2013年1月31日木曜日

さわやかなひとが

さわやかなひとが
さわやかなうたをうたう
さわやかなえがおと
さわやかなこえで

さわやかになりたいひとは
さわやかになれます

百人一首

あと百回死ぬよ
あと20時間分死ぬ
あと百回死ぬ
あと一生分を百回死ぬ
足りないときは
足を切ったところに下駄を履かせて
飛び降り自殺する
だから死ぬ
あと百回死ぬ
一年分以上
人並以上百人分以上
百人一首読みながら
帰らぬ人となる

黒板消しで消されるんだ

百回死ぬよ
百回死ぬと言うんだ
99回済ましたよ
あと一回で終わる
終わると消去されるんだ
黒板消しで消されるんだ

ぼくは首吊って苦しい

ぼくは首吊って苦しい
あの人は
足攣って目を覚ます
ぼくは死に逃避して楽になり
あの人は逃避せずに
頭皮を磨く

ぼくは息をするのを忘れ
あの人は嫌な自分を圧縮する

ぼくの夜は一人ぼっち
あの人も夜は一人ぼっち

傍観者の谷

彼女の決め台詞は
用のない人はなにもわからないでしょ

彼女はあまり自分を振り返らない
目の前に有るものにいつも興味がある

仲のいい友だちたちが困り顔で見ているのは
彼女はオーラを発していて
どう手をつけららいいかわからないからだ
彼女自身にもそうだった

だからいつでも
あの辺りは傍観者だらけだと
噂されている

2013年1月30日水曜日

おやすみ カリーサーモン

僕はカリーサーモン
カレーと鮭が大好きだから
友だちはそう呼ぶ

面白いあだ名だから
僕も自分をカリーサーモンと呼ぶ

ああ
なんてカレーはおいしいんだ
サーモンはありがたいんだ
一緒に食べることは少ないが
一緒に食べてもいいだろう

一年365日
毎日どちらかを食べていたい
味付けやトッピングは変化をつけて
いつも買い置きもして
カノジョができたら一緒に好きになって
この道を究めるんだ

僕はカリーサーモン
でも
食べられるほうも
カレーとサーモン
そのうち僕が食べられちゃってもいいかもね

きょうもサーモン色に日が暮れて
カレー色のパジャマで眠る
明日のことを夢見ながら

おやすみ
カリーサーモン

2013年1月29日火曜日

歌うように

まっすぐな
あの道を
駆け上がって
空の向こう

聞いている
母の声
歌うように
リズム合わせ

話している
だれかさん
同じ話
飽きないで

咲いている
あかい花
いつか見た
あの笑顔

咲いている
黄色い花
ふる里の
あの笑顔

2013年1月28日月曜日

この町で

小さなおばあちゃん
あめ玉くれた
お礼だっ て照れながら
ポケットをまさぐって
あめ玉を
二つ 僕にくれた

ありがとう
おばあちゃん
いつかまた会えるかな
懐かしいこの町で

2013年1月27日日曜日

一枚の花びらを

一枚の花びらを
日差しに透かしてみる
それはいつかあなたと見た
朝焼けの色

一枚の花びらを
指先に置いてみる
それは生まれたばかりのあの子の
こわれそうな指先

一枚の花びらを
唇に当ててみる
それは小さかった私の
あこがれの香り

一枚の花びらを
あの人にさしだしてみる
それは言えなかったことば
伝えたかった言葉

2013年1月26日土曜日

辞めたいのなら辞めていいのだよ

辞めたいのなら辞めていいのだよ
カウンターでトロピカルドリンクを出すこの会社は
たまにあたたかさがなくなる
カウンターは会社の奥にあって昔そこはカフェだった
竹口商店といったのだ

今君と面接をしているこの場所は交番だったんだよ

引き止められると思っていた君が
不意をつかれている間に
社長はもう出て行ってしまった

会社では勝手気ままなプロジェクトがたくさん動いている
誰が何をやっているのか把握している者はいないんじゃないかな

社長が路上で伊豆に行くという社員たちを見送っている時
小さな車に乗った
谷川俊太郎が手で顔を隠しながらやってきて
その様子を見ている
誰かに用があるのだろう

社長が7つある潰れた段ボールの中から
詩人に渡すべきものはないかと
探しているが見つかる気配はない

夜空を流れる雲の下で
人々は玉の上に乗っていることを忘れて
器用な技を競ううとしている

既に落ちてあきらめかけた人たちは
どこかに寄り集まって愚痴を交わしている

いつ死んでも誰かが棺桶を用意してくれるだろう





*この詩は作者がみずから、生前、音声認識アプリによって語り下ろし、記録したものです。