すきなことをすれば
あっというまに
いやなことはすぎる
おもいだしたくないことは
ちいさくちいさくちぎって
たきびのなかになげいれちゃう
なにがもえたのかさえ
きっとわからなくなる
ぱぱままは
おもいでのたからばこがもう
いっぱいだけど
これからなにをいれようか
かんがえるのはたのしい
つらいひびは
てをつないできて
なかなかはなしてはくれないけど
いつかじぶんからてをはなせばいい
しあわせになっても
ばちはあたらない
ひとりじめしなければ
このよは
みんなのすみか
すきなことをやって
すきなひとをみつけて
すきなばしょにいればしあわせ
ぱーてぃーもわるくないね
ひとりで
よぞらのほしとかいわするのとおなじくらい
こわがっていないで
こわがることもわすれて
すきなことをしよう
不要なものを
捨てようとした時
近くで
〈私も不要でしょう〉
という声
見ると
目が合った
押し問答
分からない
不要 か
どうか
時が経つ
すると
また
どこからか
〈私も不要でしょう〉
という声
〈不要ですか〉
訊いてみた
答えない
目が訴える
〈きっと不要です〉
不要なものを
放置しているのは
全員
捨てられずにいると
いつまでも
不要なまま
信じてもらえない
ならず者
捨て場所は
ある
ここは広い宇宙だし
置き場所を
変えるだけ
不要なものが
手をつないで
行きたがっている
行かせてあげれば
君も
行ってもいいよ
薄暗がりにたたずむこころ
こんなに重い
丸いパイプの
ペンキが剥げたところに
同じ色を塗り重ねると
すると
そこは新品よりもいい色になる
薄々気づいていたこと
だけれど世間はそんなことばかりだ
十重二十重に
塗り重ねられた空は
今は亡きあの映画監督が作った映画さながら
高い天井から吊り下げてある
私は足もとと頭上を交互に見る
約束ごとのように
背後にお化けたちの気配がするが
気づかなかったことにしておこう
よんどころない事情があるのは
人間ばかりではない
薄暗がりは
私のこころを隠そうとしているが
すでに
隠せない大きさになってしまっている
私のこころ
うつ病の友だちは
うまくいってしまうことが怖い
やらない理由がみつからなくなるから
うつ病の友だちは
会いたくないときに人と会う
ふだんは会いたくても会えないから
うつ病の友だちは
うつ病のせいでますますうつ病になる
うつ病になったわけを知らないから
うつ病の友だちは
さちこってゆうんだほんとはね
だけど私はうつ病の友だちと呼んでいる
飛び降りる
空から
空であった場所から
四角く光る場所を目がけて
飛び降りる
今いる場所から
空であった場所から
四角く光る場所を目がけて
飛び降りる
飛び降りると書き付けた「今」から
今いた場所から
空であった場所から
四角く光る場所を目がけて
一人で 飛び降りる
一人ではないと錯覚した「時」から
飛び降りると書き付けた「今」から
今いた場所から
空であった場所から
飛び降りる
一人で
まだない空白へ
空白という空へ
誰もまだいない
いったことのないなつかしい場所へ
一人ではないと錯覚した「時」から
飛び降りると書き付けた「今」から
今いた場所から
空であった場所から
四角く光る場所を目がけて
いつか空になるその場所へ
ここは誰の庭?
迷い込んでごめんなさい
でもいま
私はひとり
この庭を楽しんでいる
庭は私のために揺れて
歌って
包んでくれる
芝生に足を投げ出して
花の香りを深呼吸する
やがて日が暮れて
月の光が庭を照らし
泉が囁き続けている
遠くから声が聞こえてくるが
本当なのかわからない
ここは誰の庭?
迷い込んだまま
私はずっとここにいる
不思議なことに
人影はいつまでたっても見かけることがない
自分の影さえまぶたの淵まで探してみても
見つけることができない
無数ってありますか
無数ってどのくらい?
無数の…っていうとき
そこに無数はありますか
たくさんの より多いのでしょうね
いっぱいの よりもっといっぱいなのでしょうね
無数の
たくさんの
いっぱいの
全部合わせても足りないほどの…
…そのあとに入る単語は
無?
無限や永遠が
眺めている 無?
無と一はどちらが多いですか
一ってどのくらい?
全部と同じくらいですか
全部より少ないですか
橋から橋をわたり
島から島をわたる
人は道をゆき
鳥は空をゆき
魚は海をゆく
人は服をまとい
月はつきまとい
星は欲しがっている
欲は干上がっている
陽はまたのぼり
またはまた閉じられる
ランプの灯はすぐに消え
シマシマの服を囚人がまとい
月々のものをパパが運ぶ
山また山を越え
谷また谷を下り
島から島を巡る
人であれば
あられもない
ヒトガタ
である人
自分では悪口いうくせに
ひとに言われるとすぐおこる
なにもないふるさとのまちに
きんいろの秋の日差しが降り注いでいます
いつかはなかえようとした約束も
私をかばってくれた優しい友だちも
もうどこかにいってしまいました
金木犀の香りが今年も
時のしおりを挟み入れてきます
私はどうやって生きて行けばいいのでしょうか
考える必要がなくなりました
西の屋根に日が沈んで
残り火がどこかでちろちろと燃えています
心だけもたれて
立っている
自分にもたれて
立っている
木のようだ
風に葉っぱがゆれる
繊毛が光を指揮している
片膝を曲げて
唇をきゅっと締めて
息を凝らしている
自分では気づかずに
いつからかも気づかずに
心だけもたれて
立っている
自分にもたれて
立っている