2013年2月3日日曜日

彼女の印象(スケッチ)

名前を呼んでも彼女は振り向かないだろう
彼女は名前を換えたから
名前を換えて記憶も消したから

彼女は水辺に佇んで背中を向けている
背を向けて自分の気持ちにも背を向けている
水面に彼女が男に犯されたシーンが繰り返し映し出されているが
彼女にはそれが見えない
もう当り前の風景の一部になっていたから

彼女はいま感傷に浸っているのではない
もちろんなにか夢見ているのわけでもない
彼女はこの風景に溶け込んでいるだけだった

たまに微風で感情が波打ちそうになるのだが
気圧と仲良くなってそれを抑えようとしていた

時は一瞬だった
たとえば写真の一枚のように
たとえば一度の瞬きのように
もう二度と訪れようとしなかった

私は振り返る
彼女の眼を
前から覗き込んだときのことを
彼女は裸だった
なにもその躯にまとっていなかった

弾力とぬくもりが渦巻いて
私を巻き取った

わたしは今
近寄らずに彼女を見ている
彼女は自らの宇宙に
アクセスを試し続けている



2013年2月2日土曜日

SOSの

SOSのサインが
ドアのところで順番待ち
奥ゆかしいSOSは
決して割り込まない

そのうち
SOSは力尽きて
新たなSOSを発信する

2013年2月1日金曜日

ほんの一駒の

青空を背負って
その人は私を見下ろしている
私はしゃがんでいて
その人は立っているからだが
空がまぶしくて
その人の表情はよく見えない
これほど近くにいるのに

その人は髪の毛の乱れも気にせずに
カメラをのぞいている
私はその人の
カラダのラインと顔を見て
その躍動する様子に
息をするのも忘れて
見入っている

その人は時折
思いがけない声で
思いがけないことをいう

私は何を話したら
調和するのかどぎまぎして
言葉が滑ってしまう

2013年1月31日木曜日

くま

くま
くみくみくみくみ
くみひもくん
くし
くさくさ
くしやき
やきとりさん
さざんかくまのみ
なつみかん

雷雨がやってきて

友だちはいませんから
お線香は買わないでください
芋きんつばがすきです
台風の日に
串焼きをたべます
柱時計に手紙を隠しました
道のコジキの先生が
ロウ石で方程式を書いていました
雷雨がやってきて
みんな濡れました
ささやかなよろこびをささやくひと
ささくれを
さすって
さめざめなくひと
ささえあって
さざえをたべて

さわやかなひとが

さわやかなひとが
さわやかなうたをうたう
さわやかなえがおと
さわやかなこえで

さわやかになりたいひとは
さわやかになれます

百人一首

あと百回死ぬよ
あと20時間分死ぬ
あと百回死ぬ
あと一生分を百回死ぬ
足りないときは
足を切ったところに下駄を履かせて
飛び降り自殺する
だから死ぬ
あと百回死ぬ
一年分以上
人並以上百人分以上
百人一首読みながら
帰らぬ人となる

黒板消しで消されるんだ

百回死ぬよ
百回死ぬと言うんだ
99回済ましたよ
あと一回で終わる
終わると消去されるんだ
黒板消しで消されるんだ

ぼくは首吊って苦しい

ぼくは首吊って苦しい
あの人は
足攣って目を覚ます
ぼくは死に逃避して楽になり
あの人は逃避せずに
頭皮を磨く

ぼくは息をするのを忘れ
あの人は嫌な自分を圧縮する

ぼくの夜は一人ぼっち
あの人も夜は一人ぼっち