2011年1月21日金曜日

詩を生むあなた

あなたたが詩を生んでいる
影に隠れて
耳を澄まして
詩が生まれ落ちる音に
聞き耳を立てている

詩は
わたしの指先から文字になり
その魂のようなものを
床に落す
木のテーブルも椅子も透けて通って
机の上に文字だけになった詩が残る

あなたは口もとに笑みを浮かべて
瞬きを少なめにして
詩の誕生を神妙に受け止めている
あなたが詩を生んでいるのに
あなたはそれに気づかない

わたしは
あなたが詩を生んでいることを
あなたに伝えようとするが
いつもあなたは
わたしのまえにいない

2011年1月20日木曜日

コーヒータイム

「ウニ」と書いてあるタンブラーで
きみはコーヒーを飲んでいる
窓辺の席で脚を組んで
手にはケータイ
誰かを待っているような表情で
しっとりと艶かしい

グロスのルージュは
取れにくいもの
髪はやわらかなブラウン
何度か染め分けてやっとお気に入りのコンディションになった
向かいのスツールにはバックとコート
テーブルには色とりどりのアンティークグラスビーズがちりばめられたペンと
手帖

一つ溜息をつくと
だれかに溜息を見られなかったか心配になって
周りを見回した

そしてウニを
またもや唇にあてた

2011年1月19日水曜日

受け持ち

自分というものを受け持ってどのくらいがたっただろう
学校の担任の先生と共同で受け持っていた時もあったが
そのころは自分を「受け持っいる」という感覚はなかったような気がする
いまでさえ なんとなく受け持っている気がしているだけで
実際に受け持てているかどうかは冷静には判断できない
自分とはなんだろう
他人や知人とどう違うのだろう
入れ替わったらどうなるのだろう
朝起きなかったら何か変わるだろうか
生活圏から消えたら何か変わるだろうか
自分が自分という担任の元でもがいている
また担任が聞き分けのない自分に手をこまねいている

ただただ卒業式が待ち遠しい
その後のことは別にして
自分とさようならできるのだろうか
担任と卒業生みたいに笑いあって涙さえ浮かべて

2011年1月18日火曜日

次に

紅茶を飲むわ
カップを温めて
奥から綺麗なアッシュトレイを引っ張り出して
煙草に火をつけるわ
カーテンを開け
風を入れる
寒いけど
ソファーに腰掛けて
音楽を選んでかけてみる
好きだった曲に続いて
別の曲が流れる
好きだった人の次に
別の人が現れるみたいに

2011年1月17日月曜日

おいしいものを

僕が見ていないと
あなたは苺ショートの苺をまず先に食べてしまう
丸ごと口にいれ頬張って食べる
その表情はとても迫力があり
愛らしい
人生の酸いも甘いも噛み分けた自信に満ちている

美しい顔立ちのあなたが
行儀良く
僕の前に現れる
僕は愛している
整った笑顔であなたは笑う
笑ってトムヤムクンを食べる
生春巻を食べる

僕はこっそり口元を盗み見る
逆に盗み見られていることにも気づかずに
あなたはお待ちかねの
マンチュアムをたべる

2011年1月16日日曜日

LOTOで人生変えますか

LOTOで人生変えたローっト
と甲高い叫び声がテレビからこだまする
日本中のテレビのスピーカーを使って
地響きのように人々の住むこの島の隅々にまで到達する

CMの男は
屋根をぶち抜いて家でキリンを飼うだけでは飽きたらずに
今度は「雪降らし機」なるものを購入して
友達と雪遊びをするらしい

みずほ銀行は
その宝くじを売るため
山手通り沿いの高層ビルの支店の一角にに小さな店舗を設けている
雨が降ると水浸しになる道路の奥まったところにその売場はあり
みずほ銀行はその辺りに自転車を止められるのを嫌って
プラスチックの黄色い鎖を数十メートルにたって張り巡らせ
空き地を作っている
歩行者はやむなく水たまりの道路を歩いて鎖の切れ目から乾いた空き地に入り
くじを買う
くじ売り場にはスピーカーが設置されていて
空き地越しの道を歩く人に「あなたも億万長者」と呼びかける
こんにちは、西田敏行ですというタレントの挨拶で引き付けて

CMによると
億万長者は倍増中で億万長者を作る機会を開発したという
「けっこうあたるぜナンバーズ」というあやふやな唄もヒットさせたという

新宿西口地下の宝くじ売り場は
当選金の払い出し業務は早めの時刻で終了し
販売だけは引き続き行う
11時を過ぎると辺りはホームレスと呼ばれる人々でごった返し
その合間を家路に向かう人や遊び場を移動する人などが通り過ぎる
公衆トイレにはトイレ内でいかがわしい事をしないようにと貼り紙がされている
このトイレも深夜は閉鎖される

宝くじは日本中で売られている
テレビ局は宝くじのCM獲得に熱心だ
国民的スターが宝くじを宣伝する
国民をその気にさせて宝くじビジネスを成長させるため

人々は思う
宝くじが当たったら人生が変わる
お金にはその力がある と

2011年1月15日土曜日

秘書と世界 -序説-

秘書と世界の境目に衣服がある
秘書寄りにはランジェリー、ストッキング、キャミソール、
指には指輪、首の周りにはネックレスがある
世界よりにはブラウス、ブレザー、スカート靴などがある。
秘書の顔と世界の間にはファンデーション、唇はルージュ、爪はエナメル、ビーズ
混ざり合う位置に香水、シャンプーの残り香などがある
秘書と世界の間には気流があり、秘書の中と世界とを出入りしている
秘書が声を発するとき、世界との境目は渦巻いて混沌とする
秘書の中の濡れた肉が開口した唇から覗き見えたかと思うと世界の空気が出入りし、その時
外と中の区別が付きにくくなる
見ようによっては世界は秘書の中に入り込み、秘書は世界に挟まれてしまうからだ
秘書を境目にして世界の内外(うちそと)は区別が難しくなる

もう一つ重要な事柄がある
それは、この秘書が抱えている意識と世界の意識との関係である
秘書は世界の意識によって支配されているが
秘書はそのことを意識せずに
もっぱら自分の意識の中に世界を置いているのだ
このことにより世界と秘書との主従関係と
身体性とがねじれ現象を起こしている
第三者Aから見れば秘書と世界との関係は一見そう複雑に見えない
だが秘書は秘書と世界との関係を第三者に投影して意識することに不慣れだ
そこで第三者は自分の身体の一部を秘書の内部に挿入して
客観的な意識の一体化を試みるが成功した試しがない
この問題を解く鍵は何処に存在するのか
詩人Bに訊いてみると詩人Bは一編の詩を以て回答した
その詩はいずれ紹介するとしよう

2011年1月14日金曜日

ゆるく

ゆるいことを考えてみる日
ゆるく考えてみる
あらゆる紐を緩め
柱時計のネジをゆるく巻いて
ぬるいお湯に浸かって
ヌルヌルクリームを塗って
ゆるせない人をゆるして
自分をおおめにみる
すると
何かがかわる
わからないくらいすこしだけれど

2011年1月13日木曜日

花を挿した

ありのままが美しい
と あの人はいう
正面から向き合って 絶対逃げちゃダメだ
と あの人はいう
失くしたものは わけがあって失くなったのだ
と あの人はいう
本気になったら 何だってできるはず 殆んどのことは
と あの人はいう
夢は実現するためにあり 実現したらもっと大きい夢が見えてくる
と あの人はいう
言い訳ばかりしないで 少しずつでもやりたいことに近づかなくちゃ
と あの人はいう
言うだけなら誰でもできるんだから やらなくちゃ意味がないしかっこ悪いよ
と あの人はいう

アマリリスの花が
朝 テーブルに置いてあった
誰が置いたのだろう

空き瓶に挿した
水を入れて

2011年1月12日水曜日

質問?

友達は何人いますか?
恋人は?
ビタミン足りてる?
似たような話題を何度も話す?
着回しのいい服ばかり着ている?
きのうとおとといはだいぶ違う?
今と一年前は似ている?
食べ物の好みは変わった?
携帯 何台目?
毛虫にさされたことある?
プールで水飲んだ時と近い?
結婚式に出た?
葬式は?
トンビに狙われた?
捨てられないもの多い?
裏切られた?
浪費した?
カモられた?
カモった?
漏った?
ろくろっ首怖い?
煙は煙い?
スキーした?
うまい?
肋骨見える?
ダイエットどう思う?
人と違う?
損してる?ヨリを戻した
詰め寄った
しみったれた?
消した?
加えた?
温めた?
緩めた?
いれた?
ずらした?
蹴飛ばされた?
外した?
舐められた?
舐め舐めした?
なめした?
くすませた?
寝転んだ?
寝入った?
串巻にした?
すっころんだ?
すっとぽけた?
消沈した?
消灯した?
投書した?
詩を投稿した?
投資した?
舌を巻いた?
下をなでた?
上に進んだ?
ろくろを回した?
回された?
馴染んだ?
楽しんだ?
貸した?
書いた?
課した?
からかった?
逗子へいった?
イタコと会った?
ルビーを選んだ?
断髪式に参加した?
クルマを買った?
郭へ行った?
らりった?
ろれった?
竸った?
雪駄を履いた?
セックスした?
したいことをした?
良かったです。