2013年12月17日火曜日

ほしいもの

いま食べるための
ひときれのパン
いま喉を潤すための水
いま伝えなければならないことを知らせるコトバ
それをささえる勇気

私はほしい
パンでなくてもいい
水でなくても
コトバでなくても
勇気さえなくてもいい

いま
私がここに生きていくために
必要なもの

それがあれば
宇宙からの問いを
問いのまま受け入れることの大事さを
忘れることはない

流れる水さえ
止めることができる
一枚の写真に収まってしまったように
宗教画の一部となってしまったように
私は風景の一部に
積極的に加担する

黄金比のポーズさえキメて

2013年12月16日月曜日

きょうのぼく

いきているかちがない
しんだほうがましなぼく
しぬかちもない
いきているほうが
なみかぜがたたないぼく

いのちをつながない
かくんやいえもつがない
たちきるぼく

わるいせけんには
だまされてばかり
いいひとをまもれない
むりょくなぼく

ごみのかちもない
にさんかたんそをはいしゅつするぼく

はやくつちとまじって
しょくぶつになりたい
あわれでみにくいぼく

しょくぱんをたべるとき
おいしいとかんじる
そのことをだれかに
プレゼントしたい
きょうのぼく

2013年12月15日日曜日

しにゆくひとは

きょうは、谷川俊太郎さんの誕生日。毎年それを祝い詩を書くのですが、
この詩は違います。


しにゆくひとは


しにゆくひとは
すんでいる
にごりすぎて
すみわたる

みなもになにかをなげいれても
なみはたたず
なにもかもをしまいこむだけ

おともきこえてこない
この世でノイズを聴きすぎたので
もう音はたたない
ただかすかな色彩が
ゆうぐれて
漂ってくる

しにゆくひとは
方向音痴になっていく
三半規管も不要であるから
回路を切ったのだろう

走馬灯のようなおもいでが
走馬灯のように回る
意味が重なってしつこくなっても
意味は無意味に行きついたので
自由だ

しにゆく人が
死にゆきつくまで
あとどのくらい時間があるのか
答える神様はいない

死にゆく人は
死にゆく人になりきり
世間をつんざいて
血潮で線を描く

道に喩えることができる
無粋な比喩は
苦いくすりのように
何かに効き目がある

とは
言えないだろう

2013年12月14日土曜日

奇跡というもの

奇跡は何食わぬ顔をして
あんパンを食べている
ところで
そのあんはうぐいす色であった

奇跡はハッとして
帽子に手をやった
鳥のフンかとおもいきや
なんと金貨だった

奇跡は青空に
軌跡を描いて
行くべき道を
教えてくれたこともある

奇跡なんか起きたことがない
と言っている人がいるが
なんと滑稽なのだろう
気づかないなんて


☆蛇足

(奇跡はあまりに
ありがたがられるので
ありふれた格好で
ドアががたっと開くの待っている

ドアが開いたら
やさしい日差しが
あるいは
微かな風邪が
頬に触れるだろう

そのとき・・・・)

2013年12月13日金曜日

ほしいものができたら

ほしいものができた
買うことはできない
ほしいもののことを
ずっと考えている
ほしいものは変わらずに
そこにある
私は少しずす変わっていっていて
ほしいものは
気配を変えない
落ち着いている
瞑想しているのだろうか
あるいは眠っているのか
私の瞼は重たくなってくる
私はその場所から姿を消す
夢のなかでは
知り合いの女が
腹から血を流してもがいている
近くにその元恋人が立って
真っ二つに割れたiPadで
病院を検索していたがその過程で
ほしいものをみつけ
そちらに夢中になってしまっているようだ
私は女に
大丈夫だからと言って
女のことを気遣いつつ
助けたいと願った
私はこの女をほしいと思うと同時に
ほしいものリストに追加した

2013年12月12日木曜日

あなたがこのよにうまれて

あなたがこのよにうまれて
よろこんだひとはいたが
かなしんだひとはいなかった

あなたがかなしみのなかにいるとき
くうきはバリアをつくって
あなたをまもろうとした

あなたがこのよにうまれて
やがてあなたはめをひらき
うつくしいものをみた
いいかおりをかいだ

それはあなただけのものだ
いま
まちにながれはじめたおんがくも
よくきいてみるといい
それは
あなたのためだけに
かなでられている
おんがくだ



わたしはおもっている

2013年12月11日水曜日

花をだいていた女の子

はなをだいていた
おんなのこ
いつのまにか
じぶんも
おはなになっていました
みんながくちぐちに
きれいだと
いいました

はなをだいていた
おんなのこ
かれていく
おはなも
だいじにしました
みんながくちぐちに
あわれだと
いいあいました

はなをだいていた
おんなのこ
じぶんは
きれいじゃないと
ないていました
みんなはくちをつぐんで
ひとことも
こえをかけませんでした

はなをだいていた
おんなのこ
かれしが
きれいだよと
まいにちきすをしました
みんなはくちぐちに
おにあいだと
いいました

はなをだいていた
おんなのこ
はなの
たねを
まきました
みんなはどんなはなが
さくのか
めをとじてかんがえました

2013年12月10日火曜日

だからとにかく

こそこそと
みちのはじをあるけば
どろみずにはまり
こえをたてずに
ちかづくとちゅうで
ころんでたおれ

みようとすれば
そこにはもうなく
さわったときには
やけどしたっけ

のぼっていくと
みちはなく
くだっていけば
がけからおちた

わたしはさいきんこんなぐあい
だからとにかく
だいじょうぶ

2013年12月9日月曜日

本物

コンサートが終わり
一つの家族が薄暗い道を歩いている
命のかたまり

音楽はしつけ糸
靴はクッション
まとったユニクロのウルトラライトダウンは
隠し事を欺く

足取りは恋心の成れの果て
夜の星空は
寒い風に散る涙を映した偽物

2013年12月8日日曜日

ゆらゆらゆれて

ゆらゆら
ゆれています
ふらふら
しています
うごくもののうえ
かわりゆくかたち
うまれてくるもの
きえさってゆくもの
ゆらゆら
ゆれています
ふらふら
しています

ゆらゆらゆれる
しんきろうのまどから
みわたします
せかいは
やはりゆらゆらゆれて
そこにたつ
ひとはふらふらしています

ふらふらしながら
どこかに
たよるものがないか
めをまわしてさがしています