くちぶえが
うまくふけない
あなたは
うまくふけるのに
でも
それはきらいなところ
くちぶえふくより
くちびるふさいで
ちからをこめて
だいてね
なみのように
ただよわせ
そらに
うつして
わたしは
ならないくちぶえで
きみを
たたえるから
世間の隅っこにいるけれどここは世間の隅っこの真ん中世間は賑わっているけれどここは世間から一番遠い場所
だれもが世間へ出かけていって
友をみつけて笑顔を見せ合う
世間の隅っこの真ん中には
だれもやってこない
世間の隅っこの真ん中には
一足早く
だが 静かな春がやってくる
やきもちをやいても
いいですか
あなたをひとりじめ
したいの
それはわるいことではない
それはすてきなこと
だれかとあなたをわけあうなんて
ふじゅんだわ
やきもちをやいて
くれませんか
わたしをひとりじめ
してほしいの
それはきゅうくつなんかじゃない
それはかんじること
このむねのほのかなかおりを
おぼえてほしいの
トリが木の実をついばみます
ぼくはなにをついばもう
ぼくはケーキをついばみます
トリはなにをついばむの
トリはシュークリームを
ついばみます
ぼくはトリが大好きです
トリはだれが好きですか
ともだちが
そのともだちの
そのまたともだちの
うわさばなしをしている
うわさばはなしを
されているのは
ぼくがあったことがない
ともだちのともだちのともだち
ともだちのともだちにも
あったことがないから
ともだちのともだちと
ともだちのともだちのともだちとでは
どちらがいいともだちになれそうかは
わからない
だけどきっと
とのだちのともだちや
ともだちのともだちのともだちなら
きっとともだちになれるだろう
ともだちとはいいもんだ
ぼくはむねがあつくなる
あったことがないともだちのことをかんがえると
きっと
あったことがないともだちも
あったことがないぼくにあいたがっている
かぜのうわさでつたえてよ
ぼくのうわさばなしを
ついでに
だれもしらないみらいのともだちに
ぼくの頭に巣をつくって
鳥が住みついた
朝から賑やかでしょうがない
友達は
うらやましいという
いい効果音だね とも
ぼくがなにを考えているっていうんだ
そうか
蒼い空に
なにか忘れ物をしてきたっていう
あの 詩人が言っていたやつ?
鳥は巣を出て行ったり
戻って来たり
おい そこでなにか食べるのは
やめてくれないか
人の悩みなんて
こっけいだね なんて
どこかでうわさ話してきたのかい?
ほら
月がのぼってきたら
もう おやすみ
あしたはぼくが
たたきおこしてあげる
なぜか光ってるね
樋口くん
なぜ光ってるんだろう
樋口くんの顔
なぜか光ってる
樋口くんの目
なぜか目立っているね
樋口くんの筋肉
なぜか少し変だね
樋口くんの話
なぜか面白いね
樋口くんといると
樋口くんは
見ているね
人やものごとを
樋口くんは動じないね
ちょっとのことでは
樋口くんは
何が好きなの
樋口くんが好きなもの
変わってるよね
なぜか人が寄ってくるよね
樋口くん
なぜかいい仕事をするね
樋口くん
なぜかひとを驚かせる
樋口くん
人生の晴れ舞台ってどんな気分?
わりといいせんいけちゃってる
なんて
思ってる?
きょうはおめでたいね
みんなが驚き
ほっとして
うらやましくなり
自分も頑張らなくちゃって
思ってるよ
そして樋口くんから
幸せのおすそ分けをもらって
案外 いつも
もらってばかりだな
なんて 思ってる
樋口くんはそんな人
いつも
与えてもらうような顔をして
なにかを
与えてくれる人
ありがとう
お礼を言いたいことに
いま 気づいた
でも
あんまりイイキになるなよ
封筒の中に
何が入っているのか
思い出せない
それは
見たことがある
よく知っている封筒
封が外れかかっている
でも
凛とした封筒
誰が何をいついれたのか
分からない
それを誰が知っているかも
忘れてしまった
でも
ここにある 封筒
私がここに来る前から
ここにあった
静止した風が
出てきたがっているかも
知るよしもない
隣人に不利な何かが
入っているのか
信心深い人を喜ばす何かが
入っているのか
見ていると
目眩さえしてくる
四角く視界をふ塞ぎ
静かにたたずむ
封筒
いつもあなたがいたキッチンに いまも
あなたがいるような気がして
見てしまう 何度も
でも そこに あなたはいない
いつもあなたに注意された 悪いくせ
あなたに見られたようなきがして
ハッとして 振り向く
でも そこに あなたはいない
あなたは ほんとうに
いなくなってしまった
どこかへ いってしまった
私は あなたを
待つことはできない
あなたは
帰ってこない
あなたの気配を
まって
生きていくだけ
ゆきだるまが
おこっていたのは
つくったひとに
みすてられたから
ゆきだるまだって
ずっと
おもっていてほしい
つくったひとに
そんなこと
ぼくにだって
わかる
つくったのは
おとな
せけんをわたり
よごれてしまった
おとな
ゆきだるまは
おしえてくれた
あんなおとなに
なっちゃいけないと
ぜったいならないよ
ぼくは
つくったものをだいじにする
おとなになる
あんな
よごれたおとなには
ぜったいならない
そして
よごれたおとなに
いつも
きみのことを
はなしてあげたい