2014年1月27日月曜日

小さなとりが

ぼくはだまっているのに
小さなとりが
ずっとなにかをはなしている

ぼくは心のなかで
ひとりごとをいっている・・・ことに
いま気がついた

だまってぼくはひとりごとをいっているのに
小さなとりは
声をだしてはなしている

ぼくは小さな声をだして
いってみた
ーーだれにはなしてるの?
なにをはなしてるの?

小さなとりはぼくを見て
くびをかしげた
でもまた
そっぼをむいて
なにかをはなしはじめた

ぼくはまつげをパタパタさせた
小さなとりはいきおいよく

空へと とびたった

2014年1月26日日曜日

ぼくの せんそう

せんそうがやってきた
うかれたひとはいなくなった
まちじゅうに
なんみんがあふれた
しんだひとは
だれかがつちにうめる

おおきなふろおけが
といれのかわり
こうみんかんは
なんみんのすみか

ぐんたいは
がいこくにでかけて
まもってくれないから
てきがやってくれば
ていこうせず
ころされるかもしれない

やきゅうじょうのフェンスのうらに
ひとがたむろしているのは
せめてくるものから
かくれたいからだ

まだ
そらからばくだんはふってきていない
ラジオもテレビもほうそうをやめたので
がいこくのほうそうを
きくしかない

よるはでんとうがともらないせいで
ほしがきれいだ

エアコンもとまっている
いろんなにおいがまざっている
ちょうへいされたひとも
いるという

ぼくはふつかのあいだ
なにもたべてない
もうそのことさえわすれそうだ

こっかはなくなってしまったようだ
みんなしょくばほうきして にげたのだ
ひとびとは
ただいきのびるだけのじょうたいとなっている
しをかいたり
うたをうたをうたっているひともいない
あんなに はやっていたスマホさえ
もうするひとを どこにもみることができない

ふろおけに
ちんぽをむけて
ちからをこめると
なんと おしっこは
いきおいよく
むこうのふちあたってしぶきをあげた

そういえば
ふつかぶりの
しょんべんだった

2014年1月25日土曜日

なまえ

ぼくはきょうからぼくでなくなる
だから
ぼくの おなまえさん
さらばだ さようなら!

おなまえさん
おもえばいつも
きみを やおもてにたててきた
いつからか
ぼくはきみのかげにかくれて
そのぶんへいおんに
すごしてきた

だがきみは
もんくひとついわず
ぼくをまもってくれた

きずついて あざだらけになり
ふくはやぶけ
くつも かたほうしかのこっていないのに

そこでぼくは けついして
きみをへやのなかにいれ やすませることにした
もういんきょしてもいい
というきもちだ

とはいっても
ネットはつながるし
メールやFaceTimeだってできるから
きみにふじゆうはないだろう

おなまえさん
どうかゆっくり ほねやすめして
ぼくをみまもっていてほしい

こんどは ぼくじしんが
やおもてにたって
じぶんじしんで
せいぎのために たたかうから

せいぎはかっこいいもんんじゃない って
だれかいってたな

かっこわるいのは
ぼくのもちあじだ

そして
ぼくはしぬとき
いちばんきれいな
ほしをおもおう
とほうもなくとおくにあるそのほしは
なまえもないが
うちゅうのどこかでかぼそくひかっている
だれかにみられているか なんてことは
もちろん きにせずに

いまぼくにはみえていない
その ほし

きみにも
みえないかもしれない
なまえのない ほし

2014年1月24日金曜日

まいにち ちがう

おもしろいこと あったなら
ひとにいわずに だまっとこう
しかし いいたく なるもんだ
それがにんじょう しかたない

おもしろいこと たのしんで
がまんできずに はなしちゃう
おとなはそれを やめろって
えらそうに すぐ めいれいだ

おもしろいこと やめたあと
わらいをこらえて ねむったら
きみょうな ゆめを みてしまい
おきたらぜんぶ わすれてた

おもしろいこと なんだっけ
おもいだそうと してる あさ
おもしろいこと やってきた
おならもしちゃった だまっとこう

2014年1月23日木曜日

ギ・モ・ン

泣いたら
 気が晴れた
笑ったら
 淋しくなった
おこったら
 悲しくなった
ゆるしたら
 笑いたくなった
わたしの
 ココロは
変じゃ
 ないですか?

2014年1月22日水曜日

無念な詩

ゆるしてね
ゆるゆるしてて
ゆらしてて

キスしてね
すきまをあけて
すきにして

ねむりましょう
魔性の胸に
無念な詩

2014年1月21日火曜日

詩人のコトバ

下の方で火がチロチロと燃えて
煤(すす)の匂いが立ち込めている
あの大火がまだ続いているのだ  ✴︎

消し止められたものだと思っていた
もう忘れ去られたのだと高を括っていた
だがあの人の哀しい願いごとのように
その火は
いつまでも消え去ることはなかった

あの人は白黒写真のなかで笑っている
時代が繊細な色模様に彩られ
ノイズさえ音楽になったとき
あの人の叫び声は
人々が気づかぬ時に蒼空の彼方から
空に吊るされた高い高いブランコのように
やってきてはまた彼方目指して消えていった

それでも
時代の漆喰の壁に打ち付けられた〈?〉の形のねじ釘は
夕日にただあやしく光って
コトバでないものを語りかけてくる

その問いに私は頷いて
やはり
答えのコトバをもつことはなかった

——吉野弘さんを追悼して



✴︎酒田大火(さかた たいか)。1976年(昭和51年)10月29日に、吉野弘さんの郷里である山形県酒田市で発生した。

2014年1月20日月曜日

満月の次は?

君が向かう方向に
未来とやらが待ち構えているのか

待ち構えているものだから
すでに過去だといま君が言った

済んだことは全て過去にながれさるのか
いま思い出した過去は未来のビジョンだが

明日考える今日と3年後に考える昨日は
いまの私からどちらが近いのか

アラームのスイッチをいれ
予定を確認して
夢を見に螺旋階段を満月の方向へ上ってゆく

2014年1月19日日曜日

冷たい風にのせて

冷たい風にのせて
石の声を伝えよう
水の声でささやこう

冬の日差しを浴びながら
土の香りを懐かしもう
木々の戯れを見守ろう

私はこの地が好きだ
あなたと同じくらい

鉄瓶で湯を沸かそう
ナイフで鉛筆を削ろう
生きた証などなにも必要ない
ただ
いまを精一杯生きて
あなたを抱きしめよう

2014年1月18日土曜日

振り向いて、、、

声? 鳴き声?
が、したので、振り向いてみたら
田んぼの脇の 夜の道
暗がりから 何かの気配が
こっちを見てる

獣だろうか 人? 宇宙人?
森の黒い影の上に
たなびく 雲の上に
三日月

いつもより大きい

いつもより
時間が早く流れている

もう一時間も
ここで 振り向いて
様子をうかがいながら
つい 物思いに耽る私

きつねでございます
油揚げ

本当に 好きなんだ



2011年10月、北京市西部で撮影