ぼくの頭に巣をつくって
鳥が住みついた
朝から賑やかでしょうがない
友達は
うらやましいという
いい効果音だね とも
ぼくがなにを考えているっていうんだ
そうか
蒼い空に
なにか忘れ物をしてきたっていう
あの 詩人が言っていたやつ?
鳥は巣を出て行ったり
戻って来たり
おい そこでなにか食べるのは
やめてくれないか
人の悩みなんて
こっけいだね なんて
どこかでうわさ話してきたのかい?
ほら
月がのぼってきたら
もう おやすみ
あしたはぼくが
たたきおこしてあげる
なぜか光ってるね
樋口くん
なぜ光ってるんだろう
樋口くんの顔
なぜか光ってる
樋口くんの目
なぜか目立っているね
樋口くんの筋肉
なぜか少し変だね
樋口くんの話
なぜか面白いね
樋口くんといると
樋口くんは
見ているね
人やものごとを
樋口くんは動じないね
ちょっとのことでは
樋口くんは
何が好きなの
樋口くんが好きなもの
変わってるよね
なぜか人が寄ってくるよね
樋口くん
なぜかいい仕事をするね
樋口くん
なぜかひとを驚かせる
樋口くん
人生の晴れ舞台ってどんな気分?
わりといいせんいけちゃってる
なんて
思ってる?
きょうはおめでたいね
みんなが驚き
ほっとして
うらやましくなり
自分も頑張らなくちゃって
思ってるよ
そして樋口くんから
幸せのおすそ分けをもらって
案外 いつも
もらってばかりだな
なんて 思ってる
樋口くんはそんな人
いつも
与えてもらうような顔をして
なにかを
与えてくれる人
ありがとう
お礼を言いたいことに
いま 気づいた
でも
あんまりイイキになるなよ
封筒の中に
何が入っているのか
思い出せない
それは
見たことがある
よく知っている封筒
封が外れかかっている
でも
凛とした封筒
誰が何をいついれたのか
分からない
それを誰が知っているかも
忘れてしまった
でも
ここにある 封筒
私がここに来る前から
ここにあった
静止した風が
出てきたがっているかも
知るよしもない
隣人に不利な何かが
入っているのか
信心深い人を喜ばす何かが
入っているのか
見ていると
目眩さえしてくる
四角く視界をふ塞ぎ
静かにたたずむ
封筒
いつもあなたがいたキッチンに いまも
あなたがいるような気がして
見てしまう 何度も
でも そこに あなたはいない
いつもあなたに注意された 悪いくせ
あなたに見られたようなきがして
ハッとして 振り向く
でも そこに あなたはいない
あなたは ほんとうに
いなくなってしまった
どこかへ いってしまった
私は あなたを
待つことはできない
あなたは
帰ってこない
あなたの気配を
まって
生きていくだけ
ゆきだるまが
おこっていたのは
つくったひとに
みすてられたから
ゆきだるまだって
ずっと
おもっていてほしい
つくったひとに
そんなこと
ぼくにだって
わかる
つくったのは
おとな
せけんをわたり
よごれてしまった
おとな
ゆきだるまは
おしえてくれた
あんなおとなに
なっちゃいけないと
ぜったいならないよ
ぼくは
つくったものをだいじにする
おとなになる
あんな
よごれたおとなには
ぜったいならない
そして
よごれたおとなに
いつも
きみのことを
はなしてあげたい
帰り道が待っている
少し表情を暗くして
帰り道に足を踏み入れる
来たときの足跡をチラ見して
帰り道は家へとつづく
それはいつも変わらない真実
帰り道で寄り道しても
また帰り道に組み込まれる
帰り道を逆に歩いて
帰らない勇気はまだない
いつも帰り道が待っている
凡庸が顔を現す
けれども すがりつきたい毎日がある
わごむひいて
あのこのせなか
ねらってあてる
ごめんね あてて
てくびにはめて
ちをせきとめる
だれかにじまん
したくって
たくさんつなげ
ごむとびしよう
ぱんつのごむも
ひきいれて
こわれたふたを
わごむでとめて
がっこうへいく
いいきぶん
むっつりがおが
かわいいね
おこったしぐさが
しんせんだ
ほおづえついても
えになるね
ないてすがるの?
スヌーピーに
あっさりしてて
さびしいよ
だまったままは
かなしいな
わらうのこらえて
おこりがお
あまのじゃくだね
マイ・ダーリン
私が疲れて帰ってきて表紙をひらいても
きみはため息をつかない
居住まいを正して
八百屋がトマトやごぼうやレタスを並べるように
活字を並べている
きみは愚痴を言わず
飽きることもなく
同じ話を
どこからでも
話してくれる
だがきみは 表紙を閉じると
話すのをやめてしまう
その表紙を誰かが開けてくれるのを
ひたすら待っているだけだ
この家にやって来たとき
きみは私のかたわらで
幸せそうにしていた
私の不幸と釣り合って
私に居場所を支えてくれた
私はきみに何ができただろう
愛を注いだことはあったが
旧い昔の恋人のように
思い出の中にしまい込み
たまに取り出してみるだけだった
そして
きみのページの間に
映画の半券をはさみ
どんよりと雲がたれ込めた日に
きみをテーブルの上に投げつけた
そのときもきみは
怒りもせず
ただ表紙を再びあけてくれるのを
待っているだけだった
くやしいときは
なみだかくして
おおきなこえで
わらうのさ
くるしいときは
そとにとびでて
だいすきなもの
にらむのさ
さびしいときは
あまえたことば
きいてもらおう
ののはなに