたことがあります
OLのかすみさんは
フライパンだと思って
火にかけて気づきました
落ちこぼれ小学生の雷太くんは
おもちゃ箱の中のブレードを取り出そうとして
亀に噛まれました
サラリーマンの小千谷さんは
帰り道で小便をしようとして
噛まれたそうです
カミツキガメの噂がもちきりとなった街に
それに嫉妬したカミツキザルが現れました
すっとんでやってきて
腕やお知りに噛み付きます
すっぽんにも噛み付きます
釜にも噛み付きます
だけれど
カミツキザルとカミツキガメは
お互いを噛まないのだそうです
明け方近くに
今日も眠りにつこうとすると
どこからか
噛み付く気配を感じました
しかし眠さに勝てず
すーっと眠りの中に落ちてゆきました
すると
一緒に眠りの世界に
落ちてゆく亀と猿を目にしたのです
カミツキガメが逃げ出した
いきなり噛みますので
ご注意ください
寝ている間に
噛まれた人もいます
友達を噛まれた人もいます
カミツキガメは
神出鬼没で
修学旅行の学生のカバンの中にも
入っていたことがあります
OLのかすみさんは
フライパンだと思って
火にかけて気づきました
落ちこぼれ小学生の雷太くんは
おもちゃ箱の中のブレードを取り出そうとして
亀に噛まれました
サラリーマンの小千谷さんは
帰り道で小便をしようとして
噛まれたそうです
カミツキガメの噂がもちきりとなった街に
それに嫉妬したカミツキザルが現れました
すっとんでやってきて
腕やお知りに噛み付きます
すっぽんにも噛み付きます
釜にも噛み付きます
だけれど
カミツキザルとカミツキガメは
お互いを噛まないのだそうです
明け方近くに
今日も眠りにつこうとすると
どこからか
噛み付く気配を感じました
しかし眠さに勝てず
すーっと眠りの中に落ちてゆきました
すると
一緒に眠りの世界に
落ちてゆく亀と猿を目にしたのです
2011年2月7日月曜日
ただなにかだいじなものをしまいたがるだけで
開いていたものを閉じるとき
そのなかにモノを収める
そのことを「しまう」というのかもしれない
閉じていたものを開き
その中からモノを取り出すとき
そのことはなんというのだろう
きみはそんなことにはお構いなしに
入れたがってばかりいるのではないのか
回転しているものの上で
行ったり来たりしながら
きみとぼくはふたりで思案に暮れる
周りにはそうした人がいっぱいだ
その人達はテーブルの影で
当然のようにお互いを握り合っている
きみは
ただなにかだいじなものをしまいたがるだけで
他のことに興味がない
ぼくはきみがしまうものを探すのに熱中するばかりだ
そのなかにモノを収める
そのことを「しまう」というのかもしれない
閉じていたものを開き
その中からモノを取り出すとき
そのことはなんというのだろう
きみはそんなことにはお構いなしに
入れたがってばかりいるのではないのか
回転しているものの上で
行ったり来たりしながら
きみとぼくはふたりで思案に暮れる
周りにはそうした人がいっぱいだ
その人達はテーブルの影で
当然のようにお互いを握り合っている
きみは
ただなにかだいじなものをしまいたがるだけで
他のことに興味がない
ぼくはきみがしまうものを探すのに熱中するばかりだ
2011年2月6日日曜日
待ち合わせ
時計のある塔の下で待ち合わせをしましょう
幾多の恋人たちがそうしてきたように
遠くに見える噴水や
石作りの回廊を眺めながら
一枚の絵の中に
私たちを美しく閉じ込める準備をして
お互いを発見したら誰もがそうするように
軽く手をあげて笑顔を見せましょう
それがきょうも始まりの合図です
いつ終わるともしれない刹那の逢瀬の
私たちは名前も所番地も捨てて
ただの愛し合う恋人同士となり
あの街並みの人混みの中に入って行きましょう
私たち自身も見失うほどお互いの中の街に溶け込むように
幾多の恋人たちがそうしてきたように
遠くに見える噴水や
石作りの回廊を眺めながら
一枚の絵の中に
私たちを美しく閉じ込める準備をして
お互いを発見したら誰もがそうするように
軽く手をあげて笑顔を見せましょう
それがきょうも始まりの合図です
いつ終わるともしれない刹那の逢瀬の
私たちは名前も所番地も捨てて
ただの愛し合う恋人同士となり
あの街並みの人混みの中に入って行きましょう
私たち自身も見失うほどお互いの中の街に溶け込むように
2011年2月5日土曜日
2011年2月4日金曜日
2010年2月4日に来た手紙
封を開ける前から手紙がサヨナラを言っている
寒い夕に届いた薄い桜色の封筒は
あなたからとびたったひとひらの花びらなのか
夜の暗いトンネルを抜け
寒い人ごみの雑踏を抜け
ポストにやってきた
ため息のようにポトンという音を響かせて
封筒は季節を映して色を変えてきた
まるで映画の予告編みたいに
これからのふたりの未来を見せようとしていたのか
最後の手紙はいつもと同じブルーブラックの宛名
よく似合う花の切手にあなたの地名
なんど行ったことだろう
何度行くことだろうと思いながら
寒い夕に届いた薄い桜色の封筒は
あなたからとびたったひとひらの花びらなのか
夜の暗いトンネルを抜け
寒い人ごみの雑踏を抜け
ポストにやってきた
ため息のようにポトンという音を響かせて
封筒は季節を映して色を変えてきた
まるで映画の予告編みたいに
これからのふたりの未来を見せようとしていたのか
最後の手紙はいつもと同じブルーブラックの宛名
よく似合う花の切手にあなたの地名
なんど行ったことだろう
何度行くことだろうと思いながら
2011年2月3日木曜日
スキを狙って
私の値段は幾ら?
とても大事なことなのに
そのシステムの中で自ずと価格が決められてしまう
自分には抱えられないほど
大きくて小さな私なので
私の価値はさまよう
キスをする時は別世界が入ってくるので
伸ばした手に引っかかった紐を指に巻き付け
それを頼りに戻れるようにするけれど
有効かどうかは分からない
戻った場所が元の場所なのか判断がつかないからだ
相手はなにを考えているのだろう
いつも少しだけ興味を持つ
でも尋ねる術が思いつかないので
なるがままいる
私の名前はキミという
私がキミなんて
たまにこんがらがる
どうでもいいことだが
何か深い意味があるのだろうか
たぶんないだろう
幽霊を見たことはないが
私は幽霊のようにあなたの前に現れる
初めて私を見たあなたは眼を輝かせて
落ち着きなく紳士を気取る
または気取りなく話しかけてくる
私はあなたの指の一本を握り
半分を自分のために使おうとするけれど
ごちゃごちゃになって
何人もの私が現れるので
結果はわからずじまいだ
私には価値があるとみんなが言う
私もそう思う
私はやりたいことをやる
そのためにやりたくないこともやる
ただ たまに
その二つは入れ替わる
私の許可なく
私が忙しいスキを狙って
とても大事なことなのに
そのシステムの中で自ずと価格が決められてしまう
自分には抱えられないほど
大きくて小さな私なので
私の価値はさまよう
キスをする時は別世界が入ってくるので
伸ばした手に引っかかった紐を指に巻き付け
それを頼りに戻れるようにするけれど
有効かどうかは分からない
戻った場所が元の場所なのか判断がつかないからだ
相手はなにを考えているのだろう
いつも少しだけ興味を持つ
でも尋ねる術が思いつかないので
なるがままいる
私の名前はキミという
私がキミなんて
たまにこんがらがる
どうでもいいことだが
何か深い意味があるのだろうか
たぶんないだろう
幽霊を見たことはないが
私は幽霊のようにあなたの前に現れる
初めて私を見たあなたは眼を輝かせて
落ち着きなく紳士を気取る
または気取りなく話しかけてくる
私はあなたの指の一本を握り
半分を自分のために使おうとするけれど
ごちゃごちゃになって
何人もの私が現れるので
結果はわからずじまいだ
私には価値があるとみんなが言う
私もそう思う
私はやりたいことをやる
そのためにやりたくないこともやる
ただ たまに
その二つは入れ替わる
私の許可なく
私が忙しいスキを狙って
2011年2月2日水曜日
2011年2月1日火曜日
帰り道
夜道をゆっくり歩いて帰っていく
パンの袋を破ってパクつきながら
空にはお月さん
通りの向こうにはコツコツ音を立てて急ぎ足の女
間をバイクが通る
私はそろそろすり足気味で歩く
手にコンビニの袋揺らして
コンクリートで覆われた橋を渡る
パンはおいしい
部屋についたら灯りをつけて
暖房をつけて
トイレに入る
トイレには綺麗な神様がいるから
だれかがそういっていたから
そのあとは
眠くなるまで起きていたら寝る
それまでの間に何が出来るか
眠った後にすることよりいいことができるか
パンの袋を破ってパクつきながら
空にはお月さん
通りの向こうにはコツコツ音を立てて急ぎ足の女
間をバイクが通る
私はそろそろすり足気味で歩く
手にコンビニの袋揺らして
コンクリートで覆われた橋を渡る
パンはおいしい
部屋についたら灯りをつけて
暖房をつけて
トイレに入る
トイレには綺麗な神様がいるから
だれかがそういっていたから
そのあとは
眠くなるまで起きていたら寝る
それまでの間に何が出来るか
眠った後にすることよりいいことができるか
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