2013年12月14日土曜日

奇跡というもの

奇跡は何食わぬ顔をして
あんパンを食べている
ところで
そのあんはうぐいす色であった

奇跡はハッとして
帽子に手をやった
鳥のフンかとおもいきや
なんと金貨だった

奇跡は青空に
軌跡を描いて
行くべき道を
教えてくれたこともある

奇跡なんか起きたことがない
と言っている人がいるが
なんと滑稽なのだろう
気づかないなんて


☆蛇足

(奇跡はあまりに
ありがたがられるので
ありふれた格好で
ドアががたっと開くの待っている

ドアが開いたら
やさしい日差しが
あるいは
微かな風邪が
頬に触れるだろう

そのとき・・・・)

2013年12月13日金曜日

ほしいものができたら

ほしいものができた
買うことはできない
ほしいもののことを
ずっと考えている
ほしいものは変わらずに
そこにある
私は少しずす変わっていっていて
ほしいものは
気配を変えない
落ち着いている
瞑想しているのだろうか
あるいは眠っているのか
私の瞼は重たくなってくる
私はその場所から姿を消す
夢のなかでは
知り合いの女が
腹から血を流してもがいている
近くにその元恋人が立って
真っ二つに割れたiPadで
病院を検索していたがその過程で
ほしいものをみつけ
そちらに夢中になってしまっているようだ
私は女に
大丈夫だからと言って
女のことを気遣いつつ
助けたいと願った
私はこの女をほしいと思うと同時に
ほしいものリストに追加した

2013年12月12日木曜日

あなたがこのよにうまれて

あなたがこのよにうまれて
よろこんだひとはいたが
かなしんだひとはいなかった

あなたがかなしみのなかにいるとき
くうきはバリアをつくって
あなたをまもろうとした

あなたがこのよにうまれて
やがてあなたはめをひらき
うつくしいものをみた
いいかおりをかいだ

それはあなただけのものだ
いま
まちにながれはじめたおんがくも
よくきいてみるといい
それは
あなたのためだけに
かなでられている
おんがくだ



わたしはおもっている

2013年12月11日水曜日

花をだいていた女の子

はなをだいていた
おんなのこ
いつのまにか
じぶんも
おはなになっていました
みんながくちぐちに
きれいだと
いいました

はなをだいていた
おんなのこ
かれていく
おはなも
だいじにしました
みんながくちぐちに
あわれだと
いいあいました

はなをだいていた
おんなのこ
じぶんは
きれいじゃないと
ないていました
みんなはくちをつぐんで
ひとことも
こえをかけませんでした

はなをだいていた
おんなのこ
かれしが
きれいだよと
まいにちきすをしました
みんなはくちぐちに
おにあいだと
いいました

はなをだいていた
おんなのこ
はなの
たねを
まきました
みんなはどんなはなが
さくのか
めをとじてかんがえました

2013年12月10日火曜日

だからとにかく

こそこそと
みちのはじをあるけば
どろみずにはまり
こえをたてずに
ちかづくとちゅうで
ころんでたおれ

みようとすれば
そこにはもうなく
さわったときには
やけどしたっけ

のぼっていくと
みちはなく
くだっていけば
がけからおちた

わたしはさいきんこんなぐあい
だからとにかく
だいじょうぶ

2013年12月9日月曜日

本物

コンサートが終わり
一つの家族が薄暗い道を歩いている
命のかたまり

音楽はしつけ糸
靴はクッション
まとったユニクロのウルトラライトダウンは
隠し事を欺く

足取りは恋心の成れの果て
夜の星空は
寒い風に散る涙を映した偽物

2013年12月8日日曜日

ゆらゆらゆれて

ゆらゆら
ゆれています
ふらふら
しています
うごくもののうえ
かわりゆくかたち
うまれてくるもの
きえさってゆくもの
ゆらゆら
ゆれています
ふらふら
しています

ゆらゆらゆれる
しんきろうのまどから
みわたします
せかいは
やはりゆらゆらゆれて
そこにたつ
ひとはふらふらしています

ふらふらしながら
どこかに
たよるものがないか
めをまわしてさがしています

2013年12月7日土曜日

鉛筆で

私の考えは
鉛筆で書く
文字を書き間違えるように
考えもよく間違えるから

私の思いは鉛筆で書く
書き終わった途端に変わるから
きらいな人も好きな人に変わるから

私の未来は鉛筆で書く
あなたが消して書き直せるように
未来は独り占めできないだろうから





絵 一之瀬仁美

2013年12月6日金曜日

いつまでもここに

いつまでも
ここにすわっていたい
この席に

いまは
駅前の
クリスマスのイルミネーションを借景に
珈琲の香りが漂い
ほどよく賑わっている
今ふうのカフェだが
まわりのひとが
すべていなくなり
たてものに蜘蛛の巣が張り巡らされ
壁は剥げ落ち窓は割れ
寒風が吹きこんでも
街が廃墟となり
行き交うひとが皆無となっても
私は
この席に
すわっていたい

私の思いは
強く不変であるに違いない
私はいたい場所に
いたい
それが私の抵抗だから
それが私がいる意味だから

2013年12月5日木曜日

あやまち




あやまちをくりかえし
いきてきた
いきてきたといま書いたのも
またあやまち

あやまちにあやまちをかさね
あやまちの塔が建つ

あやまちの塔を自ら破壊して
あやまちの道をひきかえして
あやまちの川のほとり
誤って正しいことを
水にながす

あやまちで
日が暮れて
あやまちの夢にめをさまし
誤った名を呼んで
ふたたび眠る

あやまちをくりかえし
いきつづける
くらしをよくしようとする
だがくらしはよくならない
すべてがあやまちだから

あやまちの躯を
正しいもので染め
正しさというもので染め
中身も
ねこそぎ入れ替えなければ

それでも
あやまちをおかすだろうが
あやまちには
気づかなくなるだろう