2012年10月20日土曜日

・・・・・・伝えたい

「ありがとう」ばかりではなく
「さよなら」と伝えてたい

霜の降る月の夜に
狐がすすきの間から
顔を出し
きょとんとしている
その時

「さよなら」ばかりではなく
「もう会えません」と伝えたい

円型の大地に
波打ちながら風が渡っていく
吹き違い
混じりあいつつ
地にはりついて

「もうあえません」ばかりではなく
「幸せを祈っています」と伝えたい

やがて雪が振り
この辺りは一面真っ白になる
その上を
足跡が縫っていく

「幸せを祈っています」ばかりではなく
「・・・・・・・・」と伝えたい

黒板に書いた文字を消したら
教室を出て行きましょう
また明日もやってきます
その時に気持ちがいいから

2012年10月19日金曜日

ひとりでに

ひとりでに
影が窓から入ってきて
パンを食べている

やりきれぬ
思いを食べているのか
しくしくと泣いている

ひとりでに
ドアが開いて
今度は主人が帰ってきた

見たところ
不漁だったらしく
ゴキゲンが斜め

やりきれぬ
悩み事は持ち越さない主義なので
ストーブに薪をくべて
焼いてしまう

こんがりと
焼けたパンを
木の皿にのせて
テーブルの上に置く

見たところ
焦げ目を隠して
積み重ねて
置いてある

ひとりでに
涙が出てきて
頬に線ができる

そういえば
去年も
おととしも
こんなことがあった

こんがりと
焼けたパンは
影が全部食べてしまい
もう残っていない

ひとりでに
眠ってしまった主人は
いつまた起きるのか
わからない

見たところ
日が暮れて
薄暗い窓の外に
白い月が出ている

やりきれぬ
やり場のない思いは
そういえば
見たところ
ひとりでに
どこかにいってしまって
帰ってこない

2012年10月18日木曜日

廃人のように暮らしているよ
僕は元気です

それも 関係ありません

秋の夜が 更けて
囁きかけて きます
遠くから 近くにやってきます
気が 遠くなるほどの
距離を 走って

あの夏に 叶えられなかった
願いごとの 理由が
今になって
はっきりと 分かって きます

日照り続きの 道に
雨が しみ込み

さまざまな 疑問が
答えを得られないまま
報われて いきます

割り箸の うえに
カマキリが 卵を産みます

公園の 向こうで
友達の 小さな 家が
火事になって 燃えています

季節は 寒くても 暑くても
関係 ありません
すぐに 過ぎていって しまうから

ここに 残っている ものは
過ぎゆく ことが できなくて
腐って 滅びることも できなくて
ただ 立ったり 座ったり 横になったりを
繰り返しています

新月から 2日目の 月が
雲の影から
覗こうとしていますが
それも 関係ありません

犬が 吠えていますが
あの犬は
きのう 友達の家に
おしっこを 引っ掛けていた 犬です

2012年10月17日水曜日

ちゃんと苦労する詩

工藤ちゃんが
苦労してる
工藤ナオちゃんが
尚 ちゃんと 苦労してる
工藤ナオちゃんの姉が
尚 ちゃんと 苦労してる やーねー
工藤ナオちゃんの姉が
屋根が漏って ちゃんと 苦労してる
やーねー もってのほか だね!
屋根が  たわんで  漏って 苦労してる
工藤ナオちゃんの姉が
屋根が たわんで 漏って 尚 ちゃんと苦労している 
やーねー やな 屋根やね  あかんで!
工藤ナオちゃんの 姉さん
尚 ちゃんと 苦労する 姉やね  もってのほか だね! 
屋根が 漏って やーねー やーねー
もってのほか だね! 
工藤ナオ ちゃん
直さんと ちゃんと 屋根 直さんと  あかんで!

2012年10月16日火曜日

難しい話

お腹が空いたら
私にごちそうしてくれますか
なんの義理もないと
あなたは思っているのでしょう
けれど
もしかしたら
義理はあったかもしれませんよ
前世とかに・・・
私にもよく分らないけれど
そういうことにして
何か私に食べさせませんか

「すきなものを
すきなだけどうぞ」
などと言って
大盤振る舞いしなくてもいいから
ほどほどに気前よく
食べさせませんか
そうしたら
あしたから
あなたと私
仲良くなるかもしれません
私はあなたにお礼を言います

だから
どうですか
私に何か
食べさせませんか
とりあえず
お茶を濁さず
答えてください

あなたがいつも食べるために
使っているお金を
少しだけ私に振り向ければ
それができるのです

どうでしょうか
無理な相談でしょうか
あなたにとっては
難しい話なのでしょうか

おなかがすくのがいちばんこまる

おなかがすくのがいちばんこまる
なにかをたべなきゃならないからね
たべたくないときどうしたらいい?
たべずにしぬのをまつべきなのか
たべたくなるまでまつべきなのか
おなかがすいててわからない

2012年10月15日月曜日

23時のラストオーダー

一人で入った
一人きりの不二家レストランの
美味しくないパフェは
何も知らなかったころの
血の混じった涙の味
塩素の香りのカットフルーツ
湿ったカビのようなシフォンケーキ
苦味だけが後味にのこるオレンジ
それを救うのは
無造作に丸くくり抜かれた小さなバニラアイス
喉と疲れた脳をほぐして
750円と刻印される
コンクリートで整備された都会の川のほとり
24時の閉店まで
どんな明日を描こうか

2012年10月14日日曜日

ろんろんろろろん

ろんろんろんろん
ろんろんろん
ろんろんろんろん

誰か いる?

ろんろんろんろん
ろんろんろん
ろんろんろろろん

はい います

ろんろんろんろん
ろんろろろ
ろろろろろんろろ

誰ですか

ろんろろろんろん
ろろんろろん
ろろろろろろろ

ももんがです




あなたはネコが
すきなのね

あなたのまわり
ネコばかり
足の踏み場も
ネコばかり
肩を持つのね
ネコばかり
重さをはかる
ネコばかり
この場を借りて
ネコばかり
ネコの上にも
ネコばかり
ネコの下にも
ネコばかり
苦しいときの
ネコばかり
ネス湖にいるのも
ネコばかり
寝込んでいるのも
ネコばかり

あなたはネコが
すきなのね