3人の女性が
橋の上に立っている
こんもりとした常緑樹の緑が向こうから見守っている
そこに水が流れているのか
私の立つ場所からは見ることができない
3人の女性は
橋の上から橋の向こうを見ている
見ながら何かをひそひそと話している
楽しい話ではないだろう
誰かがどうにかなってしまった話だろうか
川の流れを見ながら
この世に生きる辛さを嘆いているのだろうか
3人の女性は
若い娘と友人とその母だろうか
それとも娘と母と老婆だろうか
後ろ姿しか見えないので判別することができない
いつからそこに立っているのだろう
背の低い古びた街並はどんよりと暮れはじめ
橋の上を行き交う人も
やがて夕闇に呑まれるだろう
3人の女性は
その橋の上でかつて見知らぬ男が発狂して
おおきな荷物を川に投げ入れたことを
憶えているだろう
それはこんな季節のこんな時間帯だった
3人の女性は
疑いをもちはじめている
ひょっとしたら存在するのは自分だけで
あとの2人は誰かの幻想なのではないかと
私たちは外からはただ1人にしか
見えないのではないのかと
そして
やがて見ている私のことに気づく
私はこの場を立ち去らなければならない
私は立ち入ってはいけないのだ
3人のいる世界に入ってはいけないのだ
だが3人の女性は
私に近づいてくる
その躯だけを置き去りにして
あの橋の上の欄干から手を離して
私の中に