2012年9月18日火曜日

あれ以上の味

小学生のころ
リゾートホテルの居酒屋のカウンターで
冷やし中華を注文した
ふやけた麺に干からびた錦糸卵
甘酸っぱいうす味のぬるいスープ
まずさに驚いて
食べなくていいか   と訊いた

また別の日
客船のプールサイドバーのカウンターで
チーズ&クラッカーを注文した
なぜ値段がこんなに高いのか
疑問に思いながら食べた
いままで食べたことのない美味しさに
感動して
お代わりしていいか   訊いた

あれから長い月日が立って
あの人はもういない
あれ以上の味にもまた
出会ってないのだ

2012年9月17日月曜日

愛する人を愛し続ける

むずかしいことは分からないが
見捨てられたことは分かった

見捨てて また 救いに来て
でもやっぱり 見捨てて
見捨てないふりをして
見捨てる

忘れた頃に
また 救ってやるぞと 思っているらしいが
そう言ってくるが
救いには来ない
救いにきた例(ためし)はなく
来るのは 救いではなく
伝令そして
 
何らかの「処置」や「措置」

だから
救われると 思っていてはいけない
救って貰う必要はない
自立しているのは手前のほうだから
相手を見越して
受け取れるものだけは きちんと受け取って
お礼は言わず
なんの感情も表す必要はない

学校で教えてくれたことは
みんな嘘っぱちだ
お礼など言ってはいけない
無償の愛にだけ感謝すれば良い

むずかしいことは分からないが
簡単なことは分かる
沢山の人が見捨てられた
見捨てる側は自分さえ見捨てているのだから
もともと見捨てる価値さえない
だから何も期待してはならない
期待しなくていい

だから
見捨てられた人は一人ひとり
自分の場所にたって
見捨てた者のことなど
忘れてしまえばいい
もともとなかったように
思い出さなくていい
心の平静を取り戻して
自然と一体になればいい
つまらないことから開放されて
愛する私と共に居ればいい
私たちに救いは必要ない
必要なのは
愛する人を愛し続けること
その気持ちを持ち続けること

2012年9月16日日曜日

今はない野原に向かって

木々に手が届きそう

列車の窓から
手を伸ばしてみる
電柱や電線はない
ディーゼルで動いているから

口を開けると
空気が口に飛び込んでくる
ついでに
胸の奥まで吸い込んだ

いい空気だ

雨上がりの線路が
楽しそうに鳴っている

荷物は少なめ
でも
お弁当は持っている

人目を気にして車内を見たら
楽しそうな人と眼があった

皆んな楽しそう
そういうことにしておこう

カタッ カタッ 歯切れのよい 
いい音を立てて
列車は走る

もうすぐ夏は終わるけれど
心のなかでは
夏が始まろうとしている

白い帽子でも買って
今はもう行くことができない野原に向かって
ひとりで駆けていこう

おととし 2010年12月23日木曜日に書いたもの


眼差しを留めるもの

誰も自分のことなど解ってくれない
そんな眼差しが
道端の枯葉を見つめていた

枯葉は思った
木に茂っていたころ
同じ瞳がわたしを見上げていた と

雨が降り
風が吹いて
星が綺麗な夜に
枯葉は木から落ちた

枯葉が居なくなったところに
小さな空ができた

その空は
孤独な眼差しに満たされるのを
待って木に引っかかっている

2012年9月15日土曜日

学校に行きたくなくても

学校に行きたくなくても

行かなくては という気持ちが強かったせいで
行きたくない気持ちは匿れてしまい見えなかった

そんな時
どんな気持ちで学校に行っていたのか
鉄面皮のような心で歩いていったのか

何かの気持ちに別の気持ちが匿れてしまい見えないこと

眠りながら考え事をしている時
たとえば
思いが上へと昇っていき
心が放置されてしまう時
体と心は思いが戻ってくるのを待っているしかない

カルカヤという草が紅く色づいているのを
Facebookの画面で見たら
秋の訪れを教えてくれたけれど
Facebookの画面の光の点は先生か季節の伝道師なのだろうか

自分の中のセンサーも季節の移り変わりを感じていたけれど
その画面に多くの人が秋の来訪の話題を書き込んでいた

ドアを叩く音がした
誰かが拳で叩いているのだろう
その音が響いている
その音は心もノックする
心は砕けてしまわないか
それとも心もドアをあけるのか

2012年9月14日金曜日

大切な人

近くにいる
大切な人を
大切にしようと
思っているんだね

思っている
だけなんだね

2012年9月13日木曜日

秋の小川

詩人の傍らを静かに時間が流れている
それは本流ではなく支流だ
秋の小川だ

あの有名な
春の小川という唄が
この秋の小川を作りだしたことを
詩人は知っている
知ってはいるが
そのことについては黙っている
そう決めている
それは詩の世界の裏事情だから

詩人は黙って
秋の小川の音を聴き
冬の凍った小川のことを考えている

今年
夏の小川は渇水のため
川は干からびていたので
来年の夏の小川のことも本当は気になり始めている

詩人は自分の打った文字を見ながらいつも想う
詩の一行は
長くなると川になってしまう

川になると
水滴に戻るのは一苦労だ
雲になるよりも難しいのではないか

一日中
ぼんやり景色を眺めながら
詩人は成り行きのことを考える
私はどこに流され何に
還ってゆくのか

秋の小川はきっと
ささやきかけて
教えてくれるのではないか
言葉ではない方法で

2012年9月12日水曜日

頭の中に充満しているもの

頭の中に
何かが充満し
逃げ場を探している

皆んながそのことに
かかりっきりなので
いろんなことが手薄になる

トーストを食べている途中で
ハチミツを取りに行ったまま
戻らないあの人は
いま
電車に揺られて
乗り換えるのも忘れて
とうとうどこにも辿りつけなかった

頭の中に充満しているものを
順番に退出させ
その行列を見ていたら
眠っていることも忘れて
用事のある先に電話をしていた

相手は驚いて
私は誰かを尋ねていた

2012年9月11日火曜日

スキマナクウメテシマワナイデ

スキマナク ウメテシマワナイデ
クウキ ガ ナクナッテシマッテ
イキグルシイ デス

イキガデキナイト
アナタガウマレタ コノ キセツノ
ハナノカオリ モ
アメノアトノクウキノカオリモ
カゼガハコンデクル トオイウミノカオリモ
ムネニ スイコムコトガデキマセン

ムネハ イイカオリヲ
モトメテイマス
ワタシノココロトオナジデス

アナタガ イナクナッテ
モウ イチネンイジョウガ タチマシタ
ワタシニトッテ トテモトテモ ナガイジカンガ
スギマシタ

コレカラ ナンドモ キセツハヤッテキテ
ソノタビニ ワタシハ トシヲトルノデショウ

スキマナク ダレカガ ウメヨウトシマス
アナタト ワタシノアイダノ カラッポノ クウハクヲ
ダカラ イキグルシイノデス

ワタシヲ ミタシテ シマワナイデ
ワタシハ スキマヲカカエテイタイノデス

カエラヌアナタヲ マツタメデハアリマセン
ナンノタメカハ ワタシニモ ワカラナイノデス

2012年9月10日月曜日

みんなが言わないことのほうを

明るいほうがいいと
みんな思っているのかな
 

暗いほうがいいと
思わないのかな

暗いほうがいいよ

元気なのもいいけど
おとなしいほうがいい

偉そうに見えるより
侘(わび)しくみえたほうがいい
自信がなさげで ひねくれていて・・・

そのほうが好きだ って
誰かが言っていた

みんなが言うことだけじゃなく
言わないことのほうを
聞いたほうがいい





そこに置いて
 
暗い顔をして

雨上がりの

緑の

木々を見ているね

暗い気持ちを

そこに

置いて行きたいと

思っているんだね