赤ちゃんをつくりましょう
私たちの赤ちゃん
聖なる夜に
命を呼びましょう
あらゆる穢れを
星の光で浄めて
奇跡のスパークを
閉じ込めましょう
過去と未来の時の流れを
あの 霧に霞むあたりで
併せましょう
世間の雑音を
音楽に変えます
魔窟に棲む妖怪たちも
今夜は祝福のため
静かにしているでしょう
雲の上に溜まった
神の涙は
温かい雨に変わります
あなたは
白いシーツの上で
輝いています
花の香りを放ち
畝っています
その曲線のぜんまいが勢いよく拡がり
私はそのバネの躍動ね中に
深く潜ってゆきます
朝は
あんなに遠かったのに
ガラス瓶のように
もう
窓辺に置いてあります
いつの日にかみた
あの花束を抱えて
あなたと出会った時のように
何もしらない顔をして
2013年6月11日火曜日
2013年6月10日月曜日
やぶか
やぶかとんできて
はりさした
やぶかはりさして
ちをすった
やぶかちをすって
ちょっとよっぱらった
やぶかちょっとよっぱらって
めがまわり
わたしはたいておとした
やぶかはたかれてちをだした
ちをだしながらじめんにおちた
やぶかやぶかだとじぶんではしらぬまま
しんでいった
しんだことさえきづかずに
やぶかいきていたことさえきづかぬに
2013年6月9日日曜日
詩ではないけれど
母が手術を受けることになった
成功しますように
痛くありませんように
前よりも元気になりますように
神様の前に立つ時
ふと思い出した時
いままで
強い母としか思っていなかったその人を
初めて弱いところもある人なのだと気づいた
私は私の方が弱い人間だと
ずっと思ってきた
だから
いままで
照れてばかりで
いたわったことはなかった
その母が
病気に挑もうとしている
細くなってしまった脚に力を込めて
恐怖に耐えることもあるのだろうか
麻酔がうまく効きますように
目覚めたら
やさしい私 が
そこにいられますように
そこにいられますように
2013年6月8日土曜日
空海という猫
初めて「空海」という名の猫を見たのは
昨日のこと
古いアルバムに書き込まれていたその名の上に
行儀よく座って
こちらを見ている
写真だから
動きも
鳴きもしない
永遠に春の長閑な陽の下で
白黒写真のまま
そこに座っているのだろう
今はもう亡いその人から
空海という猫がいたことを聴かされたのは小学生の頃
ある日気づくと
いつの間にかその猫はいなくなってしまっていたという
1951 と銀文字の年号が刻まれた
そのアルバムの中で
そのアルバムの中で
私に見つけられるのを待っていたのか
いつの間にかいなくなってしまったひとが
今はもうない家の奥にひっそりと仕舞っていた
その布貼りのアルバムの中で
2013年6月7日金曜日
アイディアなんて
ある日、アイディアを出すことに疲れて彼は言った
ここ数日
いくつものすばらしいアイディアが浮かんではきたけれど
それらは彼が記憶し あるいは さらにふくらまそうとする前に
彼方へと消えていった 跡形もなく
アイディアは浮かんでは消えてゆくものなのだ
もう彼はそれを追いかけない
そして
もう
アイディアの気配さえ
彼は無視をするのだった
梅雨と真夏の間の季節に
どんよりした空一面の雲の真ん中に
太陽が豆電球のように見えているが
あのちっぽけな太陽のおかげで広い地球上はこんなに明るい
そんなことが実際にあるのだ
関係ないことかもしれないが
彼はお腹を空かせてそんなことを考えていた
そしてカレーでも食べようかと思っている
気をつけないと
彼は週に10遍もカレーを食べてしまう
マルチタスクの脳みそのデスクトップは案外狭く
そのせいで
いろんなことを同時には考えられない
2013年6月6日木曜日
願い事
祈らないと
祈りは通じる
だから
祈らなくていい
鈴蘭の鈴を鳴らして
願をかけているのは
祈ることを知らない
雨の粒
きのうやんだ雨は
もうどこにいるのか分からないが
願い事は
天に届いたのだろうか
2013年6月5日水曜日
女の時間
それは霊障(れいしょう)ですわ と
煤(すす)けた女が神妙な顔で言った
最も苦手とするタイプであることが
相手にも悟られていることだろう
その明白なバレバレの状態が
なんともはしたなく感じられ
彼は冷笑して後ずさりするしかなかった
「霊障に冷笑か」
笑えない駄洒落を彼は口ごもり
煤けた女のまえで
成り行きを見守るしかなかった
タイミングよく
鳶が ピヨールルーン
と啼いて合いの手を入れた
今始まったばかりの
この対話
彼にとっての最も長い日となるだろう
女との出会いにピンを売って
黄色い糸で同心円を描く
私の時間
それはまた不幸にも女の時間でもあるのだ
2013年6月4日火曜日
冷たい何かを舐めながら
オフィスには半分ほどの従業員が残っていた
きょうはベースの照明を点けない日なので
夕日のオレンジ色の強い光線が開け放たれたブラインドの向こうから
遠慮なく差し込み
フロアは雑然とした影絵の世界となっている
白い薄手のブラウスを着た女子社員Kの胸は
ブラジャーのレース模様のふくらみまで
透かして夕日と反対側に影まで作っている
そわそわした男子社員は横目でそれを盗み見て
ごくりと喉の音を立てた
セクションの長の女性は
高学歴の才媛だがまっとうな恋人が作れず
妻子持ちの取締役部長の影の女を務めている
それは公然の秘密というのだと誰かから聞いたが
彼女自身はもう誰かに知られても仕方ないと思っている
新卒で入社し4年目を迎えたR嬢は
この4年間で5人の男子社員と関係を持ったが
喫煙室でそのうちの何人かと偶然一緒になると
その度に
何人もの男に求められてセックスする妄想を巡らせ
秘かにエクスタシーを覚えている
夕日はやがてくれてゆき
それぞれの机の上にデスクライトのLEDの冷たい光と
モニターの画面が輝き始める
私にはそれが不吉なものに見えてしまう
例えば死者たちをあやつり
この世を滅ぼす指令を映し出す光に
あるいは
世の人の心をかき乱し野獣へと変身させる光に
私は冷たい滑らかな何かを舐めながら
舌先でそう思う
2013年6月3日月曜日
この世に「奇跡」というものがあることを
忘れて暮らしていた
いや
たまに机の引き出しの奥から
いつか好きな人に貰った大事なプレゼントを取り出すように
そのことを思ってみたりしたことはあったけれど
だか
奇跡は
自分の日常とは無関係だと
いつの間にか思い込んでいた
そうするしかなかったから
私には過酷な暮らしの日々が訪れては消えて行ったから
そこには奇跡は気配さえ現わさなかったから
しかしその日
ハンバーガー屋で安いコーヒーを飲みながら
久しぶりに普段考えないことを考え
普段思わないことを思い描いている自分にハッと気づくと
隣にもう忘れていたリアルな奇跡の顔があった
奇跡は 久しぶり! と言わんばかりに私を見ていた
私は焦り奇跡のことを思い出そうとしたが
脳みそをフル回転すると同時に
奇跡のことを思い出した
忘れて暮らしていた
いや
たまに机の引き出しの奥から
いつか好きな人に貰った大事なプレゼントを取り出すように
そのことを思ってみたりしたことはあったけれど
だか
奇跡は
自分の日常とは無関係だと
いつの間にか思い込んでいた
そうするしかなかったから
私には過酷な暮らしの日々が訪れては消えて行ったから
そこには奇跡は気配さえ現わさなかったから
しかしその日
ハンバーガー屋で安いコーヒーを飲みながら
久しぶりに普段考えないことを考え
普段思わないことを思い描いている自分にハッと気づくと
隣にもう忘れていたリアルな奇跡の顔があった
奇跡は 久しぶり! と言わんばかりに私を見ていた
私は焦り奇跡のことを思い出そうとしたが
脳みそをフル回転すると同時に
奇跡のことを思い出した
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