2012年10月4日木曜日

わたしはおまけ

わたしはおまけ
おとくなひとよ
ねだんはないし
すててもへいき
がっかりしても
そのときかぎり
じゃまにならずに
くっついている
ときたましゅやく
わきやくなのに
だいじにされる
だいじなゆめを
かかえていれば
ゆめをほっする
ひとがはぐする
たのしいよるよ
とわにつづけよ
だけどつづかぬ
ゆめあささめる

2012年10月3日水曜日

さよならは短いことばで

長い長いあなたとの
付き合いだったけれど
さよならは短いことばで
すませましょう

気持ちは変わらなくても
別れのときは
突然やってきます
それを望んでいなくても

自分のなかに
さよならしたい理由を
見つけようとしましたが
それさえ
なんだかとても
いいものに見えてきてしまうのは
なぜでしょう

きのうの大きくて明るい月は
きょうは雨雲に覆われて
あなたと私の心を隠しています

最後には抱きしめます
それは
無粋なことに違いないけれど
あなたもそれをきっと待っていると
私には信じられたから

あなたの胸が私の胸と交感して
鼓動を打ち
別れの時が来ます

もう会うことはありません
会いたくても
会うことはできません

長い長い付き合いでした

生きてきた時間よりも ずっと

2012年10月2日火曜日

安らぎを見つけようとしても

私には花を手向ける相手がいない
手向けるべき花束もこの世にはない
あの人はもうどこかへ行ってしまった

暗い森を照らす光は
もう月と星の光しか夜は残っていない
蝋燭の火も
街あかりもみんな消えてしまった

子鹿の鳴く声も
泉の湧き出る場所も
あの軽快な足音もどこにも残っていない

傍らに人は座っているけれど
尋ねてみても記憶の中に
地図も道標もなく
そこには多くの人々や生き物たちが
彷徨い迷っている

遠くの陽炎のゆらゆらの中に
毎日やってくる日常の安らぎを見つけようとしても
それは粒子となって微かにキラキラ光るだけで
海底の砂浜に沈んでいく

もう帰ることはできないのだ
立ちどまるできないように
進むこともできないのだ

2012年10月1日月曜日

木立の間の日だまりを

木立の間の日だまりを
ぼくに貸してくれませんか
小さな椅子を置いて
愛する人と
話をしたいから

風がめぐり
草花が香り
木の葉が見下ろす

人がやっと
寝転べるほどの
その場所を
太古からあったような
その場所を
貸してくれませんか

日がくれて
木々の天井の隙間から
かすかな光の星が
一つだけ見える
その場所を

2012年9月30日日曜日

みかこさん と いまの君

思い出コレクターの
みかこさんは
美しい過去が好き

どんな過去も思い出も
磨きあげて
大事なところは念入りにブラシをかけ
余計な凸凹は取り去って
飾り棚に並べます

並べるときに
関連する思い出も調べて
書き添えることもあります

そして
時々取り出しては
自分だけで観賞して
うっとりしています

友だちや
これから仲良くしたい人が現れると
みかこさんは張り切って
思い出を見せながら話をします。
その話を
誰もが面白がるものだから
みかこさんは得意になります
得意になり過ぎて本まで書いてしまいました

そんな
みかこさんの部屋は
思い出でいっぱいです

思い出だけでいっぱいなので
まだ思い出にならないものたちは
入ることができません

みかこさんは
いきのいい現在のことは
いまの君に任せっきり
いまの君は
みかこさんのパートナーです

片付けが上手で
考えることが苦手です
いまの君は
不要なものはとっておかず
磨いたり繕ったりせず
すぐに捨ててしまいます

みかこさんとは反対の性格なので
きっと仲良くできるのです

2012年9月29日土曜日

やっぱりきょうも

しょんぼりしてる
とんぼがとまる
しんみりしてる
しみじみおもう
よかれとおもい
おもいはうらに
すましてみても
すまされないし
ぐっすりねれば
ねるのはくすり
やっぱりきょうも
はったりばかり

2012年9月28日金曜日

そして秋

去って行く夏と
入れ替わりにやってくる秋に
挨拶をするために
詩を書かなければならない

しかし夏と秋の輪郭は
意外とぼんやりしていて
一部は混ざり合っているので
明確に分けて挨拶をするのは困難だ

夏は半ズボンの少年で
秋は少し年上の少女だ
ちなみに
冬は未婚の母で
春は幼女だ

夏くん
さようなら
よくやってくれた
おかげでたくさん汗をかいた
叶わなかった恋や
挫折した冒険は来年に持ち越すよ
夏くんには関係ないだろうけど
秋さん
聞こえたと思うけど
そんなわけで
傷跡が染みる
美しい紅葉でなぐさめておくれ
未婚のお母さんがたまに吐く冷たい息で
凍えるまえに
美味しい収穫物をいっぱい食べさせておくれ
セピア色の写真を眺めるより
いますぐ写真を撮るように
アドバイスをしておくれよ

夏くん
秋さん
二人が愛し合いながらも結ばれないことを
私はまえからしっているよ

だから
あの涙に滲んだような
オレンジ色の夕日を
きょうは長めに
灯していてくれないか

◇質問募集◇ 質問ごっこ

撮影 深堀瑞穂
詩人の質問箱
詩人に訊いてみたいことを、私が代わりにお答えします。他人の意見が参考になることがありますよね。詩人の意見は、役に立つかもしれません。・・・という趣旨で、あの有名な「谷川俊太郎質問箱」(ほぼ日)とは一味(だいぶ)違うものをやりたいと思います。この企画は、ある人から強く勧められてはじめますが、自分にとっては、自分が一番苦手なするところの「説明力」を鍛えるこになるだろうと期待しています。自分のぼんやりしたアイディアを他人様にちゃんと伝えるというのはとてもむずかしいことだと思うのです。しかもそれが、人のさまのためになれば・・・ということで、挑戦してみようと思います。

http://blog.livedoor.jp/matsuzaky/

2012年9月27日木曜日

流れる星が見られるかもしれない

小雨がふっている
高原に敷かれた鉄路を
列車が走っている
秋の始めのこの時期は
草木が色づき始めるために
緑色や青色系の鮮やかさを
放出してしまおうとしているので
空気は強く香っている
都市にはないいい香りだ
だがその香りは彼にとっては
無意味で意識されていない
昼下がりというにはしっとりと湿った明るい午後だ
視点は移動しているので
定まっていない
時に繰り返している感覚もある
空から眺めているイメージも混ざる

彼は列車のことはよく知らない
他動的に乗っているから
切符は拾ったものだ
目的地は知らずに乗っている
いつか来たことがあるという記憶に導かれてはいるが
何かの力に操られたのだ
だから
ただ乗って時を過ごし思考を巡らせている

まわりの皆の動きに流されて
駅に降りると
降車客たちが思い思いに散らばっていく様子が
綺麗だった
それを立ち止まって見ていた
雨は降っていない
空は晴れ夕暮れ時がやってきた
彼はどこに歩いて行くのだろう
夜は流れる星が見られるかもしれない

2012年9月26日水曜日

さわやかな朝

さわやかな朝だった
やるべきことは
すべてし終えた
それもあってさわやかな
朝だった