おもしろいこと あったなら
ひとにいわずに だまっとこう
しかし いいたく なるもんだ
それがにんじょう しかたない
おもしろいこと たのしんで
がまんできずに はなしちゃう
おとなはそれを やめろって
えらそうに すぐ めいれいだ
おもしろいこと やめたあと
わらいをこらえて ねむったら
きみょうな ゆめを みてしまい
おきたらぜんぶ わすれてた
おもしろいこと なんだっけ
おもいだそうと してる あさ
おもしろいこと やってきた
おならもしちゃった だまっとこう
泣いたら
気が晴れた
笑ったら
淋しくなった
おこったら
悲しくなった
ゆるしたら
笑いたくなった
わたしの
ココロは
変じゃ
ないですか?
ゆるしてね
ゆるゆるしてて
ゆらしてて
キスしてね
すきまをあけて
すきにして
ねむりましょう
魔性の胸に
無念な詩
下の方で火がチロチロと燃えて
煤(すす)の匂いが立ち込めている
あの大火がまだ続いているのだ ✴︎
消し止められたものだと思っていた
もう忘れ去られたのだと高を括っていた
だがあの人の哀しい願いごとのように
その火は
いつまでも消え去ることはなかった
あの人は白黒写真のなかで笑っている
時代が繊細な色模様に彩られ
ノイズさえ音楽になったとき
あの人の叫び声は
人々が気づかぬ時に蒼空の彼方から
空に吊るされた高い高いブランコのように
やってきてはまた彼方目指して消えていった
それでも
時代の漆喰の壁に打ち付けられた〈?〉の形のねじ釘は
夕日にただあやしく光って
コトバでないものを語りかけてくる
その問いに私は頷いて
やはり
答えのコトバをもつことはなかった
——吉野弘さんを追悼して
✴︎酒田大火(さかた たいか)。1976年(昭和51年)10月29日に、吉野弘さんの郷里である山形県酒田市で発生した。
君が向かう方向に
未来とやらが待ち構えているのか
待ち構えているものだから
すでに過去だといま君が言った
済んだことは全て過去にながれさるのか
いま思い出した過去は未来のビジョンだが
明日考える今日と3年後に考える昨日は
いまの私からどちらが近いのか
アラームのスイッチをいれ
予定を確認して
夢を見に螺旋階段を満月の方向へ上ってゆく
冷たい風にのせて
石の声を伝えよう
水の声でささやこう
冬の日差しを浴びながら
土の香りを懐かしもう
木々の戯れを見守ろう
私はこの地が好きだ
あなたと同じくらい
鉄瓶で湯を沸かそう
ナイフで鉛筆を削ろう
生きた証などなにも必要ない
ただ
いまを精一杯生きて
あなたを抱きしめよう
声? 鳴き声?
が、したので、振り向いてみたら
田んぼの脇の 夜の道
暗がりから 何かの気配が
こっちを見てる
獣だろうか 人? 宇宙人?
森の黒い影の上に
たなびく 雲の上に
三日月
いつもより大きい
いつもより
時間が早く流れている
もう一時間も
ここで 振り向いて
様子をうかがいながら
つい 物思いに耽る私
きつねでございます
油揚げ
本当に 好きなんだ
2011年10月、北京市西部で撮影
わざと気づかないように
奥の方に仕舞ってあるもの
たまに目が合うと
コトバを失う
こわいかさえ分からないけど
なんだかヤバい気がして
触れずに来た
いままで ずっと
だけど いま取り出して
手にとって向き合わなければ
負けた気持ちで
生きていくしかない
そんなのいやだからと
自分に言い聞かせて
思いきって
蓋を開けた
わざと気づかないように
奥の方に仕舞ってあったもの
私はその中に引きずり込まれて
なにかが碎け散った
その破裂した音だけが
木霊して 羽音のように
バタバタと耳をかすめて
曇り空の彼方に飛び立っていく
平らで硬かった胸板に
柔らかなふくらみが育って
波打つようになった
制服を着替えるとき
空気がひりっとして
思わず 手のひらで押さえると
指のあいだから
はみ出して
押さえつけないで
痛い! と主張してくる
瞳は蒼空をうつして緑に萌え
流れる雲を追って灰色の哀しみを湛える
12歳の卒業式から
何日が経ったのか
指を折って数え
そしてその指を唇にもっていった
指が唇に触れているのだが
この感覚は
唇から来るものなのか
指から来るものなのか
それとも
どこか遠くからやって来たのか
分からずに途方に暮れる
私の唇は
小さなアンテナ
指はセンサー
私は大きくため息をついて
明るくない 未来のことも
考えていた
足が痛いから
もう旅行なんかいかないと
不機嫌そうに言う母
家にいたほうが安心だし
行きたくないという
つれていってよ
また いつか
楽しい場所へ
ちょっと恥ずかしいけど
そこで
新しい 楽しい想い出を作って
土産に持ってかえろう
レンタカーを借りて
まっすぐな道を
どこまでも 走って