2013年3月1日金曜日

逆光の少女


最後のチャンネルを切ってしまったら
戻って来れなくなるかも知れない
それでもあなたは
かつて世界と結んでいたチャンネルを
いとも簡単に切ってしまった

これで私の方からあなたを探すことは
永遠に たぶんできない

あなたは遊びのように
無邪気な笑みさえ浮かべて
チャンネルを次々と切った
その瞬間ばかりは
人には見せられない鬼の形相で

ひな祭りに
桜餅を食べてお祝いするなどということは
呪い歌の中にしか既にない

スケート靴で氷上を走り抜け
逆光の湖上にはもういない

鬼の香りだけが
少女の血を現していた

2013年2月28日木曜日

ルビー色の血が


ルビー色の血が
珠になって
転がって行くのは
あなたの肌のきめが細かいから

それでいてしっとりしているのに
血の珠は交わらない

強い意志を抱え込んで生きている
あなたと同じ

だが
引力には逆らえない
あなたも
この血の珠と同じ

2013年2月27日水曜日

死にたがりやさんへ


死にたがりやさん
私もそうだよ

欲望が強くて
抑えられない

立ち止まって
青空を見る

誰かに分けてあげたい
願望が目覚める

この宇宙に生きて
幸せ

死にたいのは
そのせい

2013年2月26日火曜日

造っているようで

造っているようで
壊している
壊しているようで
造っている
でもやはり
壊している
いややはり
造っている

神様が挟み込む栞のところ
どうなっていましたか?

神様が寝ているあいだに
造りあげたい
いや
壊してしまいたいものがある

子どもの未来の夢に
きいてみよう

2013年2月25日月曜日

どろんどろん


どろんどろん
どろんこだ
ごろんごろん
ねころんだ

しゅわっしゅわっ
かけてゆく
ぴゅあぴゃりん
かぜのおと

りるるりる
うたってる
るらりりく
きもちいい

2013年2月24日日曜日

誰のもの?


ふと思った
恋は私たちのものではないと

私たちが躯をよせ合って
過ごしたあのときの気持ちも
捧げものだ

お互い
見つめ合って
確かめ合った未来さえ
私たちのものではない

あなたは
丸いテーブルの上の果物を
器用に剥いて
はだかの私の口に
放り込む

私に与えられた
あなたの愛は
誰のもの?
私は果実でのどを潤しながら
考えるのが面倒になる

2013年2月23日土曜日

詠み人知らず


僕は傾いている
そして悪い方向に向かっている
そのぶん
周りの人がいい方向に向かえばいいと
思っている

僕は詩形を作っている
そしてそこに世界を閉じ込める
けれど
それは自分用のオモチャでしかないと
知っている

僕は謀っている
楽しく生きて行きたいと願いつつ
しかし
模型の電車が回り続けるように
目を回しながら

2013年2月22日金曜日

反省の色はない


あまりに語尾に「ね」を連発して共感を求めるから
そのうえ「ちょっと」を多用して語感をやわらげようとするから
さらに一緒にいるひとを批判せず褒めてばかりいるから
彼のことは嫌い と
彼女は思う

彼は
「ちょっとかわいそうだよね
僕にもいいところあるしね
ちょっと言い過ぎだとおもうよね」
反省の色はみえない

2013年2月21日木曜日

2013年2月20日水曜日

しあわせ


さびしすぎても
しあわせ
さびしさは
きずなだから

ないていても
かなしくない
わびしくて
ないているから

わらわなくても
それでいい
なみだがあったかいって
いってくれたから