2012年3月14日水曜日

転がりゆく人

坂道の途中で電話を掛けた
すると上から
誰かが転がり落ちてきた
電話に夢中だった私は
ひょいとよけて
話を続けていたのだが
電話の相手が
何かあったのか と尋ねてきたので
私は正直に
誰か人が転がってきたからよけた
と 答えた
相手は
それは大変だ と言ったが
私との話に夢中だったので
転がってきた人のことはそれ以上話さずに
元の話題に戻った

転がってきた人は
転がりながら考えていた
この世は絶望的な情況だ
このままなにも気にせずに
転がっていよう と

だか
まさにその時
坂の終点に到着してしまった

ああ
なんという
それにしても
それにしても青い空だ!

2012年3月13日火曜日

駅までの道は


靴音が自分の前を歩いていく。他人の靴音ではない。自分の靴音だ。坂を上るとき、私は自分の靴音が自分を追い越して、前のほうで鳴っている錯覚から抜けだすことができない。
そういえば、いつか、学校の授業中に先生が言った。視覚より聴覚のほうが尊いんです、格が上。神さまにキコシメスって言うでしょう?  と。真面目な私はそれ以来、目に見えるものより聞こえるもののほうが大事に思えてきた。自分の発する音が自分という「本体」から分離して、坂を上るときには前のほうに行ってしまっているのはそのせいかもしれない。

☆ ☆

駅までの道を
靴音響かせて歩く
上り坂のまっすぐな道
車が沢山通っている
人々が行き交っている

駅までの道は
にぎやかな道
それでいて孤独な道

駅までの道は
繰り返す道
日常の上を
通り過ぎようとする道

駅までの道は
妄想の道
いけないことが
浮かんでは燃え上がる道

駅までの道は
雨が降ると
傘が行き交う道
大事な事をしにいく道

駅までの道に
抱きしめられる
駅からの道で
そっぽを向かれた後に
駅までの道は
たしなめてくる

駅までの道は
昨日までとは違う道
駅までの道は
昨日とすこしも変わらない道

駅までの道は
永久に世間話をする
駅までの道が
冷たい手で握手を求めてくる

駅までの道は
もう通わない道
二度と歩かない道
二度と振り向かない道
帰り道と一緒に消えていく道

2012年3月12日月曜日

出会いたい人

天井の画を見上げるあなたを
盗み見する

私はあなたから
盗んでばかりいる

与えたものなど
なにもない

それでもあなたは
私を連れだす

そぼ降る雨の中を
陽気に喋りながら
きょぅも何かを見つけに行く

私には
なにも見つけられないが
あなたは
見つけているようだ

私は祈りたい気分になる
あなたと
また
出会えますように


まだ別れていないけれど
もう出会った後だけど
また
出会えますように

2012年3月11日日曜日

おしえてください

死んだのは
誰のせい?

死んだのは
私のせい

誰かに殺されるのを
許してしまった
私のせい

飼いならされた
私も
いつか誰かに
殺されるでしょう

いや
もう
殺されてしまっているかもしれません
もしそうなら
誰か
「死んでいるよ」と
おしえてください

質問 2

桜の花びらは
何枚?

知っていたけど
訊いてみた

あなたの答えが
ききたくて

2012年3月10日土曜日

うっかり

次に会ったら
気持ちを伝えよう

あなたのいる前で決意した

やべっ!
もう伝わってしまったみたいだ

あなたのいる方向

私のいる方向に
いつも煙が来る
とあなたは笑う

煙だけじゃない
私の視線も行く

秘密のある場所

あなたが
話してくれないこと

それが
あなたの秘密

会話が避けて通る道を
今度一人で歩いてみよう

二人

あなたに会わないでいると
あなたのことがよく見えてくる
あなたの声を聴くと
あなたの考えていることが
はっきりと判ってくる
あなたのメールを見ると
二人の関係が
誰にも理解されないことが確信されてくる

守る

あなたはいつもより高い声で話しているが
それに気づかない
そのあとにやってくるのは
不吉な波

今度は
その波を蹴散らしてやろう