2023年5月13日土曜日

月のネックレス

月が一つ

闇空のてっぺんで明るく光っているだけなのに

海はその下に
煌めく光の路をつくり
編み上げられた
ネックレスみたいに
海の胸元をゴージャスに飾っている
砂浜にいるのはきょうもあなた一人だから
その美しい光景も
ネックレスも
あなただけのもの
海の中に入っていくあなたは
自称 人魚
ぼくはそうは思わないけれど
泣き尽くして涙を枯らしてやってきて
夜が白み始めると
ここから去っていく
誰もいなくなった海は
波を手持ち無沙汰に打ちながら
一人で何かを語り続ける
答えなのか問いなのかは
分からない
もうどれだけの時間が流れたのかも分からない
あなたは
昼間
仕事場で汗をかきながら働く
何かをおし殺し
自分に言い聞かせて
そして
海に行ったことは
波の中に入って行ったことは
友人には話さない
海と約束をしたからなのか
それとも
自分が消えてしまったあとに
なにも残さないという
決意の表れなのか

ナポリタンとサイダー

学食にはいつも幽霊がたむろしている

昼飯時の混み合う時間帯には
生きている人間と死んでいる人間がダブって存在しごった返してしまうので
なにかの〈るつぼ〉となっているが
先ほどから彼が何の〈るつぼ〉か
的確な言葉を思い出そうとしているがいっこうに思いだせない
その間にも
詩は進行する
いつか言い表したあの言葉!
行ったり来たり
行ったり来たり
である
飛行機が遅れたため
東京からこの大阪の大学にやって来る電車の車中で
彼には既に目的の四分の一が達成できないことが分かっていた
それで少し焦ってはいた
大学のある駅で降りると
駅の出口は大学からは一番遠い位置に位置していたので
さらに彼は駅の出口から一番遠い車輌に乗っていたので
最悪だ〜! と
我が身の不幸を嘆かずにはいられず
だからつい足早に投げやりに歩き始めた
十四(しいすう)という名の駅にあるその大学の学食は地下にあり
二階までの吹き抜けの構造になっている
食堂の周囲には内階段から繋がる渡り廊下があり
さらに螺旋階段を通じで二階の廊下に繋がっていた
彼はエレベーターホールから学食へ行くエレベーターに乗ろうとしていたが
何階に行けばいいのか分からず混乱していた
いくら考えても分からない
答えが見出せない
そのうち上へ行くエレベーターがやってきて
彼は乗り込みB1ボタンを押した
エレベーターから降りると
そこは学食より1メートルほど下の床だったので
五段分の半端な階段を上り
上り過ぎたので一段下がり
奥のカウンターに近づいていった
ナポリタンとサイダー
おそらくこれが
きょう彼が初めて人間に発した言葉だった
そして
その声はいつまでも木霊していた
まるで彼を責めるように
まるで彼を愛するように
夕方の学食で
彼がいなくなった後
幽霊たちがお酒をチビチビやりながら
その彼の声を繰り返し歌っていた
ナポリタンとサイダー
ナポリタンとサイダー

2022年5月18日水曜日

いきなり、詩を

コーヒーを飲みに行こう。僕はうつ病なんだから元気なふりはしない。いきなり、詩を始めないでよとあの人が言う。だから僕は段々と、さりげなく、気づかれないように、詩を始めよう。

2022年1月6日木曜日

コノハのこと

木の葉が横切った

あいさつもなしに

乾いた音を残して

あれ? ひょっとして

それがあいさつ?


コノハ 木の葉

木の葉 コノハ


大事な人が いなくなって

木の葉が横切った

向こうの植え込みに

消えていった


なにか相談でも

しているのか


この季節を横切って行く私の相手は

できないね

私は湿った人間だから


自分勝手な「言葉」というものを

もっているから



2020年4月29日水曜日

ぼくはアクセサリーの一部

ぼくはアクセサリーの一部

白い大地で揺れるネックレスの一つの粒
土に耳を当てれば朝日が茜色の矢を放って昇ってくる

のぼらねばならない登戸のお上りさん
さがらねばならない食べ残しの器
うつくしいあなたのまわりにキラキラがあつまる

うつ病に本当の病名はない
名前をつけようとしたあいつがまっさきに病気で逝ってしまった
恨みごとをオブラートに包んでネットに上げる
で 取り下げる

ぼくはメクラだった
イメクラじゃないよ
いくらがすきだった
いまもすきかモンキー
好きかも 
ぼくはカモ アクセサリーの一部の また一部

われに5月を! と
似合わない服を着て街へワープ→ループ
部屋へ逆戻り本を整理

行分けが楽なのは
話を途中でやめて何度もやめてそうすると相手を責めないですむ責める理由なんかあるもんか(門下生落花生ラッカーシンナー今何時肥満児太り過ぎ)

アクセサリーは喋らない
せいぜい揺れて外されて冷たくなってひんやり触感になるだけ
ぼくは肥満児だった
いまは暇人

うつくしいあなたはキラキラしているだろう
そして当たり障りがない
あなたは服を脱いでぼくを身につける
身に付けさせてと懇願する
ぼくもそれに答えて懇願する



2018年8月8日水曜日

幸せはそこにある

幸せはそこにある
そこにあって黙って待っている
まだ
そこにあって滴り落ちずに待っている
そこにあることで
何も語らずに何も求めずに

理不尽な罰の滝
無意味で無慈悲な慰め
荒れ放題の中庭
汚染され尽くされ放置された沼
償われない罪の塔

幸せはそこにある
そこにあって黙って待っている
まだ
そこにあって滴り落ちずに待っている
そこにあることで
何も語らずに何も求めずに
求めないことが美徳だと
いい含まれても拒みもぜずに

命を束ね縛る縄
心に針を刺す偽医師
土を固めるタンク
死者さえ立ち去る荒れ地
轟音爆音無音

幸せはそこにある
そこにあって黙って待っている
まだ
そこにあって滴り落ちずに待っている
そこにあることで
何も語らずに何も求めずに
求めないことが美徳だと
いい含まれても拒みもぜずに
骨を肉に変え
血は根から吸い上げて

虐げられても
奪われ尽くされ
蔑まれ
疎まれ無視され
たらい回しにいたぶられて

幸せはそこにある
そこにあって黙って待っている
まだ
そこにあって滴り落ちずに待っている
そこにあることで
何も語らずに何も求めずに
求めないことが美徳だと
いい含まれても拒みもぜずに
骨を肉に変え
血は根から吸い上げて
種のように硬い拳を隠して
幸せは
そこにある
そこにあって黙って待っている

2014年11月30日日曜日

新しいブログです

下記が新しいブログです。
やっと書き始めました。
ご覧くださると嬉しいです。
よろしくお願いいたします。

みちる   


その他の関連サイト

Youtube マツザキヨシユキ、みちる 作詞
 マツザキヨシユキ制作↓ (トリ音)
 福島の花 (今垣知沙子)

oblaat(オブラート)

マツザキヨシユキ

Amazon(販売)

iTunes(販売)

 ポエムピース株式会社


ポエガール

偶然のこっているもの

2014年11月29日土曜日

出席番号34番

出席番号34番
永久欠番の出席番号
僕の斜め前に座った34番は
今まで知らなかったことを
連れてきた

世界に理想の人がいるということを
教えてくれた
手が届きそうな理想があるということも

君はいつも自然体で
まるで僕の真反対だった
チャイムが時を刻み
思い出のブロックを積み上げていった

体育祭の朝練
新米の先生に教科書で叩かれ
合唱祭では声合わせ歌い
手をつないでダンスもした
眠かった午後の日本史の授業
向かい合わせで食べた弁当
綺麗な夕暮れの空

34番
きみの指を透かして
眩しい太陽が僕の瞳に焼き付けたけど
この季節が来ると
出会った日を思い出す

思い出のブロックは
いまもあの校舎のあの場所で
光浴びて
たっているかな

いまは確かめられないけど
いつか一緒に見にいくなんて
奇跡がおきたら
僕のいままでの人生投げ出して
君とかけていきたい

登ったことのない
初めての見晴らしのいい場所
あのころの幼い僕たちの
なにもかも
見えるその場所へ

2014年8月14日木曜日

このブログの閉鎖について

ごあいさつ

いつも読んでくださっている方、ありがとうございます。
読んでくださっている方がいることで、書き続けることができました。
心からお礼を申しあげます。

ところで、このブログですが、新しいウェブサイトに移行するため、
8月22日をもって、一旦、閉じることにいたしました。
(また、整理して公開しることも検討しています)

新しいサイトは9月にスタートする予定です。それまではみちるのFacebookをごらんいただければ幸いです。↓

https://www.facebook.com/michirupost?ref=hl

どうぞよろしくお願いいたします。


 親愛なる読者のあなたへ


     みちる


 

2014年8月4日月曜日

回覧板からの伝言

伝言はおしまいです
それは回覧板の役目とはちがうから

立ち止まっていた回覧板が
明日のことを書き換えられずに
昨日の割れ目にはまってもがいてる

予告はもう結果になってしまったし
募集した人たちだってもう解散した

とりかえしがつかないことは
過去になると
とりかえしがつくことになるの?

雲のように浮かんでいた質問に
回覧板は
胸をはって答えようとした

だが
回覧板には
その答えは書いてなかった