2013年10月19日土曜日

こわがることもわすれて


すきなことをすれば
あっというまに
いやなことはすぎる
おもいだしたくないことは
ちいさくちいさくちぎって
たきびのなかになげいれちゃう
なにがもえたのかさえ
きっとわからなくなる

ぱぱままは
おもいでのたからばこがもう
いっぱいだけど
これからなにをいれようか
かんがえるのはたのしい
つらいひびは
てをつないできて
なかなかはなしてはくれないけど
いつかじぶんからてをはなせばいい

しあわせになっても
ばちはあたらない
ひとりじめしなければ
このよは
みんなのすみか
すきなことをやって
すきなひとをみつけて
すきなばしょにいればしあわせ

ぱーてぃーもわるくないね
ひとりで
よぞらのほしとかいわするのとおなじくらい
こわがっていないで
こわがることもわすれて
すきなことをしよう

2013年10月18日金曜日

不要なものを


不要なものを
捨てようとした時
近くで
〈私も不要でしょう〉
という声

見ると
目が合った

押し問答

分からない
不要 か
どうか

時が経つ
すると
また
どこからか
〈私も不要でしょう〉
という声

〈不要ですか〉

訊いてみた

答えない
目が訴える

〈きっと不要です〉

不要なものを
放置しているのは
全員

捨てられずにいると
いつまでも
不要なまま

信じてもらえない
ならず者

捨て場所は
ある

ここは広い宇宙だし
置き場所を
変えるだけ

不要なものが
手をつないで
行きたがっている

行かせてあげれば
君も
行ってもいいよ

2013年10月17日木曜日

薄暗がりにたたずむこころ

薄暗がりにたたずむこころ
こんなに重い

丸いパイプの
ペンキが剥げたところに
同じ色を塗り重ねると
すると
そこは新品よりもいい色になる

薄々気づいていたこと
だけれど世間はそんなことばかりだ

十重二十重に
塗り重ねられた空は
今は亡きあの映画監督が作った映画さながら
高い天井から吊り下げてある

私は足もとと頭上を交互に見る

約束ごとのように
背後にお化けたちの気配がするが
気づかなかったことにしておこう

よんどころない事情があるのは
人間ばかりではない

薄暗がりは
私のこころを隠そうとしているが
すでに
隠せない大きさになってしまっている
私のこころ

2013年10月16日水曜日

うつ病の友だち

うつ病の友だちは
うまくいってしまうことが怖い
やらない理由がみつからなくなるから

うつ病の友だちは
会いたくないときに人と会う
ふだんは会いたくても会えないから

うつ病の友だちは
うつ病のせいでますますうつ病になる
うつ病になったわけを知らないから

うつ病の友だちは
さちこってゆうんだほんとはね
だけど私はうつ病の友だちと呼んでいる

2013年10月15日火曜日

飛び降りる


飛び降りる
空から
空であった場所から
四角く光る場所を目がけて

飛び降りる
今いる場所から
空であった場所から
四角く光る場所を目がけて

飛び降りる
飛び降りると書き付けた「今」から
今いた場所から
空であった場所から
四角く光る場所を目がけて

一人で 飛び降りる
一人ではないと錯覚した「時」から
飛び降りると書き付けた「今」から
今いた場所から
空であった場所から

飛び降りる
一人で
まだない空白へ
空白という空へ
誰もまだいない
いったことのないなつかしい場所へ
一人ではないと錯覚した「時」から
飛び降りると書き付けた「今」から
今いた場所から
空であった場所から
四角く光る場所を目がけて
いつか空になるその場所へ

2013年10月14日月曜日

ここは誰の庭?

ここは誰の庭?

迷い込んでごめんなさい

でもいま

私はひとり

この庭を楽しんでいる

庭は私のために揺れて

歌って

包んでくれる

芝生に足を投げ出して

花の香りを深呼吸する

やがて日が暮れて

月の光が庭を照らし

泉が囁き続けている

遠くから声が聞こえてくるが

本当なのかわからない

ここは誰の庭?

迷い込んだまま

私はずっとここにいる

不思議なことに

人影はいつまでたっても見かけることがない

自分の影さえまぶたの淵まで探してみても

見つけることができない

2013年10月13日日曜日


無数ってありますか
無数ってどのくらい?
無数の…っていうとき
そこに無数はありますか
たくさんの より多いのでしょうね
いっぱいの よりもっといっぱいなのでしょうね

無数の
たくさんの
いっぱいの

全部合わせても足りないほどの…

…そのあとに入る単語は
無?
無限や永遠が
眺めている 無?

無と一はどちらが多いですか
一ってどのくらい?
全部と同じくらいですか
全部より少ないですか

2013年10月12日土曜日

人である人

橋から橋をわたり
島から島をわたる

人は道をゆき
鳥は空をゆき
魚は海をゆく

人は服をまとい
月はつきまとい
星は欲しがっている

欲は干上がっている
陽はまたのぼり
またはまた閉じられる

ランプの灯はすぐに消え
シマシマの服を囚人がまとい
月々のものをパパが運ぶ

山また山を越え
谷また谷を下り
島から島を巡る

人であれば
あられもない
ヒトガタ
である人

2013年10月11日金曜日

残り火がどこかで

自分では悪口いうくせに
ひとに言われるとすぐおこる
なにもないふるさとのまちに
きんいろの秋の日差しが降り注いでいます

いつかはなかえようとした約束も
私をかばってくれた優しい友だちも
もうどこかにいってしまいました
金木犀の香りが今年も
時のしおりを挟み入れてきます

私はどうやって生きて行けばいいのでしょうか
考える必要がなくなりました
西の屋根に日が沈んで
残り火がどこかでちろちろと燃えています

2013年10月10日木曜日

グレーのスーツを着た女


心だけもたれて
立っている
自分にもたれて
立っている

木のようだ
風に葉っぱがゆれる
繊毛が光を指揮している

片膝を曲げて
唇をきゅっと締めて
息を凝らしている
自分では気づかずに
いつからかも気づかずに

心だけもたれて
立っている
自分にもたれて
立っている