2012年8月13日月曜日

護美

あなたの周りにゴミはありませんか
明日はゴミの日です
燃えるゴミの日です
燃えやすい燃えにくいに関係なく
「燃えるとゴミ」と分別されたものを
出すことができます

私は燃えるゴミの日が好きですが
同時に恐怖を感じます
「生ゴミは燃えるゴミとして出してください」と
書いてあります
生ゴミを出すのは気持ちがいい
部屋の中からゴミが消えるのは気持ちがいいものですが
自分が消えて燃やされてしまうことを
考えずにはいられません

あなたはゴミの日が好きですか
あなたのゴミはどんなものが多いですか
人によってゴミの種類も基準も違います
まだゴミだと思えないものであっても
他人から見れば「最初からゴミであった」ということも
しばしばあります

さてみなさん
明日はどんなゴミを出しますか
燃えるゴミのなかに
「燃えない」と分別されるゴミを混ぜると
心が傷んでゆきます
ゴミ萌ぇ~

私はゴミよりも
ゴミの日のさわやかな空気が好きです
何もかもなかったことにするような
白けた空気が


2012年8月12日日曜日

あなたのことを

楽しいことはいくつもあった
ごはんがおいしいと感じたことも
朝の光が眩しくてやる気が満ちてきたことも
愛する人がいることに涙したことだってあった

そんな瞬間は
日々の中に散りばめられていたから
気づかぬふりをしていても
それらは絶え間なくやってきたので
私を満たしてくれた

あなたは私の傍らにいて
私の方を見ながら
たまに笑った
取り留めもないことを話題にして
げらげら笑うこともあった

楽しいことは
いつも私の不安を先送りにして
おかげで私は不安に捕まってしまうことがなかった

だが
不安に捕まってしまった人は
絶望色に染められて
中身まで絶望に侵食されるのが
時間の問題だった

私には何かできるのだろうか
ひょっとして私の中の不安も引き出されて
私たちは飲み込まれてしまうのではないか
そんな不安が
私を不安に捕まってしまった人から遠ざけた

ごめんなさい
心は叫んでいたけれど
私は忘れようとしていた
大好きな
あなたのことを

2012年8月11日土曜日

くすぐったいものは要らなかったのかもしれない

あの人が死んだ時に生まれた光が
いまあなたの上に降り注いで
何かを伝えようとしているが
あなたは気づかないでいる

あなたは
わたしは
向きあって
静かな話をしているから
遠くで鳴いた鳥の声も
意識の上では像を結ばない

あの人が生まれた時に消えた光が
また灯る
そして
さっき届いた光と波長を交感して
私たちの眼にH2Oの滴を浮かび上がらせた

風邪がそれを乾かそうとしたが
それより前に二人はそれを拭ってしまった

理由を物事から排除するように
ただ生きていることを感じたかったから
くすぐったいものは
要らなかったのかもしれない

2012年8月10日金曜日

悲しみを持っている人が

悲しみを持っている人が手にしたら
にぎやかな花火まで湿気ってしまい
何度やっても
火が点かない

私の心も同じ
でも
それでも
あなたのそばに 
ずっと居たい

2012年8月9日木曜日

泣きたい心は

泣きたい心は蝉にあずけて
ぼくはすました顔をする
どこにいくかは電車にまかせて
知らない駅で降りましょう

2012年8月8日水曜日

友達の数は多いほうがいいですか

友達の数は多いほうがいいですか
少ないほうがいいですか
友達とは
言葉で喋れたほうがいいですか

いいものは分け合ったほうがいいですか
独り占めしたほうがいいですか
車より電車のほうがいいですか
電車よりバスのほうがいいですか
日暮れより朝焼けの空が好きですか
何もない空と雲のある空とどちらがいいですか
途中でやめるよりやらなかったほうがいいですか
やるときには準備したほうがいいですか
苦し紛れに
言い訳を言ったほうがいいですか
言わないほうがいいですか
お金より命のほうがいいですか
お金のほうがいいですか
五月蝿いのと静かなのとどちらがいいですか
詩と散文ではどちらがいいですか
詩でないものは散文でないものより良くないですか
私にはわからないことがたくさんあるのと
わかることばかりなのとでは
どちらがいいですか
あなたは答えるのと質問するのとでは
どちらがいいですか
耳を塞ぐのと
目を塞ぐのではどちらがいいですか
喋れないほうがいいですか
いいものは分け合ったほうがいいですか
分け合うなら
ないほうがいいですか
あったほうがいいですか

2012年8月7日火曜日

北京のメモ用紙

僕は北京のメモ用紙が好きだ。
四角く白いやや厚めの紙。
手のひらに持つと指だけが鈎(かぎ)のように引っかかる。
天糊で綴じてある。
僕はそこにメモリたいことを書くのが好きだ。
寝ぼけ眼で起きぬけに夢を書いたりするのが一番好きだ。
書かれたことは他人には意味不明でも自分には分かる。
メモ用紙が応援してくれるからだ。
メモ用紙は威張っていない。
とても律儀で控えめで主張し過ぎない。
誰かさんに見習って欲しいくらいだ。
私はメモ用紙をよく持ち歩く。
鞄の中へ放り込み、ついでにペンも放り込んで、よく、手探りで見つけ出して取り出しては使う。
メモ用紙にはなくならないで欲しい。
一生そばに居て欲しい。
そして私が人生を終えた後にも、私の友だちや親しかった人の言葉をメモして欲しい。
その場に居ない私に対するメッセージをメモして欲しい。
消えないインクでも、消しゴムで消せる文字でも、落書きのような絵でも、なんでもいいから。
逆らわないでメモ用紙は答えてくれるだろう。
自分の役目を全うして、きみはそのあとどうするのか、その計画はどこに記せばいいのか、答えを知らなくても。


注釈
じっさいには「北京のメモ用紙」は中国国内で製造されたものではなく、輸入されたものである。筆者が賞賛するメモ用紙は、筆者が宿泊したホテルの備品として設置されていたものであり、「北京のメモ用紙」と呼称するにはいささか無理がある。ただ筆者にはそう呼ぶことしか出来ない「何かの特別な思い」が存在し、その「何かの特別な思い」こそがこの詩の主題となっていることは、誰の眼にも明らかだろう。

2012年8月6日月曜日

それは私のこと

もう一つの入口は他人の家の中
畳にスリッパの影がうつり
小さな二人乗りモノレールが
柵だらけの広場からやってくる
公共の乗り物なのに民家のお茶の間を通るルート
別れる寸前のカップルがしんみりして向き合っていたり

死んだ人も生きていた時と同じようにゲラゲラ笑って団子を食べている
民話の登場人物や動物たちも朝から晩まで持ち場に集い
人の気配を気にしている

深刻な人は首すじに汗を流している
腹は膨れすぎ
引きこもりに根が生える


2012年8月5日日曜日

おなじことを

おなじことをなんどもくりかえすことは  いいことです  おなじことにあきてしまうのは  それはこころがわるいのです  いいことはくりかえしやる   わるいことだけくりかえさないというのはわがままです  わるいことをくりかえしたとき   いいこころがたいこうしようとしてそだちます  まいにちくりかえすものを   みならいましょう   しぜんとちきゅうがまわるように   みずがひくいところへながれるように   まわりじゅうのものと   いったいになります   そうすればちいさなじぶんのなかに   ひろいうちゅうがひろがり   からだのにくも   ひふも   そとがわも   うちがわも   かんけいなくなります    くりかえしおなじことをおなじようにすると   じぶんがうちゅうであることに   みたされます

世の中の人間に混じって

世の中の人間に混じって遊んでいるが
自分は世の中の人間ではないので
いつか世の中から出なければならない
 
このような人はもちろん私だけではなく
大勢いるのだ
たとえば砂場で遊んでいる砂田君や
川上で木の実を取っては選別している川上さん
猫と遊んでいる猫田さん
野原で口をあけて眠っている野口さんだってきっとそうだ
 
だが井戸の上で食事ができるのを待っている井上さんは
世の中の人間だ
広い神社で「末吉」ばかり出るという噂のおみくじを作って売っている広吉君も
そちらの人間だ
 
けして差別しているわけではない
差別されることは多いので
差別の意識からは離れられないが
 
世の中にいろんな居住区があやふやに設置されているが
(これは昔 誰かが暗黙のうちに共闘してこのようにしたものなのだが)
もうそのことを意識する人も知る人も少なくなった