2012年6月7日木曜日

幸せになると

幸せになると
不幸な人のこころが
見えなくなるから
お前は幸せになるな

ある朝
天使が私の前に舞い降りてきて告げた

幼い私にはその意味がわからなかったから
私はそんなお告げなどすっかり忘れて
長い年月を過ごした

ある朝
あの時の天使が
またやってきた

私は突如思い出した

そんな私に天使は告げた

不幸せになると
幸せな人のこころが
見えなくなるから
お前は不幸になるな

だが私にはその方法がわからなかったから
私はそんなお告げなどすっかり無視して
今までどおり不幸な人のこころの傍らで
暮らすことにした

2012年6月6日水曜日

やりすごす日々

街の模型の上 を 歩いているとカタカタ ウーンと唸り 電車が 走っている
夕方の風は 昼の空気のよどみを 押し去ろうと している
工場の煙 調理の油っぽい煙 車の排気ガス
街には 灯りが点ろうとしている
巨人の 私
足の踏み場もない街の上空の空気を吸いながら
ゆっくりと 視線を 旋回させる

あのこも あのひとも 知らないあの人も いやなあいつも 
がんばっているあの素敵なひとも
街の 大地の上に 頼りなげに 着地して
今を過ごしている

ひときわ 高い 塔が ライトアップされ
街の中で シンボルを 主張している

待っている 相手が 来ないのは
私が 待ち合わせ場所に いないから なのだろうか
それとも
待ち合わせ場所が
変わってしまったからなのだろうか

もう
夜になろうとしている
毎晩毎晩 ご苦労さま なことだ

むかし
「お呼びでない?  こりゃまた、失礼しました!」
っていうギャグが 繰り返し 聞こえてきたが
世の中は 呼ばないのに来るもの で満杯だ

巨人の私は 上空で 考える
呼ぶ人が 少なすぎる
待っているばかり の 人が
多すぎる
待っているだけでは駄目だ と いいながら
来る日も 来る日も
ただ 待っている

そのくせ
待っているものが来ても 気にもとめず
やりすごしてしまうのだ

俊太郎&DiVa こころの旅 観に行きたい


2012年6月5日火曜日

苦しんでいる人に

「もうだめかもしれません」
と心のなかでつぶやいて
絶望を抱えて苦しんでいるね

だれが
「もうだめかもしれません」って
言っているの?

その人に
あなたから
話しかけてあげて!

「あなたはそう思っているかもしれないけれど
私はそう思わないよ」って

だって
苦しんでいる人がいたら
いたわらなくちゃね

お互い様だから
あなたが苦しい時には
私がそばに居て
あなたをいたわるから
私が苦しい時には
あなたがそばに居てね
詩がからっ風になって吹いているが
誰も気に留めていない

その詩は私の詩なので
私だけが気にしている

私は分かりにくい生き方をしている
だから私が書く詩は
時々からっ風になってしまう

好きな女の人にまとわりついた布は
ほどけそうだが
詩の謎はこんがらがるばかりだ

2012年6月4日月曜日

メロンパンは私に

私の目の前にあったはずの食べかけのメロンパンが
消えている
誰が食べたのだろう

死にたい と
検索窓に打ち込んでから
読みたいものを探し始めたら
死ぬ前の準備 とか 嫁に殺された俺がさっそうと登場 とか
変なものがたくさん出てきた
しばらく探しまわっていると
あるカウンセラーのページに行き着いた

その文章には
見たくない言葉がなく
ページをめくると挨拶ができなかった少年の話が紹介されていた
少年はなぜ挨拶ができなかったのか
そこにはこう書いてあった

「人に挨拶をすることと、死んでいく父親に挨拶していないこととが、重なり合っていたんですね。つまり、さよならを言わない限り父は、自分の中に生き続けていることになるわけです。
 父に挨拶をし終っていないんだから、他人に挨拶なんかできっこない。挨拶をしてしまうと、父が本当に死んでしまうから、遠くに行ってしまうから・・・。
 でも、こうした気持ちや感情は、頭の中で一瞬の無意識のうちに作られてしまうことなんです」


私は立ち上がって数歩歩き
訳もなく壁にかかっている鏡をのぞきこんだ

くちびるの左下に
メロンパンのカケラがついていた
メロンパンは
やはり自分が食べたのだ

2012年6月3日日曜日

負担なく帰りたい

連れてくるのかな
猫も
連れてくるのかな
ふたり
ナナとビスケット

あのひと

連れてくるのかな
連れられてくるのかな

ライラックの咲く坂道
バッグ振り回して
登ってくるのかな

猫の鳴き声聴こえたら
あのひとの
泣き声と
間違ってしまいそう

青空に雲は流れ
ビルとビルの間に
この季節らしい風が吹く

そろそろ
自分の部屋に帰ろうかな
あのひととの待ち合わせは
6年前

もう地名も番地も変わってしまった
あっ
そういえば
自分の部屋も
今は新しい駅で降りなければ
負担なく帰ることは出来ないのだ

2012年6月2日土曜日

縄をかけてくる人

都合の悪いことは忘れてしまっていたので
心は重たいままだった

都合のいいことは小脇に抱えていたが
賞味期限が切れてねっとりとしている

太陽消毒を試みるが
効いているかどうか判断する者が居ない

私は
電車の駅に住んでいるが
きょうも発車ベルの音で目覚める

(電車はいつも立ち去ってばかりなので
ここは仮の宿なのだろう)

とところで私には添い寝する人がいないが
私の首に縄をかけてくる人はいる
冷たかった風ガタンゴトンとうるさかっった電車の音
錆とガソリンの漏れる匂いがした軽自動車
遠い
見知らぬ湖に向かって走った道
まだ何も知らない男と女
道を覆う木々と葉っぱ

2012年6月1日金曜日

私は走って

私は走って乗っちゃう
あなたはドタドタ走らなければならない

クールな吟遊詩人は
次々乗り物をとっかえひっかえ
夜昼なく駆けめぐり
この地球の縄張りと罠を探索する
レアアースより必要なもの
人の心より価値あるものがある  と

私は走って乗っちゃう
あなたはドタドタ走らなければならない

遊び飽きた 湘南女は
ボランティアに活路を見つけて
今度は国境を股にかけて井戸端会議
夜にダンスを教え
酔いつぶれて星を見ながら
眠れない夜をあわれに眠っている

私は走って乗っちゃう
あなたはドタドタ走らなければならない

私は走って告白しちゃう
あなたはドタドタ走って答えなければならない