2013年4月27日土曜日

自分の命を人ごととして



自分の命を人ごととして
清く正しく 生きるんだ

侘び 寂び 哀しみ 素敵な日本で
苦労も 厭わず 苦痛に耐えて 世間に馴染んで
希望を持って 夢を描いて 
へこたれずに くよくよせずに
自信を持って 他人にやさしく 自分に厳しく
勇気を持って 挑戦しつづけ
反省しても 後悔せずに
一生懸命 あきらめないで
欺くことなく 正直に

自分の命を人ごととして
生きるんだ

生きた証に 何かを残し
いい気になって 死ねばいい

2013年4月26日金曜日

星の考え

隙間があったら
緑の草で埋めてしまいましょう
それが星の考え

緊張が続かないように
呪縛はほどいて
すべては水に流しましょう
水は山から川にして
あるいは一度空に持ち上げて
最後は海まで流しましょう
それが星の考え

人は進化し
進化の先端が尖り錆び
朽ちたら新しい芽ばえがあるでしょう
芽は根を張り空に向かい
子孫はその屍をたき火して
暖をとるでしょう
それは
星が
あずかり知らぬこと

でもそれはすぐに
星の考えとなった

がれきになって

「がれき」という言葉について
どれほどのことを考えただろう

がれきとは何か
なぜがれきなのか
昔のがれきと今日のがれきとの差異とはなにか
がれきと名付けられたがれきの気持ちはどんなものか

がれき 瓦礫 ガレキ GAREKI
がれきが語りかけてくるその声に
耳を傾ける
いつまでもがれきであるそのあるがれきは
がれきのなかでも筋金入り

がれきに身分制度はあるのか
参政権はあるのか
学歴や出身地は関係あるのか
芸術や文学に精通しているのか
家族はあるか

がれきに訊いてみる
がれきの表示を確かめる
安全基準を見直し不法投棄を取り締まり
転校移民難民を受け入れる
がれきのぬくもりに顔をうずめる

がれきにまじり
闇夜に考える
詩は終わりにして
がれきになって
うずもれて睡ろうと
せめて今夜は
蛍光灯の明かりは消して

2013年4月25日木曜日

あなたは誰が好き?

秘密にしようとすると
つい 口走ってしまう

そのくせ
言おうと思っていたことは
忘れてしまう

憶えておきたい大事なことは
つまらないことに押し出されて見えなくなり
忘れてしまいたいことは
シミになってしぶとく居座る

私はあなたが好き
あなたは誰が好き?

訊いてみたかったけれど
あなたは私に
「あんたなんかきらいだ」
会うなり
いきなり宣(のたま)った

2013年4月24日水曜日

振り返らずに生きるのだ

きょうも新しい日が始まった
きのうまでの自分は消去した
振り返らずに生きるのだ
のうてんきにやるべきことをやっていく
思い出の宝物は燃料にして

2013年4月23日火曜日

自分が出てこない

季節は一進一退で
入れ替わっていく

人は
おやすみなさい とさっき言って眠ったのに
もう おはよう と言っている

だが その間に
昔むかしの夢を見た

自分が出てこない夢だ

2013年4月22日月曜日

詩のメモ

もうずいぶん沢山眠ってしまったものだと
布団から半身起き上がり
目を凝らして暗闇の時計を見ると
まだ1時間しか経っていなかった

頭が痛いので
やることがあったけれど
もう少し眠ることにした

2、3時間眠っておき上がってみると
10分しか経っていなかった

それから約4時間眠って
眠りながら詩を考えた
時間に関する詩だ
起きてメモを取り
それからまた1時間ほど眠った

起き上がると
そこは自分の部屋のベッドだった
書いたはずのメモは
どこにもなかった


2013年4月21日日曜日

誰かと繋がっていることが

誰かと繋がっていることが
鮮明に分かる時がある

時に 身じろぎもしないで
深夜の寝台列車の揺れを
共有している

いや
共有しているのは
深夜の寝台列車の揺れではなく
地を這っていく感情だ

月に冷やされて
キキ キーと
金属質の摩擦音を発するその感情

射的場の的に向けて
息を合わせて
玉を打ち込むときの
苦い唾

2013年4月20日土曜日

蕎麦をすする音

ぬるい場所に冷たい雨が降って
キノコが夜に育ちます
人はもう発狂寸前ですが
むしろそれは正常だと言わねばならぬでしょう

雨はいろんなことを「なかったこと」にして
雨天のため中止という看板が雨に濡れています

かわいいあの子という人が
箱詰めにされサイズを測られ宅急便の荷物になって
濡れた道を運ばれてゆきます
河合その子とは関係ないでしょう
かわいいあの子は私が継続的に好きな人です

夜の帳というのがあると噂された町には
少し前の時代のナウい人びとが往き来して
ちょっとした喧噪です
闇市で売っていそうなラジオも鳴っています

妄想の畑でキノコ雲が夜に育ちます
私は深呼吸して湧き水を飲み干し
鳥の形をしていない鶏肉を炒めます
昆布の揺れる海鳴りに耳を澄まします

老詩人は昨日から日本海の島へわたり
自ら作った詩を朗読し
気分よく酩酊して布団に入り目を瞑りました

ある線路脇のビルの一室では
コンビニの蕎麦が食べられようとしています
その間
世界は
蕎麦をすする音に置き換えられてしまうことも
知らないで

2013年4月19日金曜日

あなたの悩み


あなたを苦しめる
冷たいあの人は
あなたのそばから
いなくなることはない

あなたを悩ませる
いやらしいあのひとは
あなたの心から
立ち去ることはない

あなたが大すきな
愛しいあのひとは
さよならを
いつ切り出そうか
迷ってる