2012年1月6日金曜日

リクルートスーツを

リクルートスーツを心に纏い
雑踏を歩く
思いの瓦礫を払いのけ
雑念団子を頬張りながら

この世は
この私に何を求めているのだろう
答えは
どこの窓にも書いていない

私のリクルートスーツは
迷っている
冷たい風を肌に滑らせて
星の光に応答する

靴は路面をとらえているが
私は何に捕らえられれば
いいのだろう

小学校の校舎にいた
あの先生が
生きていたら
教えてくれないだろうか

2012年1月5日木曜日

最後の一枚

その一枚を脱がしてしまいさえすればいいのだ
そうすれば
すべてはうまくいく
それをずっと以前から
待ち構えていたのかもしれない

だが
その一枚はなんと近くて遠いことか
テーブルの向こうの暗がりに
まるで月夜の帆船のように
白い帆を張って誰かが訪れるのを待っているというのに
私の高ぶる感情の波が邪魔して
近づくことができない
生ぬるい風も立ち止まり
見守っているというのに

あれが最後の一枚なのに
立ち往生しているなんて

帆の放つ光の魔力よ
私を導いてくれ
すべての縛りから開放して
あの一枚の布に
手が掛けられるように

2012年1月4日水曜日

小高い山の間を

小高い山の間を
小さな車が走り抜ける
柔らかい大地

こんもりした
緑の森の間を
小さな温泉池の横を
車窓に見ながら
盆地へと降りていく

沼には
ボートも浮かんでいる

雲が天を流れて
長い時間をかけて
見えないほど遠くへ遠ざかっていく

葉先が
雨に濡れるたびに
感じやすくなり
小鳥の羽が生み出す風や
そのさえずりに
センサーと化す

長く美しい橋は細い
そこには川も流れ
鍾乳洞の洞窟もある

まだ未開発の部分も
多く残す

時折花火が上がり
祭りも催される
春の次には
雨の多い季節が訪れる

小さな車が去っていく
だだ一台
また戻ってくると言い残して

2012年1月3日火曜日

世界に一つだけじゃない花

毎年咲いては散っていく
花を思うと
私はもう散ったことがあるはずだ
と思う

散ったときは
気づかなかった

また咲こうとしている
今度は
どんな花びらをつけるのだろう

これは悪いくせか
私は私のことで
頭がいっぱいだ

花たちは
みんなそうしている

世界に一つだけの花なんて
意味がない
私はあの花たちと同じように
やり直したいのだ

季節の到来に合わせて
空にこの手を広げたい
風に吹かれても
負けずに笑ってみたい

2012年1月2日月曜日

予感

何かの予感が
玄関のドアをノックした

はーい、
ちょっとまっててね
いま開けますから

何かの予感は
待っていた
ドアの前で
小雪に降られながら

私は
慌てて
ドアを開けた

そこにはあなたが
立っていた
白い息を吐いて

私は
あなたの雪を払いながら

どうしたの。

ときいて
部屋の中に誘い入れた。

あなたは部屋の真中に
崩れ込むと
しばらく私の家で
話をしながら
何かを探していた

夜になった

玄関の外に
何かの予感が立っていた

晴れた空に星が見え
予感は⭕⭕に変わろうとしていた

2012年1月1日日曜日

関心事

旅先で充電した電池をつないで
メールしてみる
それは
普段と同じかな
受け取った人は
なにか違うものを感じるかな

私の体の中にも
旅先の何かが
充電されているかな

中に溜まった力を使うとき
何か今までにない
素晴らしいことが起きないかな

2011年12月31日土曜日

一休みする場所について

くまさんと一緒に
歩いて行こう
うさぎさんはさようなら
遠くには火山が見える
あの煙の先の
雲の下あたりに
綺麗な街がある
そこまで行ったら
一休みしよう

うさぎさんが
いるかな

2011年12月30日金曜日

2011年12月29日木曜日

間違って愛してしまうあなたへ

クリスマスツリーは
お正月が過ぎたら飾りましょう
お漬物はセブンイレブンで買いましょう
洗濯物はつららの隣に干しましょう
ナッツ類はすぐに食べましょう
手紙は開けずに捨てましょう
サイドボードは真ん中に置きましょう
石にはホイップクリームを塗りましょう
よく来る客は風呂に入れましょう
ナナカマドの影には隠れましょう
引き受けたら大声を出しましょう
月が出たら酒を仕舞いましょう
苦しい時は正面をよく確かめましょう
ルビーを見つけたら手を叩きましょう
よく確かめたら捨てましょう
組曲はバラバラに並べ変えて聴きましょう
胸を見せたら交代しましょう
線に沿って剥がしたら床に置きましょう
揺れが収まったら潜りましょう

以上が私のアドバイスです

2011年12月28日水曜日

捨てたくない

日本から持ってきた古いパジャマのズボンは破れて色っぽいスカートみたいになった。
靴下の一つは片足に穴が空き、間もなく、もう片方にも穴が空いた。
これらはさよならするものたちだ。

捨てたほうがいいものが
他にもありそうだが
なかなか捨てられない。

とっておくというのが
私の性格だが
煮えきれない思いも同様に
とっておいてしまう。

断捨離というのが
うらやましい。
やる気がないのに
うらやましい。

でも
少しだけ真似してみたいのだ。
少しは気分が軽くなって
新しいものが見えてくるだろう。

だが、
効能がはっきりしても
性格が邪魔をして
思い切ったことはできないだろう。

人からはよく
思い切ったことをすると言われるが
本人は
自分なりに熟慮の末
おそるおそるやっているだけなのだから。

ところで、
ここ数日は試験勉強ばかりしているが
パジャマと靴下のことが気になっているのも確かだ。

捨てる前に写真を撮ろうと思っているが
そうしたら
彼らは永遠の生命を得ることに
なるのだろうか。

過去に捨てなければならなかったものたちが
永遠という駅で
私に手招きをしている。