古い木の家の
破れた壁を塞ぎ
朽ちかけた柱を補強して
箒で床を掃いた
屋根に溜まった木の葉を下ろして
木ぎれと一緒に焚き火をした
ほかに
なにが必要だったのか
思い出せない
乾き始めた風の向こうに
いつのものともつかない
笑顔が見える
その人と別れてしまったのか
まだ出逢っていないのか
はっきりしない
わたしは
欲しいものを手にするために
生きてきたが
欲しいものは
わたしが持っていなくてもいいものばかりだった
だからわたしは
なにかに欲されたいと願った
この世界が
わたしを爪弾きにせず
受けとってくれることを願った
誰かが
受け渡してくれるのなら
すべてを委ねたい
2011年8月21日日曜日
2011年8月20日土曜日
あなたの感じは
笑いながら話すのが
あなたの特技
普通に話していても
その声は笑い声を含んでいる
私は
あなたと話していると
つられて笑いそうになる
辛く悲しい話をしていても
そこに絶望は存在しなくなる
荒海から浜に打ち上がった昆布を海鳥が運んできて
味噌汁の鍋に入れた
例えて言うなら
そんな感じた
あなたの感じは
あなたの特技
普通に話していても
その声は笑い声を含んでいる
私は
あなたと話していると
つられて笑いそうになる
辛く悲しい話をしていても
そこに絶望は存在しなくなる
荒海から浜に打ち上がった昆布を海鳥が運んできて
味噌汁の鍋に入れた
例えて言うなら
そんな感じた
あなたの感じは
かっこいい
かっこをつけて生きてきた「きみ」が
かっこつけていることに疲れて
裸で生きていきたいという
僕は
「世間では
裸は目立ちすぎるので
外出するときは
服を着たら」
と
かっこをつけて言う
だが
内実は
そうではなく
長年
服を着ないでいい気になって
外を歩いた僕は
人々に注意されて
いよいよそれができなくなってしまったのだ
だから
「きみ」が裸で外を歩くのに乗じて
「僕」も一緒に歩きたいのだ
かっこつけないで
かっこよく
かっこつけていることに疲れて
裸で生きていきたいという
僕は
「世間では
裸は目立ちすぎるので
外出するときは
服を着たら」
と
かっこをつけて言う
だが
内実は
そうではなく
長年
服を着ないでいい気になって
外を歩いた僕は
人々に注意されて
いよいよそれができなくなってしまったのだ
だから
「きみ」が裸で外を歩くのに乗じて
「僕」も一緒に歩きたいのだ
かっこつけないで
かっこよく
2011年8月19日金曜日
私は何もした覚えがないのに
私は何もした覚えがないのに
あの人と私の間に濃い霧が出て
風が立ち
霙が降り
雷が鳴った
あの人は悪いことをしようとしているのに
行く手に虹が出て
満月が出て
日輪が眩しく光り
小鳥がやさしくさえずった
あの人と私の間に濃い霧が出て
風が立ち
霙が降り
雷が鳴った
あの人は悪いことをしようとしているのに
行く手に虹が出て
満月が出て
日輪が眩しく光り
小鳥がやさしくさえずった
2011年8月18日木曜日
君が夢見るものは
君が持っているものは
お金で買った物ばかり
その隙間に君が作ったものが隠れている
君が作ったものは
借りてきたものばかり
その隙間に君のものが隠れている
君が大事にするものは
思い出ばかり
その隙間に名付けられない未来が隠れている
君が夢見るものは
他人まかせの夢ばかり
その隙間に君を愛するひとの涙が光っていた
お金で買った物ばかり
その隙間に君が作ったものが隠れている
君が作ったものは
借りてきたものばかり
その隙間に君のものが隠れている
君が大事にするものは
思い出ばかり
その隙間に名付けられない未来が隠れている
君が夢見るものは
他人まかせの夢ばかり
その隙間に君を愛するひとの涙が光っていた
2011年8月17日水曜日
2011年8月16日火曜日
カジュアルなカバン
カジュアルなリバーシブルのカバンにカメラを入れて
海のある駅に降りた
小さなバスに乗り
ビーチ入り口で降りた
狙い通り
夕日が見渡す限りの世界を描き出している
海の家で真っ黒な男がホースで
ビキニの水着の女に水を掛けじゃれ合っている
その脇を通って波打ち際に近づく途中で
自分にカメラをむけて写真をとった
背景はビキニの反対側の海の家の側面の壁画だ
皮のシューズが砂に沈み
気分が砂混じりになってゆく
波打ち際から左右を見ると
左手に防波堤
その向こうに灯台の明滅
右側では
いく人かのサーファーとその連れ合い
さらに遠くには
船が繋留されて行儀良く並ぶ
波はやや強く打ち寄せ
私はその様を
躍動感ある写真にしようと
取り組んでいた
どんな時でも
写真を撮るからには
納得いく写真を撮りたいのだ
私をカメラに収めようとするひとは
今日はいない
このあとの行動は決まっていた
予定は予測通りにこなされるだろう
独りでここに来ようかどうか
さっきまでの迷いはもうなかった
気持ちは愛する人と同伴していた
そのことは
きっとに伝わるだろう
デニーズに入り
月の出を待った
月は出ても出なくてもよかった
また
見にくることが
わかっていたから
だから帰りの電車のことも
ちゃんと気にしていたのだ
海のある駅に降りた
小さなバスに乗り
ビーチ入り口で降りた
狙い通り
夕日が見渡す限りの世界を描き出している
海の家で真っ黒な男がホースで
ビキニの水着の女に水を掛けじゃれ合っている
その脇を通って波打ち際に近づく途中で
自分にカメラをむけて写真をとった
背景はビキニの反対側の海の家の側面の壁画だ
皮のシューズが砂に沈み
気分が砂混じりになってゆく
波打ち際から左右を見ると
左手に防波堤
その向こうに灯台の明滅
右側では
いく人かのサーファーとその連れ合い
さらに遠くには
船が繋留されて行儀良く並ぶ
波はやや強く打ち寄せ
私はその様を
躍動感ある写真にしようと
取り組んでいた
どんな時でも
写真を撮るからには
納得いく写真を撮りたいのだ
私をカメラに収めようとするひとは
今日はいない
このあとの行動は決まっていた
予定は予測通りにこなされるだろう
独りでここに来ようかどうか
さっきまでの迷いはもうなかった
気持ちは愛する人と同伴していた
そのことは
きっとに伝わるだろう
デニーズに入り
月の出を待った
月は出ても出なくてもよかった
また
見にくることが
わかっていたから
だから帰りの電車のことも
ちゃんと気にしていたのだ
2011年8月15日月曜日
オレンジの恥じらい
「オレンジジュースの中に溶けたよう」
いつもライム色のあなたが
体じゅうをオレンジに染めて
恥じらいを露わにしている
「服がくっついてぴたぴたなの。たすけてほしい」
風も止んでしまったから
あなたは
私に救いを求めるしかなった
手を差し出して
引っ張るよう促す
私はあなたに
何度も肩透かしをくっていたので
少しためらったが
直ぐに左手を差し出した
あなたは右手を精いっぱい伸ばして
私の手に捕まるかのように見えたが
その瞬間に
脇から伸びてきた別の手に捕まった
あなたの体が一瞬宙に舞うと
あなたは苦痛の表情で微笑むと
薄闇の中に溶けていってしまった
私は左手をそそくさと
しまった
恥じらいのオレンジに
身を染めて
いつもライム色のあなたが
体じゅうをオレンジに染めて
恥じらいを露わにしている
「服がくっついてぴたぴたなの。たすけてほしい」
風も止んでしまったから
あなたは
私に救いを求めるしかなった
手を差し出して
引っ張るよう促す
私はあなたに
何度も肩透かしをくっていたので
少しためらったが
直ぐに左手を差し出した
あなたは右手を精いっぱい伸ばして
私の手に捕まるかのように見えたが
その瞬間に
脇から伸びてきた別の手に捕まった
あなたの体が一瞬宙に舞うと
あなたは苦痛の表情で微笑むと
薄闇の中に溶けていってしまった
私は左手をそそくさと
しまった
恥じらいのオレンジに
身を染めて
2011年8月14日日曜日
やきもち
君は胡桃の木の下で
月を見ているんだね
ぼくはサンダルで波打ち際に立って
月を見ている
取り替えようか
君は波打ち際に立ってぼくを見る
ぼくは胡桃の木の下で君を見る
月はサンダルを履いたのだが
もう見られていないので
切なくなって
仕方なく
ウサギのついた餅を焼く
月を見ているんだね
ぼくはサンダルで波打ち際に立って
月を見ている
取り替えようか
君は波打ち際に立ってぼくを見る
ぼくは胡桃の木の下で君を見る
月はサンダルを履いたのだが
もう見られていないので
切なくなって
仕方なく
ウサギのついた餅を焼く
2011年8月13日土曜日
はぐれた あのこ
ねえ神さま
あのこは元気?
月夜の晩にはぐれたこ
あの砂浜で待ち合わせしようと
約束したのは
いつのこと?
その場所には いま
ドーナツ屋さんが建っている
そこで待てば
日照りや雨がよけられていいかもね
ねえ神さま
お願いします
あのこが
いいこのまま
育っていますように
わたしと釣り合うくらい
ほどよくいい経験を
していますように
はぐれたことが
愛おしくなるくらい
祝福される
再会でありますように
月が雲に隠れ
また現れたときに
その光が
あのこの輪郭を
浮かび上がらせてくれますように
わたしは
こえをかける
「ひさしぶりだね」
笑顔で
涙を流して
あのこは元気?
月夜の晩にはぐれたこ
あの砂浜で待ち合わせしようと
約束したのは
いつのこと?
その場所には いま
ドーナツ屋さんが建っている
そこで待てば
日照りや雨がよけられていいかもね
ねえ神さま
お願いします
あのこが
いいこのまま
育っていますように
わたしと釣り合うくらい
ほどよくいい経験を
していますように
はぐれたことが
愛おしくなるくらい
祝福される
再会でありますように
月が雲に隠れ
また現れたときに
その光が
あのこの輪郭を
浮かび上がらせてくれますように
わたしは
こえをかける
「ひさしぶりだね」
笑顔で
涙を流して
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